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ほんわか天使とツンデレ堕天使の人界散策  作者: 碧衣玄
第一章 天使と堕天使
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第11話「ムカッと」

「あー! 食べた食べた!」


「うぐぅぅ!」


 マオに憑依してケーキを食べたカムアは満足し、パンパンに胃が膨れてマオは苦しんでいた。


「大丈夫です?」


 苦しむマオの顔を見て心配しているネルガ。

 今のマオの視界に映るネルガは、まさしく天使である。


「満腹で苦しいなんて幸せなことだよ。大丈夫」


「それなら安心です」


 マオの返答でネルガの顔に笑顔が咲く。

 ネルガの笑顔を見ていると、不思議と苦しみが和らいでいく気がして、マオにも笑顔が咲いた。


「いつまでも見つめ合ってるんじゃない!」


 二人の様子が面白くないため、カムアは無理矢理割って入る。マオをジトッと見ながら膨れている。


「また怒ってるのかよ」


「怒ってないから! アタシを除け者にしているのが気に入らないだけ」


「除け者なんかしてないよ」


「そうかしら? やっぱりオマエ、ネルガに対しては優しいのね」


「そんなつもりないよ」


「自覚がないだけね」


「どうしたんだよ? お前」


「うっさい! 分からないけど、なんだかムカつくの!」


「落ち着いてカムアちゃん」


「黙れ! 五年も経ってノコノコ現れて、あっという間に距離を縮めちゃって!」


「カムアちゃん?」


「五年前に会っていたアタシよりも仲よくなっちゃって! ムカつく――アンタみたいなのがムカつくの――!!」


 カムアの身体を禍々しいオーラが包む。五年前、神界から人界へ来たときのように。

 ネルガの表情が一気に曇る。身体を恐怖で震わせている。


「駄目です! 暴れちゃ駄目です!」


「黙れえええ――!!」


 長く伸びた爪をネルガに振りかざす。

 ネルガは恐怖で動けず立ち尽くすだけ。


「――いい加減にしろよ!!」


 マオの怒鳴り声が響く。ネルガを庇うように立ち、まっすぐカムアを見ている。

 聞いたことのないマオの声に動きを止め、そのまま膝から崩れ落ちるカムア。爪もオーラも引っ込んだ。


「うっさいうっさいうっさいうっさいうっさい――うっさい」


「うるさくて結構だよ」


 カムアに合わせてしゃがむマオ。その顔に浮かんでいるのは笑顔である。


「どうして笑ってるわけ!? どうして優しくしてくるわけ!?」


「誰かに優しくするのに理由は要らないよ」


「中途半端な優しさは、時に相手を苦しめる」


「中途半端なつもりはないよ。オレに不幸を与えた張本人でも、それが不本意だと知っているからな」


「アタシのことを忘れてたくせに」


「五歳のころのことを覚えてろって方が無理な話だよ。思い出せたことが奇跡みたいなもん」


「またねって言ってたのに」


「仕方ないだろう、両親が死んじゃったんだからな。五年振りにこっちに来たのは、親戚に厄介になるためなんだよ」


 初めて聞いたことに驚きマオを見る。紫の目が大きく見開かれる。


「聞いて……ない」


「訊かれなかったからな」


「アタシ……最低ね」


「そう自分を責めるなよ。もう気にするなよ」

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