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ジュラルミンと非常口6

「魔法世界で、あなたは私を殺そうとした。概念である私を」

 彼女は言った。


「その記憶が私には必要だった。並行世界の消滅は、私の記憶もろとも消してしまうから、あなたには世界の秩序を取りとめてもらいたかったの。……結果、新しい秩序が生まれてしまったけれどね」


「記憶が必要? どうして?」


 彼女はもったいぶるように間をとった。


「私、マゾだから、誰かに殺されるときってすごくゾクゾクしちゃうの。そんな貴重な思い出、簡単に忘れたくないわ」


 多分、嘘だろうなあ、と思った。けれど、彼女は今、本当のことを言うつもりはないみたいだった。

 いつかまた、彼女が本当のことを話してくれるときが、くるだろう。


 彼女は僕に白い手を差し出す。

「さあ、帰りましょう」

「帰るってどこへ?」


 世界は今、新しい秩序の中にある。全ての世界がごちゃまぜなはずだ。そんな世界に、僕たちの明確な帰る場所なんて存在するのだろうか。


「魔法学園よ」と彼女は言う。

「魔法学園……?」


「魔法を教える学園よ。生徒の自治が大幅に認められていて、生徒会があって、美人でブロンドの生徒会長がいる。そんな夢のような学園が、いくつもの並行世界の統合で誕生しているわ」


「まさか!」


「そのまさかよ。さあ、行きましょう」

 彼女は強引に俺の手をひく。


 しかし、そのとき、後ろから声をかけられた。

「待ちな」

 僕と彼女はそろって立ち止り、後ろを振り返る。


 旅館の廊下に膝浦が立っていた。段ボールで封鎖されたはずの非常口が開いており、冷たい夜風が廊下に入っている。

 膝浦の手には、ショットガンが握られていた。ゆっくりと銃口が俺たちに向けられる。

「……なんで、いきなり?」

 僕たちを狙い澄ます膝浦の真剣な瞳に、僕は尋ねる。ショットガンの銃口を向けられて、さすがの彼女も青ざめていた。


 けれど、膝浦が言った言葉は、予想外のものだった。

「俺も魔法学園に連れて行け」

「どうして?」


「お前やそこの女にこの世界の秩序を乱した目的があるように、俺にもある目的がある。その目的を達成するためには、その魔法学園に行かなければならないんだ」


「なるほど。いいよ!」と彼女は言った。

「やったぜ」と叫んで、膝浦はショットガンを祝砲のように鳴らして喜んだ。

「そうと決まれば早くしないと」彼女が慌てて言う。

「どうして?」

 もう夜中だ。学校に行くのに、なんでこんな時間から急がなければならないんだろう。

「列車がでるの。横浜駅から」

「どこ行きの?」

「だから、魔法学園よ」彼女は力強い声で言った。

「電車に乗るの、実は初めてなんだ。やったぜ」と膝浦は叫んだ。ショットガンがバン、バン、と音を立てながら天井に穴を開けていた。


 でも、こんな温泉地から横浜なんて、かなり時間がかかるはずだ。

「タクシーで行けば朝には着くわ」

 彼女が簡単にそう言い放つ。

 タクシーと聴いて、膝浦が目の色を変える。

「タクシーか。俺、一度、タクシーの助手席に乗ってみたかったんだ。乗って良いかな?」

「いいわ」と彼女が了承すると、「やったぜ」とショットガンを鳴らして膝浦は喜んだ。


 彼女も、そして、膝浦も、他人に話したがらないなにか目的があるみたいだ。いまだに、俺は彼女や膝浦を信用していいのか、わからない。

 

 けれど。

 魔法とタクシーと横浜駅が共存している、そんな右も左もわからない新世界では、仲間がいたほうが心強い。

 今のところは、ふたりのことを信頼しておこう、と俺は思った。


 こうして、俺と彼女と膝浦の学園生活が始まった。


頑張って伏線漏らさないように頑張ったけど、

どうも他人の続きを書く才能が自分にないことが

わかりました。ごめんなさい。

次の人、よろしくお願いします。


4年、山本章一

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