第十章8 『選択の結果』
「――たびたび当家を気にかけていただき、感謝に堪えません」
「いや、そんなの当然です。お礼を言われるようなことじゃないですって」
そう言って大いに恐縮しながら、スバルはお茶を配膳してくれる人物――ヴィルヘルムの言葉に、あたふたと膝の上のベアトリスの両手を振った。
そのスバルの仕草にベアトリスがじと目を向けてくるが、こちらの緊張具合は背中越しの心音で伝わっているのだろう。彼女は仕方なさそうにため息をつくと、そのままスバルの操り人形に徹し続けてくれていた。
――絶賛、王選を混乱の渦中に叩き込んだフィルオーレとの対面を済ませたスバルたちは、その『神龍教会』の教会で聞いたクルシュの目覚めの報にいてもたってもいられず、こうして貴族街のカルステン邸へ直行したところだ。
当然だが、正しいマナーに則るなら、訪ねる前にアポを取るのが必須。が、それすら忘れるほど社交的に落第点の訪問だったのを、しかし快く迎え入れてもらった。
ヴィルヘルムの案内で応接室に通されたスバルたちは、長椅子に四人(ベアトリスはスバルの膝上)並んで座り、その瞬間の訪れを今か今かと待っている。
そのスバルの逸り具合が目につくのか、ヴィルヘルムが深々と腰を折り、
「今しばらく、クルシュ様のご用意にお時間をいただきたく。申し訳ありません」
「いやいや、俺たちがいきなりきちまったんですから。むしろ、追い返されなかっただけありがたいっていうか」
「追い返すなどと。クルシュ様も、スバル殿やエミリア様が訪ねてくださったことを大変喜んでおいででした」
「いやいやいや、それに関しちゃ逆というか逆になるかもというか、俺なんて目覚めたクルシュさんのこと見たら涙出るかもなんで……」
情けない話だが、冗談抜きにそうなる可能性があるので、前もってヴィルヘルムにも、エミリアたちにも心の準備をしておいてほしいところだ。
今はただ、逸る気持ちを堪えるように、ヴィルヘルムの受け答えにブンブンブンブンと、「いや」に合わせてベアトリスの腕を振るのみ。
「って、いくら何でもベティーのお手々をブラブラしすぎなのよ! いい加減、肩と腕がだるくなってきたかしら!」
「ぐ……ごめん悪いすまねぇ、とにかく落ち着かなくて。だって……」
スバルの精神安定人形に徹していたベアトリスが、我慢の限界を迎えて吠える。そのベアトリスの頬をつつきながら、スバルはそこで一拍、言葉を切った。
じれったく、焦る気持ちはある。だが、我慢の価値がある。
「だって、クルシュさんが……」
「――はい。それは、間違いございません」
万感の思いがこもったスバルの吐息に、ヴィルヘルムも同じぐらい感慨深く首肯する。――否、同じぐらいだなんて、図々しいにも程があった。
ヴィルヘルムの安堵は、スバルの何倍も、何十倍も大きいに決まっている。忠義を尽くすと誓った相手の回復は、それだけ大きな出来事なのだから。
「もう何度も言ったけど、ヴィルヘルムさん、本当によかったわね」
そう、改めてヴィルヘルムの労をねぎらうのは、スバルの隣に座ったエミリアだ。
フィルオーレが教会の秘蹟を用い、クルシュを治療した場に居合わせたというエミリアは、その日のうちにもヴィルヘルムたちをねぎらえている。とはいえ、その後もクルシュの意識は戻らなかったわけだから、目覚めたクルシュと話せる機会を目前に、エミリアもまた期待にその紫紺の瞳を輝かせていた。
「やれやれ、この分だと二人の粗相が怖いのよ。レム、この場はベティーたちがしっかりしてないと大変なことになりかねないかしら」
「そうですね。度を越したときには任せてください。少しずつ、鉄球の扱いと重みにも慣れてきたところなので」
スバルとエミリアが落ち着かない分、見舞い客としての冷静さを保っているベアトリスとレム、二人が肝心なときに備えてくれるのは心強い限りだが、ほんのりのレムの身じろぎに鎖の音が混じるのが怖くて刺激的でもある。
レムにフォローを頼むときは、スバルも相当な覚悟が必要そうだ。
「そうだ、フォローって言えば、フェリスは? クルシュさんの着替えの手伝いですか? あいつとも、話したいことが色々あって」
ふと、この場にいるべき顔が見当たらないことに気付いて、スバルがそう疑問する。
スバルたちやヴィルヘルムも、クルシュの回復には望外の喜びがあるだろう。だが、それを最も大きく感じているのが、他ならぬクルシュの一の騎士のはずだ。
もちろん、そのクルシュの救いが『神龍教会』にもたらされたことは、治癒術師でもある彼にとってひどく痛烈なものでもあっただろうが、無力感による自責の念よりも、クルシュの無事の方を喜べる、そうした人間であることは疑っていない。
しかし――、
「――――」
「――? ヴィルヘルムさん?」
一瞬、頬を強張らせたヴィルヘルムの反応に、スバルは怪訝に眉を寄せる。だが、ヴィルヘルムはすぐに「失礼しました」とその強張りを打ち消すと、
「フェリスですが……実は、少々体調を崩しております。クルシュ様のお体のことがあってすぐ、どうやらこれまでの心労が一気に噴き出したようで」
「大変、あのあとそんなことがあったの? ……フェリスが心配ね。せっかくクルシュさんが起きられても、自分が倒れたなんて、フェリスが自分を責めちゃう」
「うん、そうだね。ヴィルヘルムさん、フェリスの調子は悪いんですか?」
「……いえ、休めばよくなるものと。ただ、今は見舞いを控えていただければ。当人も、クルシュ様を見舞われた皆様のお気持ちを邪魔したがらないかと思いますので」
「邪魔だなんて思わないけど……ええ、わかったわ。また今度にするわね」
弱り目に祟り目ではないが、そうした事情があるならと、ヴィルヘルムからの提言にエミリアが頷き、スバルもそれに同意する。
まだしばらくは、スバルたちも王都に滞在する予定だ。今日を逃しても、フェリスをねぎらう機会はまたあるだろう。この場は当人の意思を尊重しておくべき。――と、スバルたちがそう一息ついたところだった。
「――大変、お待たせしました」
そう言って、応接室の扉を開いた相手を見て、思わずスバルは立ち上がっていた。
部屋の入口、そこに姿を見せたのは、暗色の寝衣に桃色のストールを羽織った、すらりとした細身に長い緑髪が特徴的な、美しい女性――クルシュ・カルステンその人だ。
「――――」
最後に見たとき、クルシュは苦しげに呼吸を乱し、ベッドから体を起こすことも難しいような状態だった。その彼女が自分の足で立って、こうしてスバルたちの前に姿を見せてくれたことに、望外の喜びと感慨が溢れる。
ただ、スバルを見て、儚げな微笑を浮かべる彼女の顔の半分には、左目を覆うような包帯が巻かれたままで、それがどうしても最初に目を引いてしまう――、
「安心なさってください。この包帯は、まだ少し片目が見えづらいのでしているだけで、異変の大部分……いいえ、異変は取り除かれました」
「あ……」
「ですので、そうお顔を曇らせないでください」
そう言われ、スバルは見舞いにきたはずが、逆に気遣わせてしまったと反省する。
まだ顔を覆った包帯を残したままなことには驚いたが、それ以上に注目すべきは、クルシュが自分の足で、スバルたちにこうして会いにきてくれた事実の方だ。
それが途方もない困難に思えるほど、クルシュの病状は深刻だったのだから。
「――――」
「――スバル様?」
ふと、黙り込んだスバルを見て、微笑していたクルシュが琥珀色の目を細める。今は片方だけのそれに見つめられ、スバルは慎重に言葉を選んだ。
なにせ、言葉一つ呼吸一つ間違えたら、途端に我慢が、雫になってこぼれそうで。
「……あのさ、クルシュさん。色々、本当に色々言いたいことがあって、その大半がごめんとか、悪かったとか、そういう謝る言葉ばっかりだったんだけど」
「――。はい」
「でも、こうして直接クルシュさんと会ったら、出てきたのは、よかったとか、ホッとしたとか、そういうのばっかりなんだ。本当に、本当にホッとした……」
見舞い客としての模範解答は、事前にいくつも用意していたはずだった。
こうして屋敷を訪ねる道のりでも、この待ち時間の間にも、ベストな見舞いの言葉を必死に頭の中でシミュレートして、最高の答えを選び抜いたつもりだった。
なのに、その全部が実物のクルシュと会った途端に消し飛んで、出てきたのはまるで子どもみたいな、未成熟で取り留めのない安堵感でしかなくて。
「――――」
そのスバルの情けない自認から絞り出された言葉に、一瞬、目を見張ったクルシュが、すぐにまた柔らかい微笑を口元に取り戻すと、
「そう言っていただけて、私も安心しました。スバル様には、たびたび私のみっともない姿をお見せしていますから、そろそろ愛想を尽かされたものかと」
「そんなこと! 全然ないない、あるわけない! っていうか、病み上がりなのに立ち話なんてさせるもんじゃないよな。あの、どうぞお座りください」
「ふふ、ではそうさせていただきます」
あたふたとペースを崩されつつ、スバルが正面の椅子を勧めると、口元に手を当てて笑ったクルシュが、そのエスコートに従ってくれる。何故かスバルが段取りしてしまったが、相手の家なのだから笑われて当然だ。
どうにも話がぎこちなくなるスバルは、クルシュがヴィルヘルムの手を借りて座るのを見届けながら、すぐ隣のエミリアたちを恨めしげに見やり、
「なんか、俺だけバタバタしててみんなズルくない? なんで踊らされてるの、俺」
「だって、クルシュさんを一番心配してたのはスバルでしょう? だから、一番にお話ししたいんじゃないかなって思って」
「私は、今ここででしゃばる立場ではありませんので。それに、ベアトリスちゃんのこともありましたから」
「ベア子のことって……あれ? なんで、ベア子がレムの膝の上に? お前、俺の膝の上に座ってなかったっけ?」
「いたけど、スバルが立ち上がった勢いで吹っ飛ばされたのよ! レムが上手にキャッチしてくれなかったら、今頃部屋の真ん中に大の字かしら!」
「そ、そうか、そりゃ悪かった。文字通り、眼中になくて……」
「言い方が悪すぎなのよ!」
頬を膨らませたベアトリスが、意地を張ったようにレムに抱き着く。その抱擁を受け入れ態勢のレムに彼女を任せ、スバルは周りが見えていなさすぎたとこれも反省。
と、そのスバルたちのやり取りに、「ふふ」とクルシュもまた笑みを深めた。そのクルシュの反応に、エミリアが紫紺の瞳を細めながら、
「お見舞いなのに、みんな賑やかでごめんなさいね」
「いいえ、賑やかなのも嫌いではありません。それに、一報を受けてすぐに訪ねてきてくださったことも……嬉しかったです」
「それならよかった。……あ、でも、はしゃぎすぎないようにさせるから」
クルシュの体を気遣い、最後にエミリアらしい一言が付け足される。
そこに思いやりと、ちゃんと言葉を選ぼうという意思が見て取れ、こんな場面だが、エミリアの目に見える成長が感じられた。
もちろん、クルシュの言葉を額面通りに受け止めすぎるのもよくないが――、
「体の調子はどう?」
「はい。ずいぶんと楽になりました。今しばらく、体力の回復には時間がかかりそうですが、大きな問題はないように思います」
そう答え、肩にかけたストールの位置を直すクルシュ。病み上がりだけに、その顔色はまだ少し青白いが、受け答えは自然で、彼女の聡明さに陰りはない。
見たところ、歩き方などもちゃんとしたもので、左目を覆った包帯以外に、あの日の痕跡は彼女に残っていないらしい。ひとまず、一安心と言える。
もっとも――、
「臥せっている間のことは、私も報告を受けています。……プリシラ様が、亡くなられたというお話も」
その聡明さが健在であるなら、ただ手放しに体調の回復だけを喜んでいられない状況であることも、クルシュはしっかりと理解している。
「――――」
避けられない話題とはわかっていても、すぐに持ち出すには不適切に思われた話題、それを他ならぬクルシュから持ち出されたことに、スバルたちの方が頬を硬くした。
この場は、クルシュの快方をよかったとねぎらい、王選にまつわる深い話はまた別の機会にできれば――そんな気休めは、望んでいないとばかりに。
「私の記憶する限り、プリシラ様とはほとんど言葉を交わせませんでした。ですが、彼女も自分なりの信義があって、プリステラの戦いに……ひいては王選に参加していたことは疑いようもありません。だからこそ、私たちは彼女の分も、王選を続けなければ」
「――。ええ、それは私もおんなじ考えよ。プリシラのためにも、いつまでもへこたれてちゃダメなんだって、そう思ってる」
「そうですよね。よかった。エミリア様も、同じ考えでいてくださって」
頷くエミリアの前で安堵の息をこぼし、クルシュが紅茶のカップに口を付ける。それで舌と唇を湿らせた彼女は、その右目だけの琥珀色の輝きでこちらを見据え、「でしたら」と言葉を継ぐと、
「今、重要視すべきなのが王国の安定にあることはご同意いただけると思います。王選において、魔女教の所業は確かに痛恨事ではありましたが、その対策と対処に時間を割きすぎるのは、王選本来の命題とも筋違いですから」
「ん、それもわかるわ。王選は、王国の未来を決めるためのものであって、魔女教をどうにかするためのものじゃない。そういうことよね?」
「ええ、そうです。無論、あのものたちへの対処は、為政者が取り組むべき課題ではありますが、それを第一に置くのはそれこそ相手の思うつぼ。私たちは思い出さなくてはなりません。王選の本分、そのものを」
「それなら、フェルトちゃんも今王都にいるの。アナスタシアさんは、まだこっちに戻ってこれてないみたいだけど、話し合えるなら私も喜んで――」
「――それに」と、クルシュがエミリアの話を途中で遮り、わずかに前のめりになる。一瞬、抜身の刃を宛がわれるような感覚に、エミリアが軽く目を見張った。
そのエミリアの反応に取り合わず、クルシュはなおも琥珀色の瞳の光を強め、
「聞きました。『賢者』の塔……プレアデス監視塔への道を拓かれたと。さすがの成果を挙げられたと感服します。あの塔が噂に聞いた通りの力を秘めているなら、十分に他国に対する牽制にもなるでしょう。扱いは、『賢人会』と慎重に検討しなくては」
「クルシュさん……」
「肝心の『親竜儀』……次代の王を決める投票日の期限も、あと一年半を切っています。この先はより各陣営の主張の是非が問われることになります。これまで以上に、周囲の人間の顔を見て、声に耳を傾けなくてはなりません」
「待って、クルシュさん、お話はしたいの。でも、そんなに焦らないで。今は――」
「――私は!」
「――っ」
一気に、とめどなく溢れ出したクルシュの言葉、その濁流をエミリアが感情で押しとどめようとした瞬間、強い一声が応接室を切り裂いた。
クルシュの持つ紅茶のカップが乱暴にソーサーに戻され、高い音を立ててお茶がこぼれる。とっさにヴィルヘルムがクルシュの手を引かせ、お茶を浴びかけた主の手にハンカチをかけると、すぐにカップを後ろに下げた。
その間、されるがままのクルシュは、ひと時たりともスバルたちから目を離さない。
目を離さないまま、その薄い唇を震わせ、
「私は、間違っていますか……?」
「――――」
直前までの、毅然とした知性を宿した口調が乱れ、問いかけは涙に濡れていた。
実際には、クルシュの瞳に涙など浮かんでいない。だが、声は泣いていた。その、理性と感情のズレの大きさが、痛烈にスバルの胸を切り刻む。
わかっているのだ、クルシュは。
彼女は聡明で、優れた知見の持ち主で、多くの責任や課題と向き合い続けてきた努力家だから、スバルたちが言葉を選ぼうとも、選び切れずとも関係ない。
自分の救われ方が、自分の目指した王に相応しくなかったのだと、わかっている。
「……そんな、馬鹿な話があるかよ」
自分で、自分の中に生まれた確信を振り返り、スバルは奥歯を軋らせる。
馬鹿げた、本当に馬鹿げた話だと言わざるを得ない。救われ方が悪いとか、それじゃまるで、クルシュが今も、『色欲』の悪意に苦しみ続けていた方がよかったみたいだ。
そんな馬鹿な話はない。どうして、クルシュのような立派な人が、魔女教みたいなふざけた連中の行いで、夢や目標を絶たれなくてはならないのか。
理不尽な苦しみだった。味わう理由なんてない不条理だった。
そこから、誰かの温情で救われたからなんだというのか。救ってくれてありがとう。この感謝を忘れずに、これからも一生懸命頑張ります。――それじゃダメなのか。
「――間違ってなんか、ねぇよ」
胸の内に、どうにもならない怒りと共に湧き上がる感情があった。
それに背を押されるように、気付けばスバルはまたしても立ち上がり、ローテーブルを挟んだクルシュの手を、ギュッと握りしめていた。
ハンカチが落ちたクルシュの白い手指に、あの醜い黒い斑模様は存在しない。これが本来の、誰にも穢される理由なんてない、クルシュの手だ。
「スバル、様」
「間違ってなんかない。間違ってるもんか。王選、ちゃんとやろうぜ。ちゃんと話して、ちゃんと考えて、ちゃんとみんなで競おう。俺、なんだってやるよ」
また安請け合いをと、そう叱られ、罵られるのも覚悟の発言だった。
敵対陣営だ。このまま、強力なライバルであるクルシュが王選を脱落してくれた方が、エミリアにとっては大助かり、なんて誰もが思うことだろう。
「でも違う。そうじゃねぇだろ。俺たちが全員、自分のところのその人を王様にしたいって、しようって思った王選は、そんな決まり方じゃねぇはずだ」
「――――」
「だから、クルシュさんは、間違ってなんかないよ」
ちゃんと、だからに繋がる文章になっていたか、自分で自分に自信がない。
しかし、その思い余ったスバルの勢いに、クルシュはわずかに気圧されながらも、どこか張り詰めたものが緩むような、そんな吐息をこぼした。
「もう、スバルがワーッていっちゃうから、私が言おうと思ったこと、ほとんど先に言われちゃったじゃない。ずるっこね」
と、そのクルシュの雰囲気の変化が見て取れたのか、ソファに座ったままのエミリアが唇を尖らせ、スバルの言動をそう窘める。
途端、一人だけ先走って熱くなってしまって、スバルも耳まで熱くなった。
それからいかんいかんと、スバルはいそいそと元の位置に戻ろうとして――、
「――。スバル様、その手は……」
「え? 手?」
指摘され、スバルは今しがたクルシュの手を握っていた自分の手を見下ろす。
言われてみればのものすごい無作法を注意されたのかと思いきや、そうではない。クルシュの琥珀色の目が気にしたのは、そのスバルの無作法ではなく、
「スバル様の、手です。私の体と同じようになっていた……まさか、スバル様の手も、『神龍教会』の力を?」
「あ、いや、これはもっと乱暴というか、バーンってなった結果なんだけど、詳しい方法は俺もわからずじまいなんで、地味に怖い話ではある」
実際、スバルの手は今でこそ、元の肌色の人肌を取り戻しているが、そうなった経緯はなかなかバイオレンスで、誰にも真似をさせられるものではない。
有体に言えば、焼いて吹き飛ばして生え変わった、だ。――現状、足も同じ状態と言えるが、焼いて吹き飛ばして生え変わるか試す気にはなれない。
「――い」
「――――」
手をグーパーしながら、その過激な治療法を振り返っていたスバルは、ふと微かな囁きが聞こえた気がして、思わず息を詰めた。
目をぱちくりさせ、目の前のクルシュを見る。まさか、そんなはずがの気持ちで。
「クルシュさん、まずはゆっくり体を休めて。そのあとで、私もスバルが先に言ってくれたみたいに、できることは何でもするつもりだから」
「……ありがとうございます。後悔、されるかもしれませんよ?」
「今の私は、昔の私よりも、していい後悔とダメな後悔の区別がつくつもりだから」
しかし、スバルに差し込んだ違和感と疑念は、その頭越しに交わされたエミリアとクルシュの、王選候補者同士らしい会話によって押しのけられた。
実際、敵に塩を送る以外の何物でもないスバルやエミリアの提案だが、それを避けてクルシュに勝ったところで、心から喜ぶことなんて到底できない。
だから、この提案と決意表明は、エミリア陣営の願いに適ったものなのだ。
「――ふぅ」
そうやり取りしたところで、クルシュが疲労の滲んだ吐息を漏らす。
病み上がりで体力の戻っていないところで、感情的になった一幕もあった。クルシュの体力的にも、十分長丁場になってしまったと言える。
「そろそろお暇しましょう。エミリアさん」
「そうね。すごーく疲れて大変なときなのに、会ってくれてありがとう」
「いいえ、こちらこそ、大したお構いもできずに申し訳ありません。ヴィルヘルム、皆さんを送っていただけますか?」
レムに促され、面会を終わらせる区切りを付けるエミリアの前で、微笑んだクルシュが傍らのヴィルヘルムにそう告げる。一礼したヴィルヘルムがそれを引き受け、スバルたちが引き上げる用意にかかると、クルシュも見送りに立ち上がった。
そして――、
「今日は、本当にありがとうございました。お会いできて、嬉しかったです」
「――――」
その場で見送る非礼を詫びながら、クルシュがスバルたちにそう挨拶する。
瞬間、スバルは一言、何かを言うか躊躇って――、
「――スバル殿、お送りいたします」
その気配を察したように、ヴィルヘルムにそれを遮られていた。
「先ほどは、大変失礼いたしました」
応接室を離れ、屋敷の入口まで送られる道中、先を行くヴィルヘルムがそう切り出す。その言葉に、ベアトリスと手を繋ぐスバルは「やっぱり」と目を見張り、
「最後にストップかけられたのは気付きました。……けど、俺自身、あそこで何を言おうとしてたのか自分でもわかってなくて」
「それでも、客人の言葉を遮るなどと出過ぎた真似をしました。クルシュ様の身を案じる一心でしたが、無礼をお詫びいたします」
「……ヴィルヘルムさんも気付いてますよね。クルシュさんの、あの様子は」
「無論、本調子には程遠く、今しばらくの静養が必要でしょう。ただ、それでお体とお心の調子が戻ったとて……」
目を伏せて、ヴィルヘルムはそこから先を口にしなかった。しかし、彼が言わなかったその先は、スバルにもおおよそ予想できる。
あえて明確に、あの場では誰も言わなかった。でも、他ならぬクルシュが一番痛感していたから、あんなにも痛切な感情がこぼれ出したのだ。
それに――、
「フェリスも、悔しいでしょうね。今、クルシュさんを傍で一番支えたいはずなのに、体が言うことを聞かないなんて」
出てきたばかりの応接室の方を窺いながら、エミリアも心配げにそうこぼす。そのエミリアの言葉に、前を歩くヴィルヘルムの喉が微かに鳴った。
それから彼は、足を止めないまま、「エミリア様」と神妙な声音で、
「先ほど、私は嘘をお伝えしました」
「え? 嘘?」
「はい。――フェリスのことです」
伝えられた言葉と名前に、スバルたちが揃って顔を見合わせる。
フェリスにまつわる嘘と、そうヴィルヘルムは言った。彼の説明では、フェリスは体調を崩し、休んでいる最中とのことだが――、
「いや、おかしい。そもそも、フェリスって体調崩さないんじゃなかったか?」
「いくら何でも……あの、ラインハルトさんではないんですから」
「もちろん、ラインハルトも規格外なんだけど、フェリスもそういう意味じゃ規格外の一人というか」
竜車を抱えてひとっ飛びできる、万国ビックリ人間のラインハルトはさておき、フェリスは治癒術師――それも、王国最強レベルと称される『青』の称号の持ち主だ。
以前、スバルはフェリスが魔女教徒の自爆攻撃に巻き込まれ、竜車が粉々になった現場から平然と戻ってくるところを目撃したことがある。
いわゆる、漫画やアニメでお馴染みの超ヒーラー、それがフェリスだ。
もちろん、マナ切れを起こしたり、クルシュに全力を傾けたりしていたので、そのときのことが今も当て嵌まるとは一概には言えないが。
「スバル殿のお気付きの通り、フェリスは臥せっているのではありません。今彼は、この屋敷にはいないのです」
「屋敷に、いない? それって……」
「――王立霊園へ、どうか」
思いがけず浮上した疑問、それに答えることをせず、ヴィルヘルムは言葉少なにその地名を告げ、スバルたちを屋敷の入口へ案内した。
王立霊園――聞くだに、目的の明白な場のように思える。
しかし、その場所のことをスバルたちに告げたヴィルヘルムの真意は――、
「どれほど恥を重ねようと、今、私はクルシュ様に仕える身。主のご意向に逆らい、動くことはなりません。――どうか、話に耳を傾けていただきたい」
そう深々と腰を折り、ヴィルヘルムはスバルたちを送り出した。
その、皺深い顔に刻まれた苦悩の色は、『剣鬼』をして、その剣で解決のならない問題であり、しかし苦渋の末にでも解決を望む、そうした祈りなのだと感じられた。
△▼△▼△▼△
――王立霊園は、王都ルグニカの貴族街、その最奥に位置していた。
その音と、音から感じ取れた字面の示す通り、その地は霊園――すなわち、死者を弔うための墓石がいくつも立ち並ぶ、魂の安息を祈られたものたちの寝床だった。
「白鯨討伐があったでしょ? あの戦いに参加して、命を落としてしまった人たちのお墓もここにあるんですって」
「そっか。それは、きたことなかったの薄情者すぎたな。今日は花を持ってきてないから、次くるときはちゃんと準備してこねぇとだ」
「そうね。たくさんありがとうと、お疲れ様を言わないと」
鉄錆一つ浮いていない黒鉄の正門を抜けると、そこに広がったのは幾何学模様に敷き詰められた石畳の参道と、それを両脇から取り囲むように形成された墓標の列――そこに立ち並んだ墓石は、単なる石碑と呼べるようなものは一つとしてない。
あるものは生前の武勲を誇示する騎士の彫像を冠し、あるものは一族の歴史を物語る精緻な彫刻を施された小さな神殿めいた造りをしていた。家紋を刻んだ旗印が風に揺れ、弔問者たちが供えた色とりどりの花束が、灰色の石の世界に唯一生彩を与えている。
「さすが、貴族ってのは墓石でも見栄っ張りなもんだ。……派手さを除いたら、洋画とか海外ドラマとかで見た墓地の印象に近い、かな」
手入れの行き届いた芝生と、石畳の参道が緩やかな丘を中心に広がっている。スバルにとって身近な和風の墓石や卒塔婆、神社仏閣といった建物が周囲にない、涼しく寂しげな風の吹き抜ける、そういう空間だった。
「そう言えば、あえて考えてこなかったけど……こっちって、亡くなった人は火葬? それとも土葬?」
「基本は火葬かしら。生き物は命を落とせば、その肉体から魂……オドが抜け落ちる。オドをなくした肉体は、その形をグズグズと崩れさせていくだけで見るに堪えんのよ。だからそうなる前に、肉体にもオドと同じく、役目を終えたと示すかしら」
「なるほど、疫病対策とかじゃなくて、存在の仕組み的にそうするのか」
疑問に即座に答えてくれたベアトリスのおかげで、その仕組みにも納得がいく。
道理で、ヴォラキアで起こった『大災』の際、蘇ってきた多くのゾンビたちが、腐った体だったり、手足がもげていたり不完全な状態でなかったわけだ。あれらの場合、蘇るのに利用された魂の形を元に、体は土塊によって形作られていた。
だからあのゾンビたちは、生前の姿のまま、現世に蘇ってきていたのだ。
「そうなると、魂の行き着く先……オド・ラグナの揺り籠だかなんだかって、かなり貴重な場所だったんだな。三途の川とか、時の最果てみたいな」
「ブツブツと、いきなりおっかないこと言うんじゃないのよ。オド・ラグナの揺り籠だなんて、冗談でも口にするもんじゃないかしら。うっかりそれと目が合おうものなら、正気を奪われるともっぱらの噂なのよ」
「いや、冗談とかじゃなくて、本当に……でも、あれもルイが勝手に言ってただけだから、信憑性がどのぐらいあるか怪しいもんか?」
顔をしかめたベアトリスに注意され、スバルは良くも悪くも濃密な時間を過ごしたと言える、あの真っ白い空間のことを回想する。
『記憶の回廊』などと、あの場所の門番気取りのルイ・アルネブは称していたが、実際、そうした向きはありつつも、あそこが具体的になんだったのかは不明だ。ルイの意識もどこかに消えて、彼女がスピカに生まれ変わった今、確かめる術もない。
「強いて言うなら、またレイドの本なり見つけ出して、とんでもない目に遭うの覚悟で中を覗いてみるかだけど……」
「――あの、お話し中とは思いますが、こっちもいいですか?」
「え?」
「ここには、どなたか探しにきたんですよね。フェリスさん、でしたか?」
クイッと袖を引かれ、振り返ったスバルにレムがそう問いかける。
深い疑問の色を瞳に宿したレムは、当然だが、フェリスの人となりを知らないのだ。それで霊園に連れてこられても、それは確かに手持ち無沙汰だっただろう。
「ああ、悪い悪い! ええと、今から探すのは、猫耳できゃるんってした感じの相手だ。尻尾も生えてるのと、だいぶ可愛いから見ればわかると思う」
「……もう少し、参考になる情報をもらいたいんですけど」
「いや、結構ヒント出たと思うんだけど……ああ、可愛いって言っても、ベア子的な可愛さじゃなくて、ペトラとかメィリィ的な可愛さだ。背は俺ぐらい高い」
「なるほど、それは可愛さに違いがありますね」
抱き上げたベアトリスを顔の前に掲げられ、じっくりとその顔を眺めたレムが、スバルの説明に納得した風に頷く。当のベアトリスはその納得に疑問を深めた顔だが、当人が自分の可愛さの細かな部分に無自覚なのはチャームポイントと言える。
実際、可愛さは千差万別、可愛い寄りの美人とか美人寄りの可愛いとか色々だ。とはいえ、そうしてフェリスの特徴を共有できたところで――、
「ヴィルヘルムさんのあの態度、どういうことだったのかしら。心配ね」
「――居場所がわかってて、それで俺たちに話にいってほしいってのも、な」
「ん、そうよね。相談してくれたり、頼られるのは嬉しいけど、クルシュさんもヴィルヘルムさんも、あんまり自分のそういうところを見せてくれない気がしてたから」
そのエミリアの感覚にはスバルも頷けるものがある。
わかるのは、クルシュ陣営で何らかの問題が起こり、その解決のためにヴィルヘルムが自分から動くことができない、といったところか。
その問題の切っ掛けになりそうなものは、もちろんスバルも思い浮かぶ。が、それがあったとて、クルシュ陣営の絆は強い。それこそ、他の王選候補者たちの誰と比べても、最も長く、硬い絆で結ばれていた二人だ。
その想いの深さは、たとえクルシュの『記憶』が失われても消えていない――少なくとも、スバルはそう感じていたし、信じてきた。
ただし――、
「――――」
じっと、自分の右手を見下ろして、スバルはその生命線を睨みつける。その脳裏を過ったのは、無作法にもクルシュの手を握り、その手を見返されたときのこと。
彼女はスバルの手を見て、それがあの黒い紋様から解放されているのを知ると、それが『神龍教会』の秘蹟の力を借りたものではないと聞いて――、
『――ズルい』
と、そう消え入りそうなほど、ささやかな声で言ったのだ。
「聞き間違いじゃ、ないよな……」
そうであればと心から思うが、そこまで都合のいい耳も、自意識もスバルは持ち合わせていない。あれは紛れもなく、クルシュの唇から漏れ出した、暗い本音だ。
正直、ショックではあった。だが、それを口にすることさえクルシュには許したくないと願うなら、それは純然たる傲慢というものだ。何より、クルシュがそう口走ってしまう理由を、スバルは痛いほどに理解しているのだから。
「……とても、クルシュさんにその話はできねぇよ」
渦中の当事者であり、体が復調したばかりに、今度は心に無数の傷を負いかねない可能性を背負ってしまったクルシュ。その彼女には直接問い質せないことを、ならば騎士であるフェリスになら聞けるとでもいうのか、それも確証のある話ではない。
ただ、このままおめおめと仲間の下に戻っても、延々と答えの出ない煩悶を抱え続けるだけだとわかっているから。
「うーん、フェリス、見当たらないわね」
そうして考え事をしながら、気付けばスバルたちは霊園を一周してしまっていた。
決して狭くない敷地ではあるが、貴族街に置かれた霊園だけに、ここに眠る死者の多くは王国の重責を担ったものたちと見られ、死後の扱いも相応以上に丁重にされている。霊園の奥にいくほど一つ一つの墓標の規模や扱いは大きく丁寧に、その分、少ない弔問者の顔は見分けやすくなるのだから、フェリスを見落としたとは考えにくい。
せめて、彼が誰を目当てに霊園を訪れたのか、それだけでもわかれば話は別だが。
「一通り見てみましたが、聞いた特徴の女性は見当たりませんね」
「厳密には、女の子じゃ……いや、でも見た目には関係ないから、そこはいいや」
「――? あと目立つところと言えば、あの建物でしょうか」
詳しい説明を省いたスバルを訝しみつつ、そうレムが手で示したのは、広大な敷地に整然と並んだ石碑を背に、中央の丘に座した白亜の建物――いわゆる、霊廟だ。
荘厳かつ神聖な雰囲気を纏い、外周を彩る墓石群を、まるで主に忠誠を誓ったものたちのように従える在り様は、そこが選ばれたものの安息地であることの証。
ここが王立霊園で、その中で特別扱いされる死者たちの寝床というなら――、
「――王家の人間が眠ってる霊廟、っぽいな」
「じゃあ、亡くなった王族の人たちがあの中に……」
王選の始まる切っ掛けであり、長く続いたルグニカ王国の、その由緒正しい血統を現代に至るまで継いできた、大きな役割と、呆気ない最期を遂げた王族たち。
そうしたものたちが葬られた霊廟を前に、スバルはようよう遅れて理解する。――この場所に漂っている厳かな気配、ここはある意味、王都の縮図なのだ。王城が生者たちにとっての権威の象徴であるなら、霊廟は死者にとってのそれと同じ――、
「……さすがに、王様たちの墓参りは気軽にできないよな?」
「普通に考えたら、王族の霊廟なんて厳重警戒されてるものかしら。力あるものの遺灰で悪さしようとするものは少なくないのよ。嘆かわしいかしら」
「でも、中に誰がいるのかぐらい聞いてもらっても……あ、ちょうどいいところに」
確かめていないのが霊廟だけとはいえ、簡単に入れる場所でもない。
フェリスがいる可能性もそれだけ低くなるが、ヴィルヘルムに託されてきた以上、半端な仕事で帰りたくはない。
そう思っていたところ、エミリアがビシッと霊廟の入口を指差す。すると、確かに彼女の言う通り、ちょうど霊廟の中から人影が出てきたところだった。
すらりとした、濃紺の燕尾服のような装いをした人物だ。背中を向けたその所作の美しさから、霊廟に対する敬意と労わり、それらを強く感じる。
王家の霊廟に出入りしていたのだから、霊園や霊廟の管理者か、それに類するものだろうかと、スバルも急ぎ足で駆け出したエミリアの背中に続く。
「あの、ちょっといいかしら? 今、あなたが出てきた建物の中なんだけど、私たちが探している子がいなかったか聞かせてほしくて」
駆け寄ったエミリアが、物怖じせずにその人物に声をかける。その大胆さに相手の方の警戒を招きそうなものだが、一応、霊園の入口には衛士が立っていて、正門を通り抜ける際に身分確認はされているから、園内に不審者はいない想定だ。
ぜひとも、相手にもその意図が伝わってほしいと、そうスバルは思い――、
「――エミリア様?」
と、驚きを交えた声で言って、その燕尾服の人物が振り返り、エミリアを見つめる。その相手を正面から見て、「え」と驚いたエミリアの足が止まった。
そしてスバルたちもまた、立ち止まったエミリア越しに、その相手を目撃する。
そこにいたのは――、
「……なんだ、変なとこ見られちゃったネ。ヴィル爺でしょ?」
そう言って、呆れとも自嘲ともつかない微苦笑を浮かべたフェリス――その細身を、はっきり男性用の燕尾服に包んだ彼が、スバルたちに肩をすくめていた。
「――――」
思わず、霊廟の入口を背にしたフェリスの姿に、スバルは絶句する。
これまでにも、フェリスがこうした格好――それこそ、近衛騎士の制服に袖を通し、男装をしていたことは、確かにあった。しかし、あれには騎士団の正式な制服という名目があり、それさえ彼らしい魅せ方の工夫が入っていたと思う。
だが、目の前の燕尾服姿の彼に、そうした工夫や細工は一切ない。
それが、意味するところは――、
「……フェリス、何が、あったんだ?」
「そんなこの世の終わりみたいな顔と声しないでよ。スバルくんたちには大したことないことだって。ただ――」
眉尻を下げた微苦笑を浮かべたまま、フェリスが小首を傾げかけ――やめる。まるでそれは、そうした仕草との決別を意味するようにも見えて。
そんな印象を裏切らないままに、フェリスは続けた。
それは――、
「――ただ、クルシュ様の騎士を罷免されちゃっただけ。だから、フェリちゃんはもうおしまいにして、フェリックス・アーガイルに戻ったんだよ」




