鬼崎鬼々1
とあるテレビスタジオで、二人の少女がダンスをしながら歌っていた。
その二人の少女はフリルがたくさんついた可愛らしい服を着ており、まるでアイドルのよう。
否、アイドルである。
一人は額から鋭い角を生やした鬼人族の少女—――鬼崎鬼々。
そしてもう一人は長い銀色の髪を伸ばし、銀色の瞳を持つ人間の少女。
(なんで俺がこんなことをしてるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!)
歌い、そしてダンスをしながら銀髪の少女—――姫神蓮は心の中で叫ぶ。
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三日前。
村のカフェで蓮はある少女とお茶を飲んでいた。
「で?わざわざ呼び出してどうした、鬼々?」
蓮が問い掛けたのは、額から鋭い角を生やした鬼人族の少女—――鬼崎鬼々。
彼女はカフェオレを飲みながら、可愛らしい笑顔を浮かべる。
「その前に蓮♪キキちゃんのこと、どれくらい知っている?」
「え?なに急に?」
「いいから答えて」
紅茶を一口飲んだ後、蓮は口を動かす。
「鬼崎鬼々。鬼人族の魔法少女であり、俺の親友」
「うんうん。それでそれで?」
「ルーチューブでネットアイドルをしており、フォロワー数は一千万。数多くのアイドル達を歌とダンスで叩き潰してきた。あるアイドルがコンサートをしている時はその近くで路上ライブして客を奪ったり、あるアイドルが新曲を出したら自分も新曲を出して人気を奪ったりしている。別名―――アイドル殺しのオーガアイドル、キキちゃん」
「もう!褒めないでよ♪」
「褒めてねぇよ。むしろドン引きしているんだよ」
ハァとため息を吐いた蓮は、もう一度問い掛ける。
「で?そんな人気アイドル様がなんのよう?」
「んふふ。実はね……キキちゃん、テレビに出ることになったの♪」
「え!?すごいじゃん!」
鬼々の言葉を聞いて、蓮は目を見開く。
だがあることを思い出した蓮は「あ、でも」と言葉を漏らす。
「お前は魔法少女だから駄目なんじゃあ。ネットアイドルだって趣味の範囲だから両親から許可されたんだろう?」
「大丈夫♪お金を渡したら特別にOKしてくれたよ♪」
「金の力かよ!」
蓮は大声でツッコんだ。
「もちろん正式なアイドルはやらないよ?あくまでネットアイドル♪」
「まぁ……いいならいいんだが。それで?俺に話すってことはなにか用事があるんだろう?」
「話しが早くて助かるよ♪実はね……蓮にもキキちゃんと一緒に出てほしいの♪」
「はぁ!?」
「今、人気のアイドルグループの『フルフルフルーツ』とアイドル対決をするからキキちゃんと一緒に叩き潰そう♪」
「はああああぁぁぁぁぁぁぁ!?」
蓮は驚きのあまり椅子から立ち上がった。
「なんで俺が!?」
「キキちゃんと蓮は親友でしょ?」
「親友だけど手伝うことにも限度があるわ!そもそもなんで俺が手伝う必要あるの?鬼々の実力なら余裕だろ」
「確かにキキちゃんなら余裕だよ♪でもね……アイドルをやめさせるぐらいまで徹底的に潰すためには、蓮が必要なの♪」
可愛い声で可愛い顔でえげつないことをすらりと言う鬼々。
そんな彼女を蓮は素直に恐怖を覚える。
「それに蓮の歌と踊りは神クラスだし♪」
「まぁ……これでも巫女や聖女の家系だからな。歌や踊りは徹底的に叩き込まれたから得意だけど」
「だからお願い♪手伝って♪」
「い・や・だ!そもそも母さんが許さないだろう!?」
「それは大丈夫♪お金を渡したら許してくれたよ♪」
「買収しやがったよコイツ!?え?でもなんで?母さんはそういうのは効かないはずなんだが」
「旦那さんと二人っきりで旅行が行きたいみたいだよ♪」
「そうだったよ。今でも俺の両親は今でもアツアツなんだった!いや、でもダメだって!」
「ダメ?」
「ダメ!!」
「そう……ならこれを見ても?」
鬼々はスマホをポケットから取り出し、蓮に見せる。
スマホに映し出された映像を見て、蓮は目を大きく見開く。
「これって……」
スマホに映っているのは、女性化した蓮がイケメン男子をオカマたちがいる店に連れ込む映像だった。
蓮は顔から大量の汗を流す。
「手伝ってくれるよね?」
「……はい」
蓮は頷くしかなかった。




