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言葉の動く世界  作者: 委員ちょー
9月18日~19日
3/3

第3話  RUN(ラン)

 良は、古坂が言っていることがよく分からなかった。というか『VM』とは何なのかも分からない。やはりこの人は不審者なのかと改めて思った。

「えっと、意味が分かりません。」

 正直にそう言うと古坂は「なら、もう少し話そう。」と言った。

 本当はもう帰りたいのだが、しょうがなく良は古坂の話を聞くことにした。

「そういえば、君の名前はなんだ。」

「え、竹中 良です。」

「良君、あの足の速さは生まれつきなのか?」

「いえ、中学生になってから速くなりました。それまではどちらかというと遅い方でした。」

「そうか、…なら、VMの可能性が高いな。」

「その、まだイマイチ『VM』ていうのが何なのか分からないんですけど。」

「…『バールブ』は『動詞』っていう意味のことは言ったな。」

「はい。」

 古坂は話し始めた。

「動詞というと、play(プレイ)have(ハブ)などいろいろあるよな。VMとは、ある動詞の意味が人体に付いている人のことだ。多分意味が分からないだろうから、例を出そう。私もVMだとさっき言ったが、私は『FIY(フライ)』、『飛ぶ』のバールブの能力を使える。私の経験上、上空5000メートルまで飛ぶことができる。まあ、今は事情があってできないが。」

 良が言った。

「要するに、特殊な人なんですか。」

「その通りだ。」

 ほんの少し分かってきた。VMとは、とにかく凄い人ということが。

「…それで、問題は良君だ。」

「俺が?」

「さっき言ったが、君はVMの可能性が高い。恐らく8割以上、VMだろう。」

 やはり自分はVMなのだろうか。まあ確かに足は速いが…。

 良は聞いてみた。

「その、俺がVMかどうか分かる方法ってありますか。」

「方法か…。1つある。」

「あるんですか。」

 少し良は気になっていた。そして、古坂は言った。

「今、走ってみてくれないか。」

「…走る?」

 走る、それが一番の方法だった。自分は足がとにかく速い。他の人達は絶対に追いつけない速さを持っている自分だが、それが自分の持つ能力ではないのかとだんだん思い始めていた。

 幸いにも、2人がいる所の近くにあまり人の通らない道があった。そこなら100mは走れる。良は言った。

「分かりました。あの道の100m先にいてください。できれば、『用意、スタート』って言ってくれませんか?」

 古坂は「分かった。」と言い、2人は道の方に行った。



 準備が整った。後は良が全速力で走るだけだ。

「良君、いいか?」

 向こうから古坂が叫んできた。良は「はい。」と大きな声で言った。

「分かった。」

 …古坂はいろいろ考えていた。この子がVMだったら、今後どうするか。すぐに闘いに参加するのはまずい。だか、『Vチーム』には入って欲しい。第3軍VMでもいいから…。

 とりあえず今は良君の走りを見よう。そう思った古坂は言った。

「位置について、」

 その瞬間、良の目が明らかに変わった。古坂には遠くて見えなかったが。

「用意…、」

 どうやら良はスタンディングスタートで走るようだ。良は少し腰を下げ、スタンディングスタートの体勢になった。…そして、

「スタート。」


『シュッ ビュウゥ…』

「?!!」

 ━速い。速すぎる。人間とは思えない速さだ。運動会の時、彼は100mを4.31秒で走りきったと放送で流れていた。計算すると、100÷4.31=約23.1、つまり秒速約23m、有り得ない速さなのだ。一秒で23m進めるということだか、この瞬間、今の彼もそのぐらいの速さだ。あの足はどう動いているのかが全く分からない。速すぎて何も見えないのだ。彼の姿もぼやけて見える。やはり、彼は…。

 『ビュン…』と、古坂の目の前に強い風が来た。良が前を通ったのだ。微かに見えた。

 良は一気に減速し、古坂のある場所から20mほど離れた所で止まった。

「ふう…。」

 と、良は言った。



「良君、」

「…はい?」

 古坂良の所へ歩いていき、話しかけてきた。古坂の顔に少し汗が垂れていた。

「凄い、速さだったよ…。」

「そ、そうですか。」

「そして、分かった。」

「何がですか」

「やはり君は、VMだ。間違いない。」

「…っ!」

 もう、こう言うしか古坂には無かった。古坂は確実にこの目で見た。あの驚異的スピードを…。古坂は続けて言った。

「恐らくだが、良君のバールブは、『RUN(ラン)』だ。」

「ラン…『走る』、ですか…。」

「それしかない。」

 良は『RUN』のVMと分かった。しかし、古坂にはあと1つしないといけないことがある。

「さて、ここからが問題だ。」

「え?」

「VMと分かったことはいいのだが、後は良君がVチームに入るかどうかだ。」

「Vチームに入る?俺が?」

 Vチームとは、古坂が入っている国の秘密組織のことだが、そんなところに入ると思ったら、良は戸惑うばかりだった。

「いやいや、無理ですよ!たとえ僕はよくても、僕の両親がどう言うか。あと友達のこともあるし…。ていうか、Vチームに入ったら都市部に行かないといけなくなるんじゃないですか?」

「…なら、ただ加入してほしい。加入するだけならこの町にいても大丈夫だ。ただ、もし本部から命令があったら、その時は話し合おう。」

「加入…か…。」

 ひとまず良は考えた。なんだかもう秘密組織の感じがなくなってきたけど…、まあ…、

「…分かりました。入ります、Vチームに。」

 古坂は微笑んで、「ありがとう」と言った。その後、古坂はスマートフォンを出し、何かをし始めた。

「…俺の加入ですか。」

「そうだ。」

 ピッ、ピッと鳴りながら古坂はスマートフォンに指をあてていく。そして、『送信完了』という文字が画面に出てきたのが見えた。

「よし、これでOKだ。」

「そうですか。」

 やはり加入したという実感が全くしない。が、とりあえずはこれでいいのかなと思った。

 古坂はスマートフォンをコートに入れた。すると古坂は言った。

「これで用はすんだ。付き合ってくれてありがとうな。」

「あ、はい…。」

 だか、良には1つ気になることがあった。それは、さっき古坂が言った、『奴』とは誰なのか…。

「古坂さん。」

「何だ。」

「その、さっき古坂さんが言ってた、『奴』ってだれなんですか?」

「…っ!!」

 何故か古坂の顔が険しくなった。そして「…そうか、もう入っているのなら言ってもいいか。」とボソボソと言った。

「古坂さん…?」

 古坂は口を開いた。

「…分かった。少し長いが話そう。」


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