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ジュラルミンと非常口7

「ちょっと、置いていくわよ! 集会に遅刻しちゃう」

 そんなに慌てなくても、授業が長引いたくらいで部長は怒らないのに、と思いながら僕は彼女の後を追う。


 僕達三人が魔法学校に通い始めてもう一ヶ月になる。はじめは訳の分からなかったこの世界にも大分馴染んできた。魔法学校のくせに忍者の訓練をさせられることも、放課後の部活内容がどう考えても会社員のデスクワークなのも、慣れてしまえば何ともない。

 混沌とした世界は秩序を取り戻しつつあった。膝浦の言った通り、僕がどちらを選んでも同じだったのだ。どんなに乱れた秩序もやがて落ち着きを取り戻してゆく。


「……ちょっと、居眠りしてたら怒られるわよ」

 遠くから念仏が聞こえる。

「ちょっと、起きなさいって」

 つまらない長話の比喩ではない。この部活では部長が念仏を唱えるのがしきたりだ。

「もう、病田!」

 ……ちなみに、僕はこの世界では病田銃堂(やまだじゅうどう)という名で呼ばれている。

「……分かったよ、起きるから」

 ふわああ、と大きな欠伸をして僕は体を起こす。隣にいる彼女がまた僕を睨んだ。

「随分呑気なのね」

 彼女は呆れたように言う。

 そんなことを言われても、僕よりも彼女や膝浦のほうがこの世界にやたらと詳しいし、第一僕に出来ることなんて何もなかった。

 世界の因果というものはそれなりに賢いようで、全ての平行世界の「最も良いもの」がこの世界を形成しているようだ。僕が記憶を共有し得てきた知識はことごとくこの世界に実在している。僕は本当に無力になってしまったのだ。

「膝浦だっていつも部活サボってるじゃないか」

 僕は悔し紛れに反抗する。

「あの人はああいう人じゃない」

 と、彼女は素っ気なく返す。

 僕はもう考えることに疲れていた。別に、このままでもいいじゃないか。何も考えなければ、彼女はちょっと可愛いクラスメイトだし、膝浦はクラスのボケ担当だ。

「つうか、お前は何でそんなに真面目なんだよ」

「私は、ただ怪しまれたくないだけよ」

 もう彼女はこちらを見ずにキーボードを叩き始めている。僕もやらなきゃな、今日の内容は……って始末書100枚作成かよ。だりぃ……


 夕暮れ時。僕と彼女は定時から少し遅れて学校を出てきた。本当は定刻に帰りたかったのだが、とても終わりそうになかった僕の任務を彼女が光の速さで手伝ってくれてやっとこの時間だ。僕は本当に情けない。

「んあーっ、疲れたあーっ!」

 彼女が隣で大きく伸びをしながら歩く。申し訳なさがピークに達した僕は彼女に缶ジュースを買って渡した。

「ちょっと休憩していこっか?」

 微笑みながらそう言う彼女につられて公園のベンチに腰を下ろす。心地よい風が吹いていた。


 彼女は缶ジュースを一気飲みすると、急に真剣な顔になってこちらを向いた。

「ねえ、あなたは記憶共有能力を持っていたとはいえ、ずっと自分の世界の中で生きていたから、その世界の価値観で生きてきたのでしょうね。けれど、私はたくさんの世界を“生きて”きた……その中で私にとっての“正しさ”を見つけたわ。

 ……だから、これから私がすること、怒らないでね」

 嫌な予感がした。あのときの――敵として戦っていたときの彼女のまとっていた、恐ろしい雰囲気を思い出す。

「私は、転生後も記憶を持ち続ける能力を持つから、この世界がかつて無数の平行世界だったことを知っているわ。あなたは世界の統合の瞬間に異空間にいたから記憶を保持できた。……ねえ、気付いてないの?」

「え?」

 何のことか分からない。彼女は続ける。

「平行世界が統合されたことで、今宇宙には膨大なエネルギーが余っているわ。使い方によってはこの世界なんて簡単に破壊できる。

 そんなこと知っているの、私たちの他に誰がいると思う――?」


そう言うと、彼女はジュラルミン製の空き缶を握りしめた。

三年 白山雪


とりあえず思いついたことを全部詰め込んだらこんな感じになりました。

あとは好きにしてください(´∀`*)


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