鬼崎鬼々2
アイドル対決が開催されるテレビスタジオにやってきた蓮と鬼々。
二人は可愛らしい衣装を着ており、カメラに向かって手を振っていた。
〈マジックアイテム〉の力で銀髪美少女化している蓮は、恥ずかしそうに顔を赤く染めている。
「ちょっと、蓮。恥ずかしがらないで♪いつも女になって戦っているでしょ?」
「戦う時はいいけど、テレビに映ってアイドルをやるのは話が別だ!」
小さな声で喋る蓮と鬼々。
「というかこの衣装、露出が多くないか!?しかもスカートが短いし!」
蓮と鬼々が着ているのは紫と銀色のアイドル衣装。
可愛らしいフリルがついており、パンツが見えそうで見えない状態。
「対戦相手の『フルフルフルーツ』は可愛さで勝負してくる♪だ・か・ら……キキちゃん達は可愛さとエロさで勝負だよ♪」
「エロはいらないだろう!しかもあんな恥ずかしい下着を履かせられるし!」
「見られてもいいように、最高にエロいやつにしたからね♪」
「だからエロはいらないだろう!?」
「大丈夫、キキちゃんも履いているよ♪」
「そんな情報はいらないから!!」
ハァと深いため息を吐いた蓮はチラリと隣に視線を向ける。
視線の先にいたのは、可愛らしい白い衣装を着た三人組の人間の少女。
全員が可愛く、美少女と言っていい。
(『フルフルフルーツ』。今、大人気アイドルグループでテレビにも多く出ている。歌やダンスも魅力的で、多くのファンがいる。なるほど……鬼々が潰したい相手だ)
蓮は親友である鬼崎鬼々のことをよく理解している。
鬼々は誰よりも承認欲求が強い。
多くの人に見てもらいたい。
多くの人に認めてもらいたい。
多くの人に可愛いと言ってほしい。
そのために鬼々は魔法少女しながら、歌やダンスを頑張っている。
メイクや可愛らしい仕草の勉強もした。
そしてトップのネットアイドルに君臨し、他のアイドル達を叩き潰してきたのだ。
自分が一番。自分が最高のアイドルと証明し続けてきている。
まさに……承認欲求の怪物。
(そんな鬼々が徹底的に潰したいということは、『フルフルフルーツ』はそれほどまでに強敵ということ)
今まで鬼々はネットアイドルをソロ活動してきた。
そんな彼女が蓮と一緒にアイドル対決したいと言ったのだ。
ということは『フルフルフルーツ』はトップアイドルになる可能性があるということ。
(しょうがないな。全力で手伝ってやるか)
蓮はまたため息を吐いたその時、司会者らしき男が現れる。
「さぁ始まりました!289回アイドル対決!司会者はこの私、田中がやらせていただきます!」
マイクに向かって、元気な声で喋る男—――田中。
彼は笑いながら、言葉を続ける。
「今日のアイドル対決するのはこの二チーム!多くの男性ファンや子供達に人気の『フルフルフルーツ』と、老若男女問わず魅了したネットアイドル女王のキキちゃんとその親友のレンちゃんだ!」
田中の言葉を聞いて、スタジオに特別に集められた百人以上のアイドルファンたちが雄叫びを上げる。
彼らの雄叫びが僅かに床を揺らす。
「さて、それぞれのチームの今の気持ちを聞いてみましょう。まずは『フルフルフルーツ』のリーダー、ストロベリーちゃん!」
『フルフルフルーツ』のリーダーらしきアイドル少女—――ストロベリーは可愛らしい笑顔を浮かべる。
「はい!すごく楽しみにしてました!頑張ります!」
「元気でいいコメントだ!さて次はキキちゃんに聞いてみましょう!」
司会者はマイクを鬼々に向ける。
するとストロベリーよりも可愛らしい笑顔を浮かべて、ウィンクする。
「みんな~♪今日はキキちゃんとレンちゃんの歌とダンスでメロメロにしてあげる♪だよね、レンちゃん?」
「え!?」
目を大きく見開く蓮に『フルフルフルーツ』のアイドル達の視線と、無数のカメラ、百人以上のアイドルファンたちの目が向けられる。
(コメントを聞かれるなんて聞いてない!どうしよう。なんて答えれば!)
心の中で慌てながら、コメントを考える蓮。
(そうだ!前に読んだアイドル系ラブコメライトノベルに登場していたライバルキャラクターの台詞をマネすれば!)
蓮は不敵に笑い、人差し指を『フルフルフルーツ』に向ける。
「俺達の歌とダンスで教えてやるよ。お前達が俺たちより格下だということを」
蓮がそう言うと、スタジオが静まり返った。
(あれ?これって喧嘩を売ってない?『フルフルフルーツ』をバカにしてない?)
蓮が気が付いた時にはもう遅かった。
アイドルファンたちは「ワアアアァァァァァァァァ!」と叫び声を上げ、『フルフルフルーツ』のアイドル達は鋭い目つきで蓮を睨む。
「な~んと!堂々と喧嘩を売ったあぁぁぁぁぁぁぁぁ!これは今までのアイドル対決の中で熱い戦いになるのは間違いなしです!」
司会者は興奮気味に叫ぶ。
大量の汗を顔から流す蓮は「やっちまったあああああああ!」と心の中で頭を抱える。
「流石、レンちゃん!それでこそキキちゃんの親友だよ!」
満面の笑顔を浮かべる鬼々は、蓮を抱き締めた。
「さぁ後悔させよ♪キキちゃん達と戦うことを♪」
鬼々の言葉を聞いて、『フルフルフルーツ』のアイドル達は炎の如き怒気を放った。
蓮は乾いた笑みを浮かべる。
(お腹……痛くなってきた)




