第13話「太陽と僕」
「マオちゃん、食べたいものあるかい?」
「野菜以外なら何でもいいよ」
「好き嫌いは駄目さ」
「冗談だよ。チイさんの料理なら何でもいいよ」
「分かった。野菜をドッサリ食べさせてあげるさ」
チイは、テキパキと身支度をして買い物に出かけた。
一人取り残されたマオは、部屋に置かれた本棚を物色し始める。
「オマエ、本なんか読むの」
「まあな。読んでいると夢中になれる――なっていられる」
本棚に収まる本の背表紙を指で追いながらも、目では追っていない。どこか寂しげな目をしている。
「マオくん、どうかしました?」
「ちょっと思い出して……両親のこと」
「あっ、ごめんなさい!?」
「謝らないでよネルガ」
「あの、どうしてご両親は亡くなってしまったんです?」
「詳しいことは聞いてないよ。知ってもしょうがない」
「そうですか」
ニッコリと微笑み、「オレは大丈夫だよ」とネルガに言って本の物色に戻る。『太陽と僕』というタイトルの本を選んでパラパラとめくっていく。
「随分とページをめくるのが速くない?」
「オレ、他人よりも本を読むのが速いんだ。どうしてそうなったのかは分からない」
「で、どういう話なわけ?」
「自分で読めばいいじゃないか。オレに憑依すれば、自分のペースで読めるだろう?」
「触れる触れない以前の問題。アタシ、本を読むのが苦手なんだ」
「どうしてだよ」
「読んでいるうちに辛抱堪らず……先に結末を読んじゃう」
「なんだよそれ。本の醍醐味台無しだよ」
「うっさい。そういう性格なんだから」
「仕方ない。この『太陽と僕』は、太陽のことが大好きな主人公の一日を描いた物語なんだ」
「つまらなそうね」
「オレは好きだけど。太陽が出ていると笑顔に、雲で太陽が隠れると落ち込んで、雨が降りだすと泣き出すんだ。太陽が出ていないあいだ、本を読んだり絵を描いたりして気を紛らわすんだけど、雨が上がった青空に太陽が現れた途端、主人公は泣き止んで外を駆け回る。最後は、沈んでいく太陽を笑顔で見送るところで終わるんだよ」
「やっぱり、つまらないわね」
「全員一致で面白いものの方が少ないよ。だからこそ本当に面白いものに出会えたときが嬉しいんだよ」
「わたしは分かります!」
「へぇ。同じ天使でもネルガとカムアじゃ違うな」
「悪かったわね! どうせアタシは堕天使だわ!」
ムスッと拗ねるカムアを見て、マオがプッと笑い声を上げてしまう。目尻には涙を溜めている。
「まったくバカだな! 違うからいいんじゃないかよ」
「はあ!?」
「全員がまったく何もかも同じだなんて、そっちの方がオレは嫌だよ。ネルガはネルガ、お前はお前だよ」
「納得いかない納得いかない!」
「分かってないなー。優しいスープに飽きると、辛いスープも飲みたくなるってことだよ」
「わたしは分かります!」
「アタシは分からないってば!」
カムアが猫パンチをマオに打ちながら叫ぶのだった。




