季節の変わり目07
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数時間後、静かに目を覚ました彼女はぼーっとしていて視点が定まっていなかった。
この人は本当に火無菊本人なのかもわからない。
彼女の中に存在するシュウは本当になにも言わず寝てしまった。
ー触れられれば‥‥良かったのか?
もっと早く出会ってればなんて‥‥命を奪うのが仕事なのに、彼女に出会ってから感情が鈍ることがあるというのを薄々は気付いていたが。
どうしても‥‥もっと知りたいと思ってしまった。
「あっ‥‥昨日の天使だぁ」
やっと視点が定まってきたのか気付くと微笑んだが、すぐに顔を曇らせた。左眼を抑えると首を傾げた。
「なんでこんなに痛いの?」声色一つ変えない彼女はとても不気味に思えるが感情を表に出すのがとても苦手なのだろうと勝手に納得することにした。
「‥‥それは‥‥猫に引っかかれたんだよ。」
「引っかかれた?そうか‥‥‥‥だからこんなに痛いんだ。でも、なんでその記憶無いのかな‥‥それに今日は朝から記憶ないの。」
「ねぇ、どうしてかな?」と、純粋無垢な瞳で見つめてきて何故か罪悪感が生まれたが彼女はまだ自分の中に複数の人格がいることを知らない見たいだから嘘をつくしかない。言ったとしても信じる訳がないんだから。
ーそれにしても‥‥
よくあんな嘘を信じられる火無菊が凄い‥‥
それに‥‥‥死神失格かな。僕‥‥
彼女を見ていると純粋なその瞳がとても懐かしいと感じてしまう。
だけど、その記憶がないのはとても残念だが。