第十章幕間 『――どうして?』
――その庭園で未開花の花の蕾を見つけたとき、思わず足を止めていた。
色とりどりに、様々な花が咲き乱れる庭園だ。
生憎、花の名前にも種類にも詳しくはないが、それらが国内の各地から集められた種を芽吹かせ、蕾を開いた貴重な花々であることは耳にしている。
これほど大きく、見栄えのする花園だ。管理を任された庭師もさぞや腕の振るい甲斐があったことだろう。その庭園の出来栄えは、まさにその証拠だった。
正直、庭園に足を運んだ当初、その彩り豊かな花園への期待はあまりなかった。
元々花を愛でる感性に乏しく、実家の庭園にもさして関心を抱いてこなかった身だ。理解ある父に甘えて、この地――王都ルグニカの王城に入れてもらえても、さすがに責任ある大人たちの話し合いにまざれると思うほど、自分を高く見積もってはいない。
故に仕方なく、父たちの用事が済むまでの間、時間を潰すつもりで庭園に足を運び、思いがけず、その蕾に見惚れたのだ。
「――――」
琥珀色の視線の先にあるのは、頭を垂れた大きな蕾だ。
うっすらと赤みを帯びた花弁を閉じ、いまだ花開いていないそれに惹かれたのは、未熟な身に行き場のないもどかしさを抱えた自分と、その蕾を重ねたから――なんて考えは、少しばかり詩的で、自分に酔いすぎだろうかと思う。
ただ、大輪の花を咲かせ、すでに自分の魅力を隅々まで知ったとばかりに咲き誇る花々の中、その本領をいまだ未開花としていた蕾に共感したのは事実。
――はたして、自分には何ができて、何が望まれているのだろうか。
「私は……」
生まれに恵まれ、家柄に恵まれ、才能に恵まれたという自負はある。
その、生まれや家柄、才能を与えられたものとして、それに見合った成果で以て応えなくてはならないと、そうした使命感らしきものもあった。
そしてその自負と使命感が、自分の望みと致命的に相性が悪いという自覚も。
「――――」
言うなれば自分は、この花園に植えられた花の種たちの中で、唯一、その咲き方に疑問を抱き、蕾のままであり続ける未熟な種子だ。
他の花々は疑問なく、躊躇なく、自らの領分を弁え、理解し、それを全うしている。
にも拘らず、自分は――、
「……いったい、どのような花を咲かせるんだ?」
蕾にそう問いかけて、答えのあるわけのない沈黙に、息を詰める。香る甘い花の匂いに包まれながら、仲間意識のあった蕾とすらわかり合えない。
何故なら、不届きなこの身が望むのは、美しく鮮やかな大輪の花を咲かせることではなく、その花々を雨風から守り抜く、太くたくましい大樹となることであったから。
そう、叶わぬ望みを抱く自分が空しく滑稽な存在に思え――、
「ふごっ!?」
――瞬間、ひどく不細工な悲鳴と共に、蕾の揺れる花園に何かが上から降ってきた。
「――っ」
突然のことに目を見張り、その場に足を縫い付けられたように動けなくなる。
白く、思考の停止してしまった頭の中、遅れて鳴り響くのは危険を報せる警鐘と、そうした事態に見舞われた際の心構えや手ほどきの数々。
しかし、それらをとっさに頭の奥から引っ張り出す前に、目の前の花壇にほとんど頭から落ちていた人物が跳ね起きて、
「ぶふっ! ばふぁ! ぺっぺっ! な、なんだ、土? 土か!?」
そう言って、美しい金色の髪を振り乱し、宝石のような赤い瞳を瞬かせながら、全身を盛大に土塗れにした少年が、花園から這う這うの体で這い出した。
それが――、
「おお、さすがは余……頭から石畳に落ちて一巻の終わりかと思いきや、窮地すらも持ち前の天運で跳ね除けるということか……」
――それが、最後の『獅子王』との、最初の思い出だった。
△▼△▼△▼△
「――ぁ」
掠れた息が漏れ、意識が覚醒する。
五感が起き始め、あらゆる情報が脳に次々と送り込まれてくる。――瞬間、最も強く心身に訴えかけてきたのは、逃れ難い猛烈な渇きだった。
「――――」
渇き、それは単なる喉の渇きだけではない。足りない。足りない。足りない。体中、ありとあらゆる場所で、水が足りない。潤いを欲し、湿潤に餓える。
空気の通り道となる鼻腔も喉も渇き、食事を取り込むための胃壁が渇き、瞬きをしても眼球が渇き、全身に血を流しているはずの管が渇き、不足を訴える魂が渇く。
渇き。渇きだ。渇きが、その生命を蝕んでいる。
「――ぁえ、あ」
口の中が渇いて、痺れた舌はまともな音を発さない。
この渇きを何とかしたくて、誰かを呼ぼうとした。声にならない。呼ぶよりも、自分から動いた方が早い。――違う、その発想すらない。溺れるものが、救助にきた相手にしがみついて溺れさせてしまうように、頭の中は渇いてまっさらだった。
渇き切った体、その頭頂部から足先までに訴えかけ、体中にあるわずかな力を掻き集めて、何とかその場に起き上がろうとする。起き上がる。立ち上がろうとする。立ち上がる。歩き出そうとする。歩き出す。探そうとする。探す。
「――ぉ」
必死。必死だった。
渇きに支配された頭で、これが最後の機会だと自分を戒める。
もし足が止まれば、うっかり転んだら、何か一つでも掛け違ったら、もう同じことはできない。探せない。歩き出せない。立ち上がれない。起き上がれない。
この途方もない渇きの中に沈んで、二度と、二度と、二度と――、
「――――」
弱々しい体の全力で、重たい扉を何とか押し開け、外に出た。わずかに吹き抜ける風にすら負けそうになる我が身の渇きを呪いながら、視線を巡らせる。
濁り、見えづらい視界だ。狭い。片目が塞がっているせいだとすぐに気付く。だが、視界の確保よりも先に、その風に運ばれ、微かな甘い香りが漂った。
それに誘われ、首を傾けて見つける。――黄色と桃色の花が活けられた、花瓶を。
「――っ」
考える、暇もなかった。倒れ込むように、花瓶に飛びつく。
そのまま毟るように、飾られた花を引き抜いて、両手に抱えた花瓶を傾けた。そして、花のために用意された水を、浴びるようにして飲む、飲む、飲む。
こぼれた水が口の端と頬を伝い、首筋を濡らし、黒い寝衣をも浸した。構わない。咳き込みながら花瓶を投げ捨て、陶器が割れる音が響く。
「えほっ、えほっ……」
手の甲で乱暴に口元を拭い、振り向く。廊下に、等間隔に置かれた花瓶。先ほどよりも力の戻った足で近寄り、花を捨て、水を呷る。花瓶を捨てる。また次の花瓶へ。
それを二度、三度と繰り返し、渇いた体に水を浴びせ、渇きから自分の存在を取り戻しながら、また次の花瓶に――、
「――いけません!」
鋭い呼び声と共に手首を掴まれ、振り返る。
手首を掴んでいたのは、凝然と目を見張り、こちらを引き止めた白髪の老執事――それが誰なのか、渇きの奥にある記憶を引っ張り出す前に、どろりと激情が溢れた。
「放しなさい!」
右腕を掴まれながら、空いた左手を振るい、相手の体を力一杯打つ。
文字通り、手は抜かなかった。骨を砕くか、肉を裂くつもりの一撃、しかしそれを老執事はこちらも反対の手で軽々といなし、双方無傷に収める。
体調、技量、経験と、あらゆる理由が横たわるのがわかる。――でも、止まらない。
「放せ! 放せぇ! 放して……!」
一言ごとに一打、腕を振るうごとに振るい方を思い出し、鋭さは増した。
しかし、風を切る指先がどれほど鋭かろうと、老執事には易々と防がれる。次第に、またじわじわと迫りくる渇きの悪寒が、足下から這い上がってくるようだった。
「お願いだから放して! 喉が、渇いた……渇いてる……渇いて、渇いて、渇いて渇いて渇いて、たまらないの……っ」
「落ち着かれてください。すぐに水をご用意します。それに、素足で歩かれてはなりません。手当てもしなければ」
「水……ほん、とうに? 水が、あるの……?」
「ございます。すぐにでも。ただその前に、手当てを」
必死に身をよじる勢いが、その老執事の訴えに少しずつ弱くなる。
渇きは、今もそこにある。目覚めた直後より、少しだけマシになった渇きが。その渇きを癒すのに、水があるなら、嬉しい。助かる。ありがたい。
「手当て……」
徐々に体の力が抜ける中、場違いなその言葉に、ふと視線を落とす。
見れば、老執事と自分の足下、廊下に敷かれた絨毯に転々と赤い痕跡が残っていた。それは廊下の途中で始まり、自分の足裏で終着する。――血だ。気付かなかったが、割れた花瓶の破片を踏んで、それで廊下を血塗れにしていたらしい。
踏みつけたのは破片だけでなく、花瓶から放り捨てた花々もだ。踏み躙られ、散らされた花弁が流れた血と混ざり、ひどく汚い斑模様を描き出している。
ひどく、汚い、斑模様を。――瞬間、禍々しい黒い斑の紋様が、脳裏を過った。
「――ぁ、ああ、ああああ!!」
細い喉が絶叫を上げ、身悶えした。
いったん落ち着きかけたので気が緩んだのだろう。その反応に老執事の拘束が外れ、自由になった腕を振り回し、濡れた寝衣を破いて、自分の体を見る。
巻かれた包帯と、やつれ、色味を失った青白い肌――その包帯に隠された部分、全身をおぞましい黒い紋様が覆い、この体を毒々しく呪っている。
「いやぁ、フェリス! フェリス!! どこ!? どこですか!?」
自分の体そのものが、どうしようもなく穢れたモノに思えて、叫びが漏れる。
包帯を引き剥がして、その下を見たくない。包帯の下に隠れた醜い黒紋様、一秒でも長くそれをこの身に宿していたくない。
見たくない。
触れたくない。
接していたくない。
汚されたくない。
いっそ、死にた――、
「――クルシュ様!」
その、醜くおぞましいはずの体を、後ろから細い腕に抱き留められた。
羽交い絞めとは違った。そういった、体術的な動きで止めようとしてきたのではない。ただ力ずくで、衝動的に、背中から腕を回して抱きしめられただけだ。
振りほどこうと思えば、できた。でも、そんな気は欠片だって浮かばなくて。
ただ、淡く湧き上がる青い光に、その体をぼんやりと包まれ、委ねていた。
「大丈夫です、私はここにいます。クルシュ様のお傍に、ちゃんといますから……」
「ふぇり、す……」
「はい、はいっ。そうです。フェリスです」
きゅっと、体に回された腕の力が強くなり、しかし、痛みや恐れは感じない。
気付いたときにはその場に崩れ落ちて、床の上にぺたりと座り込んでいた。当然、自分を抱きしめる相手――フェリスも、一緒に廊下にへたり込んでいる。
ちらと首を傾ければ、息がかかるほどすぐ近くに、愛らしい彼の顔があった。ふるふると、丸い瞳は涙に揺れて、懸命に表情を崩すまいとする様子が、健気で愛おしい。
自然と、体中に漲っていた、あらゆるものへの拒絶感が、遠ざかる。
「……でも、怖い。怖いままなんです。私の、体は、あの黒い斑模様で、今も」
「クルシュ様、そのことでしたらすでに――」
「――ヴィル爺」
と、何かを言いかけた老執事を、フェリスがそう呼んで遮った。そのフェリスの視線を受け、ヴィルヘルムは――そう、ヴィルヘルム。ヴィルヘルムだ。老執事はヴィルヘルムで、『剣鬼』で、卓越した剣士で、頼もしい人で。
そのヴィルヘルムを正面に、フェリスを背後に、挟まれながら自分はいて。
「私、は……」
「聞いてください、クルシュ様。お体のことは心配ありません。――失礼します」
「――ぁ」
ガクガクと震える体を抱きしめ、視線のおぼつかないこちらを宥めながら、フェリスの手がゆっくりと、巻かれている包帯を解きにかかる。その優しくも恐ろしい手つきに息を呑み、ゆるゆると包帯が解かれていくのを眺めているしかできない。
首から胸元にかけて、自分の手で引き裂いてしまい、ほつれた寝衣の隙間から覗く肌が露わになり――そこに、恐れていた紋様がなくて、目を見張った。
「え……」
「ここだけじゃありません。腕も、肩も、足も……異変は取り除かれたんです」
言いながら、フェリスに肩口の包帯もほどかれ、呆然と腕を持ち上げる。そこにあるのは渇いて荒れた印象はあれど、あの黒い斑の紋様の痕跡が消えた腕。
そうしてようやく気付く。――あの、身を焼くような、体中に煮え滾った熱湯を流し込まれるような痛苦が、いつしか途絶えていたことに。
渇きは、あった。今もまだ、その残滓はある。
しかしあれは、あの痛苦が取り除かれた体が求める、命を渇望する渇きだったのだ。
「フェリス……あなたが、あの呪いを? 私の体から……」
「――――」
我が身を顧みる猶予が心に生まれ、ようようそこに思い至る。
あの消えない痛苦に、毎朝毎夜、毎日蝕まれ続ける自分に寄り添い、フェリスは健気に懸命に、それを癒そうと力を尽くしてくれていた。
その望みが実を結び、彼はあの苦しみの牢獄から、自分を助け出してくれ――、
「――いいえ、違います。私は、何もできませんでした」
しかし、その問いかけと期待は、他ならぬフェリス本人に否定された。
首を横に振り、その黄色い瞳を失望――自分への、深い失望と落胆に染めた彼は、息を呑むこちらの、紋様の消えた腕にそっと触れながら、幾度か唇を震わせる。
口にすべきことを躊躇い、決意し、また躊躇い、それを何度も繰り返し、ようやく踏ん切りをつけて、フェリスはそれを口にする。
それは――、
「クルシュ様のお体を癒すために、『神龍教会』の協力を仰いだんです」
「……え」
「教会の、『聖女』を名乗る子が力を貸してくれました。私には、クルシュ様をお救いすることができなかった。……本当に、ごめんなさい」
揺れる瞳一杯に涙を浮かべ、そう声を震わせるフェリスに、声を失った。
ゆっくりと、彼が口にした言葉の意味が、痛みから解き放たれ、強烈な渇きからも解放されつつある脳が、理解していく。
『神龍教会』――それは、ルグニカ王国を古くから守る『神龍』、その存在と恩寵を深く深く信仰し、王国民の安寧と平穏の維持に尽力する団体だ。
その活動が影響力を持ちすぎることを避けるため、国政に関わることを禁じているという『神龍教会』の信義は、立派で納得できるものと頷ける反面、それを気安く認めることはできない間柄――何故なら、『神龍教会』が何よりも尊んでいる存在と、自分たちの在り方は徹底的に相容れないから。
「――龍を」
『神龍教会』は、王国と『神龍』とが結んだ盟約を奉じ、感謝している。――それはすなわち、盟約の維持こそが王国繁栄の何よりの優先事項であり、あまりに無慈悲な病によって失われた王族の方々を、盟約のための歯車とみなした王国の考え方と同じ。
――あの、フーリエ・ルグニカの死を、ただの事象として消化した価値観と。
「――ッ」
ぞわぞわと、湧き上がってくる形のない感情に胸を突かれ、吐き気を覚える。
頭の中に浮かび上がった思考、映像、感慨、その全部が五感をめちゃくちゃに刺激し、光が聴覚を、匂いが視覚を、痛みが味覚を、声が触覚を、味が嗅覚を、本来なら接続しないものたちが寄ってたかって滅多打ちにしてくる。
――どうして、その名前が出てきたのか。
――どうして、その笑顔が浮かんできたのか。
――どうして、その彼の声が聞こえてきたのか。
――どうして、その思い出の顔が感じられたのか。
――どうして、その死を嘆いた血と涙の味を覚えているのか。
――どうして、フーリエ・ルグニカを、クルシュ・カルステンは思い出せたのか。
「――ぁ」
蘇ってくる感覚が、ある。
喪失感と使命感が、愛おしさと悲しみが、怒りと喜びが、温もりと冷たさが。――永遠に遠ざかったあの人の、良い思い出と嫌な思い入れが、混ざり合い、溶け合って。
ただ、致命的に、わかる、ことが、ある。
「――王選」
震えた唇からこぼれた音、それにフェリスが大きく肩を震わせ、顔を見られないヴィルヘルムもまた、身を硬くしたのがわかった。
自分たちは、『神龍教会』と相容れない。決して、相容れない。
歩調を合わせられず、共に同じものを見ることができないのだと、他ならぬ自分たちが選び、決めて、そうすると宣言した。
にも拘らず、絶対に力を借りてはならない相手に、救われたというなら。
「フェリス――」
「――はい」
名前を呼びかけたとき、フェリスの声に震えはなかった。
短く、頷いた彼の視線は真っ直ぐ、表情を強張らせながらも、目を逸らさない。何を言われても、それを覚悟の上で選んだのだと、そう黄色い眼が言っている。
「――――」
言わなくては。
理由はわかっているのだ。何故、彼がその選択をしなければならなかったのか。
それが他ならぬ、自分を救うためだったと、わかっているのだ。
彼が毎朝毎夜、毎日蝕まれる自分の傍で、どれだけ苦悩の日々を過ごしたことか。
救いたいものを救えずに、その癒しの手の無力さをどれほど痛感してきたか、自分はそれを間近で、最も近くで、目にしてきたのだから。
だから、言わなくては。
『心配をかけてごめんなさい。あなたの気持ちはわかっています』
「――――」
だから、言わなくては。
『辛い決断をさせてしまいました。だけど、その責任は私にあります』
「――――」
だから、言わなくては。
『嘆かないでください。あなたのおかげで、私はこうしていられるのですから』
「――――」
言わなくては。
言わなくては。言わなくては。言わなくては。言わなくては。言わなくては。言わなくては言わなくては言わなくては言わなくては言わなくては言わなくては言わなくては言わなくては言わなくては言え言え言え言え言え言え言え言え言え言え言え――、
「――どうして?」
転び出るように、こぼれた。それは。
言わなくてはと、そう思った言葉とは、温もりも肌触りも、まるで違うそれで。
「わかっていた、はずじゃありませんか」
やめて、今すぐやめて。口を閉じて、目をつぶって、意識を塗り潰して。
目の前のものも、起きた出来事も、された選択も、全部見ないで忘れて背いて。
「フェリス、あなただけは、私と同じだったはずなのに」
言ってはいけない。聞かせてはいけない。知られてはいけない。
だって、彼は救おうとしたのだから。だって、彼は祈りを捧げたのだから。だって、彼は愛しいものの苦しみを、取り除こうと望んだだけなのだから。
だから、言ってはいけない。
「――どうして?」
いけない。
「どうして、フーリエ殿下への誓いを、裏切ったんですか?」
――あの人を裏切るくらいなら、いっそ死んでしまいたかったなんて。




