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第八章7 『トッド・ファング』
――トッド・ファングはヴォラキア帝国の軍人であり、階級は上等兵。
同僚であるジャマル・オーレリーの妹、カチュア・オーレリーの婚約者で、現在は帝国の東部にあるバドハイム密林への派兵を切っ掛けに、城郭都市グァラルでの反乱軍との交戦を経て、『精霊喰らい』アラキア一将の従兵の役職に就いた。
一斉蜂起した叛徒により始まった、帝都ルプガナの包囲攻防戦。
その攻防戦にも一兵卒として参戦し、帝都の民――とりわけ、婚約者であるカチュアを守るために奮戦し、自らの武器を振るって勇敢に叛徒と戦った。
その正体は、ヴォラキア帝国で唾棄すべき存在として扱われる『人狼』であり、歴史ある差別と迫害に晒され、己の生き方を定めてきた、他者と相容れぬ存在。
それこそが、トッド・ファングという帝国の人狼である。
――それ以上、お前さんに教えてやるつもりはないよ。




