第11話「ムカッと」
「あー! 食べた食べた!」
「うぐぅぅ!」
マオに憑依してケーキを食べたカムアは満足し、パンパンに胃が膨れてマオは苦しんでいた。
「大丈夫です?」
苦しむマオの顔を見て心配しているネルガ。
今のマオの視界に映るネルガは、まさしく天使である。
「満腹で苦しいなんて幸せなことだよ。大丈夫」
「それなら安心です」
マオの返答でネルガの顔に笑顔が咲く。
ネルガの笑顔を見ていると、不思議と苦しみが和らいでいく気がして、マオにも笑顔が咲いた。
「いつまでも見つめ合ってるんじゃない!」
二人の様子が面白くないため、カムアは無理矢理割って入る。マオをジトッと見ながら膨れている。
「また怒ってるのかよ」
「怒ってないから! アタシを除け者にしているのが気に入らないだけ」
「除け者なんかしてないよ」
「そうかしら? やっぱりオマエ、ネルガに対しては優しいのね」
「そんなつもりないよ」
「自覚がないだけね」
「どうしたんだよ? お前」
「うっさい! 分からないけど、なんだかムカつくの!」
「落ち着いてカムアちゃん」
「黙れ! 五年も経ってノコノコ現れて、あっという間に距離を縮めちゃって!」
「カムアちゃん?」
「五年前に会っていたアタシよりも仲よくなっちゃって! ムカつく――アンタみたいなのがムカつくの――!!」
カムアの身体を禍々しいオーラが包む。五年前、神界から人界へ来たときのように。
ネルガの表情が一気に曇る。身体を恐怖で震わせている。
「駄目です! 暴れちゃ駄目です!」
「黙れえええ――!!」
長く伸びた爪をネルガに振りかざす。
ネルガは恐怖で動けず立ち尽くすだけ。
「――いい加減にしろよ!!」
マオの怒鳴り声が響く。ネルガを庇うように立ち、まっすぐカムアを見ている。
聞いたことのないマオの声に動きを止め、そのまま膝から崩れ落ちるカムア。爪もオーラも引っ込んだ。
「うっさいうっさいうっさいうっさいうっさい――うっさい」
「うるさくて結構だよ」
カムアに合わせてしゃがむマオ。その顔に浮かんでいるのは笑顔である。
「どうして笑ってるわけ!? どうして優しくしてくるわけ!?」
「誰かに優しくするのに理由は要らないよ」
「中途半端な優しさは、時に相手を苦しめる」
「中途半端なつもりはないよ。オレに不幸を与えた張本人でも、それが不本意だと知っているからな」
「アタシのことを忘れてたくせに」
「五歳のころのことを覚えてろって方が無理な話だよ。思い出せたことが奇跡みたいなもん」
「またねって言ってたのに」
「仕方ないだろう、両親が死んじゃったんだからな。五年振りにこっちに来たのは、親戚に厄介になるためなんだよ」
初めて聞いたことに驚きマオを見る。紫の目が大きく見開かれる。
「聞いて……ない」
「訊かれなかったからな」
「アタシ……最低ね」
「そう自分を責めるなよ。もう気にするなよ」




