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第七章41 『茶飲み話』



「――作戦会議!」


 水を打ったように静まり返る室内、スバルが短い手を挙げてそう提案する。

 その言葉に否やの声はない。全員、話し合いの必要性を感じている。

 議題はもちろん、『紅瑠璃城への出頭』の件だ。


「手紙を書いたアベルと、昨日城にいった俺たちが必須って話だが……」


 使者として訪れたタンザ、彼女が残したヨルナの要求を反芻するスバルは、袖と裾を絞った自分の服を見下ろし、眉間に皺を寄せてしかめっ面を作った。


 直接、アベルを城に向かわせるリスクはこの際呑み込むとして、最大の懸案事項は『昨日の使者の同行』という条件だ。

 果たして、縮んだスバルとアル、ミディアムの三人を連れて向かって、ヨルナのお眼鏡に適うだろうか。最悪、悪ふざけとみなされる可能性も十分あった。

 あるいはヨルナにこちらの事情を全て打ち明け、彼女の心に誠実さを以て真摯に訴えかけるという選択肢も存在はするのだが――、


「相手の出方がわからぬ状況で、手札を見せるなど正気の沙汰ではない」


「だよな……俺も、昨日のやり取りを見る限り、ヨルナならきっと話を聞いてくれるはずだなんて言えない……」


 手札の全開放を拒否するアベルに、この場はスバルも同意見だ。

 昨日は明言を避けたが、スバルがヨルナに抱いた印象を言語化するなら、『悪女』という単語を選ぶのが的確だろう。遊女めいた言葉遣いや振る舞いは、男を掌で弄ぶ技量に優れた艶女のそれとスバルには映った。

 そこに魔都の支配者としての地位と、『九神将』の称号に与るだけの力量が備わっているのだから、ヨルナの危険度は語るまでもない。


 協力者候補として、最初に口説き落とす『九神将』と目しておいてなんだが、アベルの警戒する通り、容易にこちらの事情は明かせない類の相手だった。


「仮にこっちの事情を全ブッパして、兄弟のことで突っ込まれたらどうしようもねぇしな。女装などと、わっちに嘘をついたでありんすか、的なこと言われたらどうするよ」


「そんな難癖付けられると思いたくねぇけど、あれなら一応、ナツミ・シュバルツのロリ状態を装っておくか……?」


「マ、待ってくださイ。それはいよいヨ、私も混乱してしまいそうでス……」


 嘘を誤魔化すために嘘を塗り固める、というジレンマはよく聞く話だが、女装という嘘を誤魔化すため、『幼児化』してなお女装しなくてはならないという業を背負いかけるのはあまり前例がないのではなかろうか。

 アルの兜と違い、ウィッグのサイズ感は調整が利くので女装自体は可能だが、そこまで徹底する必要があるかは今後の話の流れ次第だろう。


「それで、どうするの? 火の刻の鐘って、あと三時間くらいだよ?」


「……紅瑠璃城にいくべき、なのは間違いないんだが」


 首を傾げたミディアムが、その腕にルイを抱きながら問いかけてくる。

 同じサイズ感になった二人、ルイもミディアムに合わせて首を傾けている中、スバルは自分の内の天秤と相談する羽目になった。


「まず、ヨルナの招待を受けないって選択肢はないよな?」


「まぁ、苦労して手紙も読んでもらったわけだしよ。でなきゃ、オレたちの昨日の頑張りも、こうやってあちこち縮んだ意味も消えちまう」


「むしロ、被害ばかりが残りますネ……」


 アルとタリッタの言葉に頷きつつ、スバルは撤退もない話ではないと考えてはいる。

 払った賭け金を回収するまで帰れない、という考え方はギャンブルで大敗する人間のお約束だ。場合によっては損切りの姿勢も大事にすべきだ。

 とはいえ、今回の『損切り』で失われるものはスバルたちの身長だった。


「これを重いと見るべきか、軽いと見るべきなのか……」


「歳喰ったならまだしも、若返ってっからな。これ、不老長寿の秘術っぽくねぇか?」


「ああ、確かに――」


 ある意味、『若返り』とは『死に戻り』のようなチャンスの増大を意味する。

 大人の知識と経験を有したまま子ども時代に戻れば、その肉体の成長に適切な修練を積むことも、かつては達成を諦めた目標への再挑戦も可能だろう。

 状況が状況なら、プラスに活かせる場面も見当たりそうなものだが――、


「――と、思うじゃろ? けど、そうそう簡単にもいかねえのよな、これ。そこまで使い勝手がいいもんじゃねえんじゃぜ?」


 瞬間、話し合いに割って入った第三者の声に、スバルの息が止まった。

 ――否、止まったのはスバルだけではない。室内にいた全員が、とっさに動くことができずに硬直し、その声の主の存在に凍り付く。

 しかし、当の人物は室内に高まる緊張もどこ吹く風で、


「勝手に茶ぁ入れて飲んどるけど、他にも飲みたい奴とかおる?」


 そう、湯気の立つ湯呑みを持ち上げ、気安い調子で尋ねてきた。


「――ッ!」


 直後、バネ仕掛けの人形のように、弾ける動きでタリッタが動いた。

 彼女は一瞬で抜き放った弓に矢をつがえ、その狙いを現れた人物――オルバルト・ダンクルケンへと向ける。

 照準は超至近距離、外す距離でも躱せる距離でもありえない。

 だが、オルバルトは「おいおい」と平然とした調子で肩をすくめて、


「やめとけやめとけ。ワシ、先の尖ったもん向けられんの好きじゃねえんじゃぜ。ただでさえ年寄りは便所いく回数が多いってのに、ビビらせてお漏らしさせる気かよ? 戦々恐々なんじゃぜ、なぁ?」


「ふざけたことヲ……! あなたはいったイ……」


「――オルバルト・ダンクルケン」


「――――」


 敵意を向けられ、しかし取り乱さない矮躯の老人にタリッタが顔を赤くする。が、その彼女の疑問に答える形で諌めたのは、オルバルトの名を呼んだ鬼面の男だ。

 ただ一人、ソファに座ったまま身じろぎもしなかったアベル、その鬼の面を被った男と視線を交わし、オルバルトが太い眉で隠れる目を細める。


「まあよ、ワシが有名人なのは昨日も確認したからそんな驚かんのじゃけど、なかなか印象に残る顔つきじゃな、お前さんも。それ、どこの土産物なんじゃ?」


「たわけた言葉を弄するな、老木。貴様、ここへ何しに訪れた?」


「最近の若ぇのは年寄りの無駄話に付き合ってくれねえから寂しいんじゃぜ。里の連中も日に日に聞き流すのが上手くなりやがってよぉ……かかかっか!」


 老齢の寂しい事情を語りながら、オルバルトが大口を開けて快活に笑った。

 そのアベルとオルバルトの対話に、傍観するスバルたちの困惑も緩やかに溶ける。ただし、完全に警戒がほどけることなどありえないが。


「でも、お爺ちゃんどうやって入ってきたの? あたしたちだって、何にも見てなかったわけじゃないのに……」


「おお、ちっちぇえが昨日の踊り子みてえな嬢ちゃんかよ。お爺ちゃんが答えてやっと、あれじゃぜ。あの、鹿人の娘を通したじゃろ? で、一緒に入ってきたわけよ」


「一緒に? タンザちゃんと?」


「かかかっか! どうやって入ってきたかは秘密じゃぜ。シノビの術技はワシの商売道具みてえなもんじゃからよ」


 ミディアムの素朴な問いかけを、オルバルトは煙に巻くように笑い飛ばす。

 それがどこまで本気なのか、いずれにせよ彼自身の口から『シノビ』の単語が語られ、自分の素性を隠そうというつもりはないらしい。

 ならば、こうして単身でこちらの陣営へ乗り込んできた真意も、下手に探るよりも直接問い質した方が早い。


「それで……」


「うん?」


「それで、本当にあんたは何をしにここにきたんだ?」


 ちらと、オルバルトの視線が来訪の目的を尋ねるスバルの方へ向いた。そのまま、老人はしばらく考え込むように眉間に皺を寄せると、


「あ、お前さん、あれか。昨日の、赤い服着た娘っ子の方か。踊り子みてぇな娘っ子と隻腕は間違えようがなかったから、めちゃめちゃ悩んじまったんじゃぜ」


 そう、スバルの正体を掴むのに手こずったのだと告白した。

 それを聞いてスバルは目を丸くし、さりげなく位置取りを変えているアルが忍び笑いする。彼は覆面越しに、いつもよりこもった声で喉を鳴らすと、


「……さすが、兄弟。シノビの頭領にも正体バレてなかったとさ」


「おお、大したもん大したもん! あの化けっぷり、ワシの里の連中にも見習わしてやりてえわ。講師とかどうじゃ。歓迎するんじゃぜ」


「生憎と、ナツミ・シュバルツのスケジュールはかなりパンパンな状態なんだよ。……もしかしたら、時間作れなくもねぇけど」


「ほうほう、もしかしたらってのは?」


 女装への意外な食いつきに唇を湿らせ、スバルは喉の渇きを覚えながら目を細める。

 戯言をどこまで信じたものかはさて置いて、オルバルトと直接言葉を交わせる機会を十全に活かすのだ。差し当たっては、スバルたちを襲った異常事態。

 アベルの推測ならば、この現象の下手人は目の前の老体に他ならないのだ。


「俺たちがこうなった理由、それに心当たりがあるなら正直に……」


「ああ、それかよ。それならワシがやったんじゃぜ。面白ぇじゃろ、シノビの術技」


「――――」


 駆け引きなど抜きに、あっさりと自分の仕業と認めるオルバルト。

 彼の発言にその先の言葉を掻き消され、スバルは微かに息を呑んだ。そして、硬直するスバルを見ながら、老人はにんまりと悪辣に嗤い、


「うっかり殺すと、話も何にも聞けなくて面倒があとに残るじゃろ? だもんで、殺さないで絞る技なら色々あるんじゃぜ。――面白ぇじゃろ?」


 と、そう言い放ち、温かな茶を啜ったのだった。



                △▼△▼△▼△



 ――スバルとアル、そしてミディアムの三人を襲った『幼児化』。


『九神将』を知るアベルの証言から、下手人はオルバルトだろうとほぼ断定されていた。

 しかし、それを直接本人の口から肯定されるのは、また別種の驚きを伴う。ましてや相手がちっとも悪びれず、堂々としたものならなおさらだ。


「――――」


「おいおい、全員でおっかねえ目ぇするもんじゃ。年寄りはいたぶるんじゃなく、いたわるもんじゃって習ってねえんかよぅ」


 再び緊張の高まる室内、最初から弓を下ろしていないタリッタを含め、アルとミディアムの二人もじりじりと立ち位置を変えている。

 特にアルは入口の扉の前を塞ぎ、オルバルトの逃げ道を遮る覚悟だ。

 もっとも、縮んだその体では愛刀を自在に扱うこともできず、この神出鬼没のシノビの頭領をどこまで阻止できるか、高い期待は持てなかった。


「うー……っ」


「そっちの嬢ちゃん、ワシと無関係のちびっ子じゃよな? だったら、そんな目で見られると傷付くんじゃぜ。ジジイ特有の甘ったるい匂いとか好きじゃねえんか」


「戯言を弄するな、オルバルト。重ねて問うぞ。貴様、何用でここへきたのかと」


 唸るルイを懐柔しようとするオルバルト、その横顔にアベルが言葉を投げる。ちらと振り向くオルバルトに、アベルは鬼面越しでも伝わる鋭い覇気をぶつけ、


「この魔都の支配者、ヨルナ・ミシグレの考えは耳に入っていよう。あれはこのものたちを使者と認めた。手出しはさせぬと、そう明言したと」


「そ、そうだ! 手出し無用で、そのための昨日の勝負じゃありませんの! わたくしたちも命懸けでしたのよ! なのに、この仕打ちは話が違いますわ!」


「おいおい、興奮して混ざっちまっとるじゃろ、それ」


 アベルの攻め手に乗じ、スバルも昨日のヨルナの発言を再度主張する。オルバルトの言う通り、気持ちまで昨日に遡ってしまったが、それで事実は崩れない。

 ヨルナはスバルたちを使者と認め、タンザも誰にも手出しさせないと明言した。

 それを無下にするということは、ヨルナと敵対する意思表明に他ならない。


「無論、貴様らが魔都を滅ぼすつもりなら一顧だにせぬだろうがな」


「……言われてみれば」


 アベルの追加の一言に、スバルの熱くなった血の気が冷たく引いた。

 実際、オルバルトを擁する偽皇帝一行は、ヨルナたちとの交渉権をスバルたちへ譲った形だ。これを悪手と見て、即座にちゃぶ台をひっくり返す算段も彼らにはある。

 その場合、『九神将』でも色々な意味で一目置かれるヨルナと、真っ向から激突することは避けられないだろうが――、


「滅ぼすつもりで挑めば、滅びは免れん。当然、相応の被害は出ようが」


「……まぁ、あの狐娘の扱いは厄介じゃからよ。とはいえ、仮面の若僧にそこまで見透かされんのも面白くはねえんじゃぜ」


「仮面の、若僧……」


 指で顎を掻きながら、痛しかゆしといった素振りのオルバルト。彼の言葉の一部を耳に留め、スバルは視線の端でアベルを窺った。

 何ら態度に異変のないアベルだが、そもそもスバルはこのやり取りにいちいちかなりハラハラさせられている。――なにせ、オルバルトは『九神将』の一人だ。


 当然、アベルことヴィンセント・ヴォラキアとは幾度も面識があるはず。

 それが仮面で顔を隠しているとはいえ、喋り方も声色も変えていないアベルと言葉を交わせば、その正体に気付いても何もおかしくないはずだ。


「――――」


 しかし、堂々たる態度で応じるアベルには、そうした不安が一切見えない。

 オルバルトの方も、アベルの正体に勘付いた素振りは皆無だ。そうなると、スバルの方からそれを指摘することもできず、内心の怯えを隠して振る舞うしかない。

 どうあれ――、


「まだ、答えを聞けてないぜ、オルバルトさん」


「――。爺さん呼ばわりされるよか、大事にされてる気はするわな。それで娘っ子のふりしてたことは見逃してやるんじゃぜ」


「オルバルトさん!」


 痺れを切らし、答えをはぐらかす老人にスバルが視線を鋭くする。それを見て、オルバルトは「わかったわかった」と両手を上げ、


「正味、お前さんらの言う通りなんじゃぜ。狐娘からも閣下からも、手出しはすんなって言われとるんじゃわ」


「だったら……っ」


「ただほれ、ワシがお前さんらをつついたのって、昨日の勝負がつく前じゃろ? そしたらあれよ。戦ってる最中に付いた刀傷で死んでも文句言われねえんなら、戦ってる最中に入れた縮こまる術の文句も言われる筋合いねえじゃろ」


「き、詭弁だ……!」


「まあよ、実際詭弁じゃぜ? ――けど、覆せっかよ?」


 片眉を上げ、老獪に嗤うオルバルトにスバルは言葉に詰まった。

 オルバルトの言い分は詭弁と、そう彼自身も認めた通りだ。だが、一方で彼の言い分は正論でもあった。


 戦いの最中に負わされた傷が理由で命を落としたとしても、それが停戦交渉が成る以前の傷なら、停戦後の悲劇の責任を問うのは筋が通らない。

 もっとも、傷と『幼児化』では塩梅が大きく異なる印象を受けるが。


「じゃから、お前さんらを戻す戻さんっちゅう話と、狐娘の号令とは別の話とワシは考えとるわけじゃぜ。わかったかよ?」


「――――」


「かかかっか! そう渋い顔するもんじゃねえぜ。可愛い顔が台無し……その可愛い顔も化粧で作った紛いもんか! 一杯喰わされっちまったもんじゃわ」


 指先で器用に湯呑みを弄び、中身をこぼさないように曲芸めいた技を見せるオルバルト。彼の言葉、それ自体は簡単に攻略不可能な老練さに満たされている。

 ただ、剣呑さを増していくタリッタや、逃げ道を塞ごうとしているアルたちが奮戦したとして、このオルバルトを力ずくで従わせるビジョンは浮かばない。

 もしも、この老獪さを攻略できるとすればそれは――、


「大概にせよ、オルバルト」


 そう、みなぎる覇気で老獪を一刀両断しようとする鬼面の男だけだ。

 アベルは姿勢を変えぬまま、鋭さと冷たさを一層増した眼光でオルバルトを射抜き、湯呑みを弄ぶ手遊びを止めさせる。


「俺は貴様に、何用できたと聞いたはずだ。いったい、何度問えば答える気になる?」


「顔色の見えねえ若僧がいやがると、その眉間の皺が見たくなって仕方ねえ悪癖ってやつよ。勘弁してほしいんじゃぜ」


 片目をつむり、アベルの覇気にオルバルトが茶目っ気で応じる。それでも和らがない眼光に、老人は「余裕がねえ奴じゃなぁ」と頭を掻いて、


「狐娘はともかく、閣下にも手ぇ出すなって言われとるからよ、ワシがきたのはお前さんらをどうこうするためじゃねえわな。けど、どうせ敵になる連中なら、ちょっと弱らせといてもバチは当たらんじゃろ?」


「……そいつはオレたちを縮ませた理由になっても、わざわざ茶ぁ飲みにきた理由にはなってねぇんじゃねぇか」


「兜が合わなくなって、苦労してそうじゃぜ、お前さん。ともあれ、その読みも正しいんじゃわな。あ~、まぁ、ワシがきた理由はぶっちゃけ、お前さんらの話を聞きにきたってのが一番すんなりじゃろうよ」


「……話?」


 湯呑みを持たない方の手で耳をいじりながら、オルバルトが「そうじゃぜ」と疑問を反芻するスバルに頷く。

 そのまま、彼は耳をいじっていた指で窓の外を指差すと、


「昨日の城での啖呵、ありゃワシも痺れたもんじゃぜ。ただ、閣下相手にあれこれかまそうって奴は結構おるし、今んとこは全部失敗しとるわけよ。だのに、なんでまた危ねえ橋を渡んのかと、胸の内を聞いてみてえって話じゃわな」


「……それを聞いて、どうするんだよ」


「あ? そんなもん、聞いてから決めるに決まっとるじゃろ。で、嘘言えんように先に小細工しとくわけじゃぜ、かかかっか!」


 大口を開け、唾を飛ばして大笑するオルバルトにスバルは顔をしかめた。

 彼の姿勢、聞いた通りのそれを単に悪趣味と切り捨てるのは簡単だが、ただそれだけで話を終えていい相手でないことは明白だ。

 スバルたちを『幼児化』させたシノビの術技を解かせるためにも、あるいは彼もまた、アベルの帝位奪還のために協力させるべき『九神将』の一人であるのだから。

 むしろ――、


「……チャンス、か?」


 味方に付けるため、そもそも接触すら困難なのが『九神将』の立ち位置だ。

 だが現在、何の因果かカオスフレームには支配者のヨルナ以外にも、目の前のオルバルトと、偽皇帝に扮しているとおぼしきチシャが居合わせている。

 無論、率先して敵対するチシャの篭絡は不可能だとしても――、


「昨日のアベルの推論が正しければ、オルバルトさんは敵って確定したわけじゃない」


 すでに相手の駒とされている『九神将』と並べ、オルバルトには希望が残されているというのがアベルの見立てだった。現状、ヨルナとの交渉の手前にこぎつけた点も合わせ、アベルの判断は正しいと言わざるを得ない。

 オルバルトの立ち位置に関しても、彼の推測を信じるなら交渉の余地があるはずだ。

 ただし、ここでオルバルトを味方に付けるためには――、


「――――」


 ちらと、スバルは黙したままアベルの横顔を窺う。

 そこで堂々たる態度を取り続ける鬼面の男、アベルの正体を明かすこと。――それこそが、オルバルトを攻略する上で開示すべき絶対の情報だ。

 正直言って、これ以上にオルバルトに響くだけの情報の持ち合わせはない。


「――――」


 そのスバルの視線を横顔に受けながら、鬼面のアベルは身じろぎもしない。

 彼の横顔は面に隠され、その感情の一切を知ることができない。しかし、スバルが思い至ったことに、聡明な彼が考え及ばないはずもないだろう。


 ここで、オルバルト相手にどこまで胸襟を開けるか。

 それが焦点となるというのがスバルの思考なのだが、アベルが動かない以上、その考えは早計ということなのか。あるいは、彼も出方を見ているのか。


 いずれにせよ、オルバルトを味方に付けることができれば、スバルたちの『幼児化』問題や戦力不足、『九神将』の駒取り合戦についても光明が見える。

 ならば、ここは勝負すべき場面のようにも――、


「――面白ぇことに、人の面ってのはこれが案外お喋りなんじゃぜ?」


「え……?」


「目線、顔の強張り具合、ほんのちょっぴの筋肉の緊張……別に口が動かなくてもよ、色々と喋ってくれんのじゃぜ、実際」


 とんとんと、立てた二本の指で自分の目元を叩いて、オルバルトが言い放つ。彼の視線が見ているのはスバルで、息を呑むこちらに老人は頷く。


「例えば、踊り子っぽい嬢ちゃんは弓使いの嬢ちゃんを頼りにしとる。布巻いた若僧とちっちぇえのはお前さんじゃな。で、お前さんと弓使いは……仮面の若僧」


「――っ」


「それぞれ、視線の辿る先で大抵のことは見えんのよ。――弱ってるときなんか、ますますそれが顕著なもんじゃろ?」


 そう言って、ニッと白い歯を見せたオルバルトの言葉がスバルの脳を貫く。

 そして、オルバルトという好々爺にさえ見える人物の人間性、それを大きく見誤ったのだと、スバルはあまりにも遅れて理解した。


 オルバルトは、『幼児化』させたのは自分だと明言し、それはスバルたちに話を聞くためにしたことだとはっきり言った。

 ――決して、スバルたちと『交渉』するためだとは言わなかった。


「話を、しにきたんじゃ……」


「話を『しに』きたと、話を『聞きに』きたは似ててちょっと違ぇじゃろ? こうやってお喋りしてんのも嫌いじゃねえんじゃぜ? けども」


「――――」


「ほら、ワシもシノビの頭領じゃし、里の連中の代表ヅラして過ごしてるわけよ。だもんで……拷問もしてねえ相手の言葉なんぞ、危なっかしくて信じらんねえんじゃな」


 直前までの、話のわかる老人の風情は崩さないまま、オルバルトはシノビの――忍びの不文律に従った自身の考えを述べる。

 その殺伐とした酷薄さは、確かにスバルの知る『忍者』の世界のそれに類する。

 だが、あくまでフィクションとして楽しめた感覚と、こうして目の前でそれをひけらかされた感覚は大きく異なった。

 そして――、


「で、態度でけえし、自分は誰も頼ってねえしで仮面の若僧が大将じゃろ? それが何のつもりで、あの狐娘を口説きにきたのか聞かせてみるんじゃぜ」


「――。それが叶わなければ、如何にする?」


「そんときゃ、もっと別の手段を講じるだけじゃね? とはいえ、手出しすんなって縛られとるせいで、打てる手もそんなねえんじゃけどよ」


 肩をすくめたオルバルト、彼の視線と注目はアベルの方へ向いている。無論、シノビの頭領を務めるオルバルトが、他への注意を欠いているとは考えにくい。

 顔を向けていなくても、アルやタリッタへの注意は逸らしていないだろう。

 ただ、弓を向けているとはいえ、取り囲んでいるスバルたちの方も、オルバルトへ攻撃の意思を見せることが賢いとは言えない。


 ヨルナの号令の下、使者としてカオスフレームに迎えられた状態だ。

 それが、カオスフレームの中で騒ぎを起こしたあとも適用されるか、お行儀の悪い来客を彼女がどう扱うかは全くの未知数。

 つまり、この場はスバルたちにとってもオルバルトにとっても膠着状態なのだ。


 どちらも、危害を加える準備はあると宣言しながら睨み合うしかない。

 そんな、どっちつかずの極限状態――、


「……でも、そんな状態、逆にどこで用意できる?」


 置かれた状況を振り返り、スバルは改めて心に生まれた空白に問いかける。

 そして今一度、「これはチャンスではないのか」と思考が生まれた。


 偽皇帝とヨルナに縛られ、追加の敵対行動が取れないオルバルト。

 彼の心情がどちら寄りなのか確かめて、仮に敵寄りだったとしても手出しできないタイミング、そんな状況がここ以外のどこで用意できるだろうか。


「――――」


 じりじりと、時間が経過する。

 緊迫状態もそうだが、ヨルナから提示された火の刻の鐘が鳴る時間もある。

 時間は貴重だ。――浪費するほどに、命は削れていく。


 沈黙の中、弓を握るタリッタの指は震え、アルとミディアムも息を潜めている。奇跡的に喉を唸らせるだけのルイも、オルバルトの危険性は本能的に察しているのか。

 おそらく、彼女たちは動くことを選べない。選べるとしたらそれは――、


「――アベル」


「――――」


 静かに、スバルがアベルの名前を呼んだ。

 それを聞いた彼の意識が、鬼面越しにこちらを向くのがわかる。鬼の面に遮られて視線は窺えないが、注意はスバルに向けられた。

 その感情は見えない。――しかし、意図は察せられたと、そう感じたから。


「ヴィンセント・ヴォラキア皇帝だ」


「……ああん?」


 アベルの視線を受け、そう言い放ったスバルにオルバルトが眉を上げる。

 長く豊かな眉で隠れた目を剥いて、老人はスバルの言葉に怪訝にした。それは当然の反応だが、求めている反応には程遠い。

 だから、その求めた反応を引き出すために、より深くへ踏み込む。


「顔の見えない若僧の正体と、俺たちの目的が知りたいんだろ。なんで、ヨルナに会いにきたのか、その答えが……」


「おいおい、そいつはちょっと笑えねえんじゃぜ?」


「笑い話にするつもりもねぇよ。――アベル」


 一瞬言葉に詰まり、オルバルトの声色に微かな驚きが混じった。

 それをはっきりと見て取りながら、スバルは部屋の奥にいるアベルに声をかける。事ここに至り、アベルもスバルの言行に反論しようとはしない。

 ただ静かに、彼のたおやかな指が自分の顔に伸びた。そして――、


「――こいつは、どえれえことじゃぜ」


 呆気に取られた声を漏らすオルバルトの前で、隠された顔が晒される。

 目の当たりにし、顔を強張らせるオルバルトを見返すのは、黒髪の美丈夫――ヴィンセント・ヴォラキア皇帝に他ならなかった。


「閣下、じゃと? じゃが、そいつはおかしすぎんじゃろ。なら、ワシが一緒に――」


「老いた知恵を巡らせろ、オルバルト・ダンクルケン。貴様は答えを持っていよう。あとは引き出すだけだ」


「閣下の顔で、閣下らしいこと言いやがる。……じゃが、そうか」


 一度は驚嘆に呑まれ、しかし、老齢のシノビはすぐに落ち着きを取り戻した。

 顔を晒し、皇帝としての命令を下したアベル、彼の言葉通り、オルバルトの持ち得る情報で置かれた状況に説明がついたらしい。

 オルバルトは自分の顎に手をやりながら、


「なら、あれはチシャってことになんのかよ。まんまとやってくれる……しかし、そうなっとあれかよ。閣下らしくもなく、やられっ放しじゃね?」


「俺の腹の底を、貴様の眼が見透かせると?」


「おお、おっかねえおっかねえ」


 ひらひらと両手を振って、アベルの答えにオルバルトが渇いた喉を鳴らした。

 実質、オルバルトの言う通り、アベルの事情はやられっ放しのグロッキー状態で間違いないのだが、それを窺わせない圧倒的なハッタリだった。

 しかし、相好を崩したオルバルトの様子に、スバルの肩からも緊張が抜ける。


 オルバルトは事情を解した。

 アベルが皇帝の座を追われ、自分が同行しているヴィンセントが偽物の皇帝だと。


「あれこれと、ワシの中でもごちゃごちゃしてたことが腑に落ちたんじゃぜ。いや、なんで急に狐娘のとこに直接会いにきたんかと、不思議には思っとったのよな」


「それは……全部、こっちの動きの頭を押さえるためだったんだよ」


「ははぁ、頭のいい連中の考えにゃ年寄りついてけねえぜ、実際。若くて賢くて色男って欲張りすきじゃろ。お前さんもそう思わん? 思わんか。お前さんも若ぇもんな。あ、それはワシがやったせいじゃったわ! かかかっか!」


 呵々大笑し、オルバルトが笑えない発言で笑いを取ろうとする。

 その様子にスバルは頬を引きつらせ、長く息を吐きながら、ふとタリッタの方を見た。

 なおも、オルバルトに警戒の眼差しと弓を向けるシュドラクの戦士。彼女に戦闘態勢を解かせ、状況を整え直そうと。


「タリッタさん、もう弓下ろしていいよ。オルバルトさんは……」


「あ? いや、別に下ろさんくていいんじゃぜ? つか、敵じゃねえって確定しとらん奴の前で警戒解くとか、その嬢ちゃんには無理じゃろうもん」


「は?」


 警戒を解かせ、話をしようと持ち掛けかけたスバルを引き止めたのは、タリッタの弓で狙われるオルバルト張本人だった。

 老人はタリッタの警戒を当然のものとしつつ、そのスバルの理解し難い『当然』を否定しようともしない。――すなわち、自身の危険性は薄れていないと。

 しかし、それではまるで――、


「こっちの話を……」


「聞いたんじゃぜ? 聞いてから判断するって言ったじゃろ。で、したわけよ」


「――――」


 ぐっと喉を詰まらせるスバル、その前でオルバルトの態度は変わらない。

 ただ、静かな舌打ちの音がして、


「どちらへ出るかわからぬ札の一枚だったが、貴様はそう動くか」


「らしくねえぜ、閣下。いや、本気で手札がねえって状態だったのが致命的よな。……しかも、ここで引くのがワシってのが運がねえ。いっぺん、やってみたかったのよ」


「ほう、何をだ?」


 オルバルトの方針は固まり、シノビの頭領は座を追われた皇帝の言葉に笑う。

 嗤い、『悪辣翁』の肩書きに相応しく、


「老い先短ぇジジイの死に花に、いっぺん、皇帝を弑逆してみたかったんじゃぜ」


「――ッ」


 悪辣な願いが語られた瞬間、張り詰めた緊張のままに動きが生じる。

 この刹那、それぞれが与えられた『戦闘禁止』のルールを踏み躙り、タリッタもアルもミディアムも、全員がオルバルトの目的を挫くべく動いた。

 しかし――、


「昨日、種がわかんねえのがお前さんじゃぜ、隻腕の。けど、ちびっこくなるとあちこち思った通りに動かなくてしんどいじゃろ」


「か……っ」


「歳喰ってから覚えた技ってのは、若ぇときはうまく使えねえもんじゃぜ」


 そう言って、首をひねったオルバルトが両手を振る。

 その指先から血が散り、目を見開いたスバルの視界で惨劇が展開した。


 踏み込み、オルバルトを取り押さえんとしたアル、そしてミディアムの二人の首が抉られ、血が噴出する。小さな、子どもの体のどこにこれだけの血が流れていたのかと思いたくなるほど、噴水のように盛大に血が室内に飛び散った。


「ざ、ぁ……ッ」


「この分じゃと、頼みの綱は使えねえみてえじゃな。けど、種明かしの前にやっちまったのはあれじゃったぜ、失敗失敗」


 血の噴き出す傷口を押さえ、その場にアルが蹲る。ミディアムは白目を剥いて、そのまま後ろに倒れて動かなくなった。

 二人が負ったのが、取り返しのつかない致命傷なのは明白だ。

 そして、唯一、オルバルトに対して真っ向から対抗する準備のあったタリッタは――、


「――ぁ」


 何故、弓が放たれないのかと、そう思ったわけではない。

 だが、あるはずの攻撃が為されない疑念が、スバルの視線をそちらへ向けた。


 タリッタが、壁に縫い留められていた。

 女性としては長身のタリッタ、その細身を壁に預け、彼女の体が固定されている。固定の理由は、その双丘の中心に突き立った投擲具――手裏剣だ。

 何の冗談か、星形をしたその投擲具が、タリッタの胸を貫いて、背を貫通して壁に彼女を縫い留めている。心の臓を破壊され、即死だとわかった。


「――手出しを禁じる理屈も、貴様には及ばぬか」


 不意に、死が蔓延した一室に男の声が響いた。

 それを響かせたのは、恐ろしい勢いで死屍累々と化した部屋に立つアベルだ。席を立った男は、この死を築いたオルバルトを透徹した眼差しで見下ろす。

 その視線に、オルバルトは頬に跳ねた血を指で拭いながら、


「そうじゃな。ワシは死ぬ前にでけえ花火を打ち上げてえのよ。歴代最高って言われてる皇帝を弑逆して、それで処刑されんなら大満足ってもんじゃぜ」


「貴様の、その破滅的な嗜好は読めなんだ。俺の手落ちか」


「かかかっか! いやいや、ワシの老いたりの夢がバレてたら恥ずくてそれこそ生きてらんねえってやつじゃからよ」


 アルが動かなくなり、ミディアムとタリッタの息の根も止まった。

 その状況下で交わされる皇帝と臣下の会話は、スバルには別世界のモノのようだ。だが、別世界ではない。現実だ。現実で、圧倒的現実で。


 スバルが誤った選択の末に、辿り着いてしまった現実だった。


「閣下をやったら、その足でチシャんとこ戻るんじゃぜ。チシャの奴ならまぁ、ワシの死に方もうまぁくやってくれんじゃろうよ」


「ま――っ」


「おん? おお、お前さんがおったかよ」


 遅すぎる声を上げたスバルに、〆の雰囲気へ突入していたオルバルトが振り向く。

 老人は顔を強張らせたスバルの制止に首の骨を鳴らし、それから倒れているアルたちを順番に指差すと、


「あれじゃぜ。こいつらは仕掛けてきたから返り討ちじゃけど、お前さんは別に死ぬ必要ねえんじゃね? ワシ、言い逃れとかもする気ねえし、口封じの必要もねえんじゃし」


「ど、あ……」


「ああ、勢いで喋っちまったやつかよぅ。言うこと決まってから口開けろや、坊主。つっても、老い先短ぇジジイじゃからそんな待てねえんだけどよ?」


 淡々と、自分のペースで喋り続けるオルバルトにスバルの思考が白くなる。――否、思考は真っ赤に染まっている。それが怒りなのか、アルたちが流すことになった血の色なのか、スバル自身でも判然としない。

 しかし、だとしても、どうであれ、何しろ、決して、ここで――、


「――たわけめ」


 そう、侮蔑するように言い放ったのはアベルだ。

 彼の視線は今、スバルの後頭部に突き刺さっているのだろう。鋭い視線の圧を感じながら、スバルはその言葉の正しさをひしひしと痛感していた。


 今さらこうして、アベルを庇うように前に立っても意味なんてない。

 アルたちが倒れる前にこうして動けていれば、あるいは何か変えられたかもしれないが――、


「うー……!」


「おいおい、ワシの関係ねえ娘っ子までそれかよ。閣下のやり方って、女子供にゃ嫌われる類のもんじゃったじゃろうによ」


 額に手をやったオルバルト、彼の前にルイが立っていた。――否、ルイが立ったのはオルバルトの前ではなく、スバルの前だ。

 スバルがアベルを庇い、そしてルイがスバルを庇い、三人が縦に並んでいる。

 あまりにも、馬鹿げた肉の盾だった。


「てっきり、閣下は一人で死ぬもんじゃと思っとったんじゃぜ」


「――。誰も、貴様の目測の限りに収まるものではない」


「かかかっか!」


 この期に及んで口の減らないアベル、その応答にオルバルトが高々と嗤った。

 老いたシノビの目には、スバルの存在もルイの存在も映り込んではいない。だが、敵意を向けて前に立つものを見逃すほど、優しくもなかった。

 だから――、


「――俺は、あんたを許さない」


 悪辣に嗤い、己の野心を満たさんとするシノビの顔を眼に焼き付けて、ナツキ・スバルの幼い体は血を噴き、冷たく感じる血溜まりに沈むこととなった。

 そして――、



                △▼△▼△▼△



 血が流れ、熱い感覚が傷口から迸る。

 とめどなく溢れる熱いものは、しかし一瞬で自分の体から熱を奪っていく。

 そうして流れ出すものが、あっという間に自分を呑み込み、溺れさせ、見えなくして、そうしてそうして奥底まで沈め切った先に、先に――、


「――――」


 瞬間、失われた血液が自分の体の中を巡り、耳元でうるさく騒ぐ。

 極限まで聴覚が研ぎ澄まされ、静かな空間で自分の中を巡る血流の音を聞く感覚。それに全身を打たれながら、スバルは呼気を荒くした。

 荒くして、遠ざかる痛みと喪失感に視界を点滅させたまま、奥歯を噛みしめる。


 自分が、どこへ戻ったのか、それを確かめるべく――、



「勝手に茶ぁ入れて飲んどるけど、他にも飲みたい奴とかおる?」



 瞬間、忘れ難い悪辣な声が、ナツキ・スバルの新たな戦いの始まりを告げていた。



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― 新着の感想 ―
ちょっとサテラさん死に○りのインターバル狭すぎません!?
[一言] 最近の死に戻りは随分と死亡時から近いなぁ
[一言] スバルが油断した際に放つ一撃はフラグ説w そしてシビアに
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