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TS魔法少女の二度目の復讐  作者: グレンリアスター
第一章 魔法少女の兄も魔法少女
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涙を流す妹3

「だからもうちょっとだけ待っててくれ」


 蓮が優しい声でそう言った。

 その時、エイナは苦しそうな声で叫び出す。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」


 瞳を強く光らせたエイナは地面を強く蹴り、蓮に突撃。

 弾丸の如き速さで蓮に接近し、エイナは拳を振るう。

 ガントレットに覆われた拳を、蓮は大太刀で防ぐ。


 ガキイィィィィィィィィィィィィン!!


 大きな金属音が鳴り響いた。

 重い衝撃が蓮の両腕に襲い掛かり、彼は後ろに吹き飛ぶ。


「くっ!」


 蓮は背中から炎を噴射し、体勢を整える。


(やっぱり……魔神化してパワーアップしてやがる)


 魔神化。

 あらゆる能力を大幅に強化する代わりに、理性を失い、全てを壊すまで止まらない暴走状態。

 だが魔法少女がそんな暴走状態には絶対にならない。

 そう、()()()()


(クソ……潰したはずなのにまだ生きていたとはな)


 妹を魔神化させた奴らに対し、蓮は忌々しく思った。

 今すぐにでも奴らをこの手で殺したという殺意が、彼の胸の奥から湧き上がる。

 だが蓮は怒りと殺意を鎮めた。


(落ち着け、俺。今、やらなくちゃあいけないのは……エイナを救うことだ)


 蓮はフゥ―と深く息を吐いた後、魔神化したエイナを見つめる。

 エイナは身体から禍々しい黒いオーラを放っており、悲痛な叫びを上げていた。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」


 叫び続けるエイナの瞳から流れる涙を、蓮は見逃さなかった。


「エイナ……今、助ける」


 炎の如き赤い瞳を光らせて、蓮は静かな声で囁く。


「浄化せよ、白い炎」


 次の瞬間、蓮が纏っていた甲冑と髪と瞳が白く染まった。

 そして大太刀は白く燃え上がる。

 白い炎を纏う大太刀を目にしたエイナは、唸り声を上げながら後退る。

 だがすぐに彼女は目つきを鋭くし、蓮に襲い掛かった。

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」


 エイナはガントレットに覆われた拳で怒涛の連打を放つ。

 当たれば致命傷は確実の連撃。

 それを蓮は舞うように大太刀を振るい、受け流す。

 全ての攻撃を受け流した彼は、


「はぁ!」


 白い炎を纏った大太刀でエイナを斬る。


「アア……」


 白炎の斬撃を受けたエイナは目を瞑り、意識を失った。

 彼女の身体を覆っていた漆黒の鎧は消え、裸となる。

 倒れそうになったエイナを蓮は優しく抱き締めた。

 エイナの顔からは苦しみが消えており、安らかに眠っている。


「よかった……本当に」


 ホッと安堵する蓮は、微笑みを浮かべた。

 その時、パチパチという拍手の音が響く。


「流石は《魔炎》ね。まさかこんな早く魔神化を解くなんて」


 蓮にとって聞き覚えのある少女の声。

 エイナをゆっくりと地面の上に寝かせた蓮は、声の主を睨んだ。

 彼の目は刃の如く鋭くなっていた。


「やっぱりお前だったか。委員長」


 蓮の視線の先にいたのは、片眼鏡を掛けた茶髪茶眼の少女—――水篠マリだった。

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