鬼崎鬼々3
アイドル対決が開催され、司会者は勝負ルールを説明する。
「さて勝負のルールを説明させていただきます。今回の勝負はシンプル!『歌とダンス』です!自分達が得意な曲で歌い、ダンスをする!採点はこのテレビを見ているあなた達です!キューアールコードを読み込んだスマホで採点できます!」
テレビに向かって喋る司会者は生き生きとしていた。
「さて最初に歌うのは『フルフルフルーツ』です!それではどうぞ!」
司会者がそう言うと、スタジオが暗くなった。
直後、天井に設置されたライトが『フルフルフルーツ』のアイドル達を照らす。
三人の少女はポーズを取った。
曲が流れると、三人のアイドルは踊り出す。
曲は可愛らしく、聞いていて楽しいものだった。
その曲に合わせて可愛らしくダンスし、可愛らしい声で歌う。
笑顔を忘れず、楽しく歌う。
まるで楽しく遊ぶ妖精のよう。
曲が終わると、スタジオにいた百人のファンたちが歓声を上げる。
「みんな~!ありがとう~!」
『フルフルフルーツ』のリーダー、ストロベリーは笑顔で手を振るう。
少し離れていたところにいた蓮は顎に手を当てて目を細める。
(なるほど。確かにうまい。これならトップアイドルにもなる。だけど……俺と鬼々なら)
蓮はチラリと隣にいる鬼々に視線を向ける。
「フフフ♪」
鬼々は……笑っていた。
化物すら逃げ出すような怖い顔で。
親友の凶悪な笑みを見て、蓮は背筋が凍るのを感じた。
(こりゃあ……本気で潰す気だな)
蓮がそう思った時、『フルフルフルーツ』を照らすライトの光が消えた。
そして今度は蓮と鬼々を照らす。
「行くよ、蓮♪」
「まったく……全力で歌ってやるよ、鬼々」
蓮と鬼々はポーズを取る。
曲が流れた直後、蓮と鬼々は激しく歌い、踊り始めた。
彼らの歌とダンスはスタジオにいる者達だけでなく、テレビを見ている多くの人達を魅了する。
私達のダンスを見ろ。私達の歌を聞け。
そんな強い感情が伝わってくる歌とダンス。
誰もが呼吸を忘れて見ていた。
やがて曲が終わると、スタジオは静まり返っていた。
そして十秒後、
「「「ワアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」」
大歓声が響き渡った。
「凄まじい歌とダンス!これがネットアイドル女王のキキちゃんとその親友のレンちゃんの実力!」
司会者は大興奮していた。
「それでは結果発表!テレビの皆様、採点をお願いします!」
司会者がそう言うと鬼々と蓮、そして『フルフルフルーツ』の頭上に数字が現れる。
「『フルフルフルーツ』は十二点。キキちゃんレンちゃんチームは八十八点!勝者、キキちゃんレンちゃんチーム!」
アイドル対決に勝利した蓮と鬼々はカメラに向かって、笑顔で手を振るう。
そして『フルフルフルーツ』のアイドル達は悔しそうに顔を歪める。
「いい勝負……という感じにはならなかったね♪『フルフルフルーツ』♪」
キャハ♪と笑って煽る鬼々に、蓮は心の中でう~わ」とドン引きした。
「まぁこれに懲りたらアイドルじゃない道を探して―――」
「うるさい」
「ん?」
『フルフルフルーツ』のリーダーであるストロベリーは、涙目になりながら鬼々に指を指す。
「絶対にアンタより人気になるんだから見てなさい!鬼ブスアイドル!」
その時、蓮はブチッとなにかが切れる音が聞こえた気がした。
音の発生源は鬼々だ。
(まずい!)
蓮が気付いた時にはもう遅かった。
「へぇ~キキちゃんがブスか~♪ふ~ん♪」
ニコニコと笑う鬼々だが、目がまったく笑っていない。
とてつもない圧を放つ彼女に、ストロベリーは一歩も引かなかった。
「なによ!ブスにブスって言ってなにが悪い!」
「え~♪キキちゃんよりブスの人に言われても困るな~♪」
「何度でも言うわ!アンタはブスよ!歌とダンスがすごいだけのブスよ!それに比べてアタシのほうが百倍かわいい!」
「百倍ブスの間違いじゃないかな♪」
「ならあんたは千倍ブス!」
怒気を放ちながら可愛らしい笑顔を浮かべる鬼々。
鋭い目つきで睨むストロベリー。
二人はゆっくりと近づく。
そして同時に細い指で互いの相手の鼻に突っ込み、鼻フックした。
「キャハ♪余計にブスになったね♪」
「そっちもすごいブスになったわよ!」
それから鬼々とストロベリーのキャットファイトが始まった。
慌てて蓮と他の『フルフルフルーツ』のアイドル達は止めに入る。
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「その後、アイドル界で伝説のアイドル喧嘩として語り継がれた」
「そういえばそんな番組があったわね。フフフ」
面白かったのか、百合はクスクスと笑った。
「それにしてもまさかあの伝説のネットアイドル女王が蓮さんの親友だったとは思わなかったわ」
「まぁ……驚くのも無理もないですよ」
「どうして親友になったの?」
「ん~まぁお互い気を遣わずに話せる唯一の存在だったんですよ。妹や両親、他の仲間に話せないことも鬼々だけなら話せました。鬼々も他の奴らに言えないことを俺には話してくれました」
「なるほどね~」
「アイツはよく愚痴ってましたよ。どうして正式なアイドルになれないんだぁ~って。魔法少女にならなければ……本当の意味でトップアイドルになれたのに」
前髪で隠れていた目を細める蓮。
彼はフゥと息を吐いた後、言葉を続けた。
「次は姉的な存在だった人を話そう」




