ひとり(適当なタイトル)
なるべく読者の想像に委ねた小説を書きたい(そもそもお前の小説を読む奴なんていないだろう)
もし見てくれる人がいたら、夜遅く扉をノックして花束を手渡したい
超短編を書いたよ
いつになったら君は姿を現すんだろう。僕たちがこの橋の上で再開を誓い合ったのは十年前の今日のことだ。僕は今でも待っているよ。君も何か事情があってこれていないだけで、約束の時間に遅れるのを申し訳なく思っているんだろう?約束の十年も今、十二分過ぎてしまったけれど、僕は怒っていないからね。
朧月が高層ビルを包み込む夜12時12分。川を横断する巨大な橋に、男が一人立っていた。白髪の混じったパーマに、細い目。フェザー服を身にまとい、彼は暗黒の夜中に吹きゆく風を浴びている。車は彼の姿を一瞬照らし、その姿を確認させられる。
新たに七台ほどの車が過ぎ去ったとき、男の向かいの闇の中から足跡が聞こえ始めた。男は来たかと大いに目を見開き、あきらかに興奮している様子である。そして朧月が照らしたのは、ひとりの老婆だった。男は明らかに失望した様子で、「彼女はこんな年じゃない」と呟く。そして彼の失望は次第に憎悪へと姿を変え、遂にはすれ違おうとする老婆の襟をつかんだ。
「ふざけんな!紛らわしいんだよダボがぁッ」
男は真っ赤な面をしてこう叫んだ。そして、老婆は不可解そうな顔をしながら驚きのあまり腰を抜かしてしまった。あんまりの理不尽にあった老婆は、一目散に抜けた腰を引きずりながら闇夜に消えていった。
そして男は呟く。「嗚呼、早く来てくれ愛しい人よ...」
しかし結局それ以外の人間は通り過ぎることなく、晴れ晴れとした朝が来た。その橋の上に男は居ない。
時はたち、また暗黒の夜が来た。
そして暗黒の橋にて男は呟く
「約束の十年も、12分すぎてしまったか....けれど、怒ってないよ....」
日は落ち、昇り、暮れ、明け、気が付けばその橋には誰もいない、一廃墟と化していたその橋に今日も男はつっ立ってこう呟くのだ
「約束の十年まで12分」
まあ、なんにせよ男は死んでる。死んだ原因もねえ...男の性格上ねえ...