姫神蓮
「フン♪フフ~ン♪」
姿見鏡の前で姫神蓮は櫛で髪を整えていた。
彼は高そうなTシャツやジャケットなどを着ており、オシャレしている。
しかも蓮の身体からほんのり香るシャンプーのような香りがしていた。
香水をつけているのは明らかだ。
「今日はご機嫌だね。お兄ちゃん」
ソファーに座ってポテチを食べていた姫神りりさは、兄に声を掛ける。
「当たり前だ。久々の休日。つまり俺のハーレム計画を勧められる大切なイベントだ。絶対にナンパを成功させてみせる!」
「相変わらずだね~お兄ちゃん」
苦笑を浮かべるりりさ。
彼女は今から女性にナンパしようとする兄を複雑に思った。
「俺はなんとしてもハーレムを作らないといけないんだ!そう、ラブコメ主人公のように!」
拳を強く握り締めて、蓮は熱く語る。
「俺はモテるためにあらゆることを頑張った!勉強やスポーツ、料理や家事!オシャレだって頑張った!おこずかいのほとんどは服や化粧に使っている!」
「うん。その女の子にモテるために頑張る根性はすごいと思う」
「だけど!この村の女子達のほとんどは、彼氏を作っているし!もう村の外にある街でナンパするしかない!」
「ちなみになんでハーレムを作りたいの?」
「そんなの……決まっている」
蓮は鬼も逃げ出すような迫力で、大声で叫ぶ。
「色んな女の子とイチャイチャして、エッチなことをするためだよ!」
「うん。妹にそれを言うことができるお兄ちゃんはある意味すごいし、ある意味で尊敬する」
りりさはドン引きした。
だが蓮は言葉を続ける。
「だって俺だって男の子なんだよ!?十四歳の男なんだよ!?性欲だって、性欲だって、性欲だってあるじゃん」
「三回も言わなくても」
「童貞を捨てたいんだよ!美女とヤッて!」
「もう黙った方がいいんじゃないかな、お兄ちゃん」
「それにハーレムは俺の昔からの夢だ。だから止めてくれるな!」
そう言い残して蓮は部屋から出て行った。
部屋に残されたりりさは呆れた顔でポテチを口の中に放り込む。
「また失敗するだろうな~」
<><><><>
村の外に出た蓮は、街の女性達にナンパしまくった。
しかし、
「お姉さん、俺と一緒に遊びませんか?」
「ごめんなさい。彼氏がいるので」
「そこのお嬢さん。俺とお茶しませんか?」
「ごめん、君……タイプじゃないの」
「そこの美少女さん!俺と映画でも!」
「無理、キモイ」
全てが断られた。
「クソ!なんでダメなんだ!これで三十回目だぞ!?」
ベンチに座って頭を抱える蓮。
「なんで……毎回毎回、女一人も誘えない。呪われているのか俺は!?」
頭をガリガリと掻いた蓮は深いため息を吐いた。
「今日はもうやめよう。ラブコメ系ライトノベルでも買って帰ろう」
村に帰ろうとした蓮は、偶然にも見つけてしまう。
女の子に囲まれて、イチャイチャしているイケメン男子を。
「ッ!」
蓮はガリッと歯噛みし、額に青筋を浮かべる。
マグマのような怒りと嫉妬が彼の心を支配した。
「……帰る前にやらないといけないことができたみたいだな」
<><><><>
「ねぇ~モモくん。私と遊ぼう~♡」
「違うわ!私と遊ぶの!」
「いいや、アタシよ!」
一人のイケメン男子と取り合う複数の女性達。
彼は苦笑いを浮かべながら、「まぁまぁ」と宥めた。
その時、
「あの……もしよろしければ私と遊ばない?」
一人の少女が声を掛ける。
その少女は白銀の長い髪を伸ばし、シルバーオーラの如き美しい銀色の瞳を持っていた。
服の上でもわかるぐらいスタイルがよく、胸と尻が大きい。
思わずイケメン男子だけでなく、他の女性達も見惚れてしまう。
「あ、あなたは?」
「ふふふ、レンっていうの。よろしく」
「レン……さんですか。いい名前ですね」
「ありがとう」
レンと名乗る美少女が微笑むと、イケメン男子は顔を赤く染める。
「ところで……そこのイケメンくん。もしよかったら私といいことしない?いい店を知っているの」
「い……いい店?」
「ええ。新しい扉を……教えてあげる♪」
レンはイケメン男子の腕に抱き付いた。
大きな胸に腕を挟まれたイケメン男子はドキドキと胸を高鳴らせる。
「イヤ?」
「い……嫌じゃないです」
「じゃあ……行こうっか」
白銀の美少女はイケメン男子を連れて歩く。
他の女性たちは呆然としながら立ち尽くした。
<><><><>
「ここだよ」」
銀髪美少女が案内したのは、路地裏にあった大きな扉。
扉はピンクに染まっており、いかがわしいお店だと一目でわかったイケメン男子はゴクリと唾を呑み込む。
「さぁ……新しい世界を見せてあげる」
可愛らしく微笑んだ白銀の美少女はドアノブを掴み、扉を開いた。
そして……開かれた扉の奥から、厚化粧をした男達がわらわらと現れる。
一人一人が女性の格好をしていた。
いわゆるオカマ達だ。
「あら~今日もいい男♡」
「いらっしゃい。イケメンくん♡」
オカマ達はイケメン男子に抱きつき、顔を近づける。
興奮したオカマ達の息が頬を撫で、イケメン男子は「ヒッ」と悲鳴を上げた。
「レ、レンさん!これはどういう……」
イケメン男子はレンに視線を向け、驚愕の表情を浮かべる。
なぜか?それは白銀の美少女がオカマの一人からぶ厚い封筒を受け取ったのを見たからだ。
「は~い、レンちゃん。これは今日のお礼。いつもイケメンくんをありがとうね♡」
「いえいえ、こちらこそありがとうございます。またイケメンを見つけたら連れて行きますね」
「うふん♡楽しみにしているね♡」
二人の会話を聞いて、イケメン男子は理解した。
売られたのだ。男に飢えたオカマ達に。
「さて……イケメンくん。一つ……いいことを教えてあげる」
白銀の美少女は口元を三日月に歪め、目を細める。
「実は俺……女にモテる男が大嫌いなんだ。だ・か・ら、お前に新しい世界を教えてあ・げ・る♡」
「い……いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
涙を流しながら、悲鳴を上げるイケメン男子。
そんな彼を扉の奥へとオカマ達は連れていく。
大きな扉はゆっくりと閉じた。
残された白銀の美少女は指をパチンと鳴らした。
すると彼女は女の姿から男の姿へと変わる。
「ふぅ……やっぱりイケメン男子に絶望を与えるとスッキリする。さて……今日、もらったお金で新しいライトノベルをたくさん買っちゃおう~♪」
<><><><>
「という感じで俺はイケメン男子に新たな扉を教えてがあげた」
「「「う~わ」」」
話を聞いていたエイミーと修と百合はドン引きした。
「昔の蓮兄さんって、そんなことをやってたの?」
「いや~女にモテるイケメン男子とかマジで嫌いだったんだ。昔の俺はくだらない正義感があって、全員を助けるとか言うぐらい甘さがあった。だけど女にモテたいとか、イケメン男子に嫉妬するとかそういう普通の少年っぽさもあったんだ」
「今の蓮兄さんとぜんぜん違うね」
「ははは……そうだな」
エイミーの言葉を聞いた蓮は苦笑を浮かべる。
「さて……次は俺の妹—――りりさのことを話そう」




