勇者、長い旅のスタートラインに立つ。
「……か、片付いたか……」
周囲に敵の気配が無いことを確認した後、額の汗を拭い、アラン・ブレイブは安堵の声を漏らした。
いくら相手がスライムと言っても、八匹のスライムを同時に相手するのはアランにとって容易なことでは無かった。
「街はまだ遠そうだな……」
腰に付けた筒を取り、フタを勢いよく開け、中の水を喉の奥へと押し込んだ。
「んっぷ、ふぅ……」
時を遡ること一日前……
十五歳の誕生日を迎えたアランは、両親から衝撃の告白をされた。
「実は、お前は伝説の勇者の末裔なんだ」
な、なんだってー、と冗談半分のリアクションを取ったアランだったが、両親の目がマジだったので、これが冗談ではないことを悟った。
「マジ?」 「すまない、マジだ」
アランは物置の奥底で眠っていた(?)伝説の剣、『エスクカバリー』を父親から手渡され、魔王を倒す旅に出ることを強いられてしまったのだった。
いざ、旅に出たのはいいが、アランは生まれてから一歩も故郷であるハルカゼ村から外へ出たことが無かったので、知らない外の世界でうまくやっていけるのか、少し心配そうな様子だったが、
「……あ、レベル3になった」
たった一日で外の世界にすっかり慣れてしまった。
「雑魚敵相手に経験値、稼がせてもらいましょうかねっ!」
スライム相手に意気揚々とするアラン。旅はまだ始まったばかりであった。