『焔』
魔獣に襲われている大都市。
そこで蓮は魔法少女の姿になって、激しく戦う。
銀色のツインテールを揺らしながら、両手に装備した二丁拳銃で魔獣達の頭を撃ち抜く。
魔獣の血が飛び散り、蓮の顔や鎧に付着して赤く染める。
「チッ!数が多い!」
蓮が舌打ちしたその時、彼の背後に狼のような魔獣がゆっくりと近づく。
息を殺し、足音を立てず、目を鋭くする。
そして襲い掛かろうとしたその時、魔獣の身体が大きな斧によって真っ二つにされた。
斧を振るったのは背が高く、少しぽっちゃりした少女。
胸がとても大きく、牛の耳と尻尾を生やしていた。
ウェーブがかかった栗色の長い髪にタレ目が特徴的。
そして赤いラインが走った黒い鎧を纏い、両手には禍々しい大きな斧が握られていた。
「もみじ姉さん。ごめん、助かった」
「もう~だめだよ~。ちゃんと気を付けてよね~」
頬を膨らませ、怒ってますよ!と言いたげな顔をする牛人族の少女—――牛山もみじ。
彼女に「ごめんごめん」と蓮が謝っていると、遠くのほうから大量の魔獣が押し寄せてきた。
「次から次へと」
蓮が武器を構えようとした時、
「ここはキキちゃんにおまかせ♪」
元気な少女の声が聞こえた。
声の主は高いビルから飛び降りて、魔獣の大群に突っ込む。
そして槍のような長い棍棒を振るい、魔獣達を殴殺する。
敵を容赦なく死体にしたのは、額から二本の鋭い角を生やした少女。
紫色の髪を伸ばし、紫色の瞳を持つ。
和風の甲冑を纏い、その上に鬼の絵が描かれた着物を羽織っていた。
「やぁやぁ鬼娘アイドル、キキちゃん参上♪」
可愛らしく、キャハ♪と笑う鬼人族の少女—――鬼崎鬼々。
だが顔や鎧に魔獣の血がついているせいで恐ろしく見える。
「鬼々。もうあっちの魔獣は倒したのか?」
「うん。余裕余裕♪キキちゃんの敵じゃないね」
また可愛らしく笑い、ポーズを取る鬼々。
そんな彼女に空から鷲型魔獣が襲い掛かる。
鋭い爪が鬼々を切り裂こうとした。
その時、無数の鎖が魔獣の身体に巻き付く。
鎖を放ったのは一人の魔法少女。
頬や皮膚の一部が鱗に覆われており、太長い尻尾を生やしている。
水色の短い髪と水色の瞳が特徴的。
セーラー服の上に鎖の絵が描かれたロングコートを羽織っていた。
「まったく……ウチがいないとダメっすね~。鬼々先輩」
蜥蜴人の魔法少女—――蜥蜴水メイは鎖を握り締めている両手を振るう。
鎖に巻き付いていた鷲型魔獣は強く地面に叩きつけられ、動かなくなった。
「これで全部、倒したッスかね」
「いや……そうでもないぞ」
メイの言葉を蓮はすぐに否定。
彼の視線の先には、ビルを壊しながら歩く巨大な魔獣の姿があった。
その魔獣は一言で言えば巨人だ。
巨大な腕に巨大な脚。
筋肉質の身体に怪しく光る目。
身長は百メートルはあるだろう。
「王級魔獣……人王。まためんどくさいのが来たな」
蓮がハァとため息を吐いたその時、
「大丈夫!アタシ達ならどんな相手でも倒せる」
明るい少女の声が聞こえた。
声の主は姫神りりさ。
彼女はフリルが付いたドレス風の赤い着物を着ており、髪と瞳が炎の如く赤い。
そして右手には鈴が付いた可愛らしいステッキが握られていた。
「どんな困難も、不可能も変えられる。それが魔法少女でしょ?」
「ああ……りりさの言う通りだ」
蓮は笑みを浮かべ、人王に視線を向ける。
少女—――姫神りりさの言葉で、蓮を含めた魔法少女たちが戦意を炎の如く燃やす。
「よし、行こう!」
シャン!と音を鳴らしながら、りりさはステッキを振るった。
すると四人の魔法少女の身体が赤い炎に包まれる。
炎を纏った蓮達は、力があふれてくるのを感じた。
「メイは動きを封じて!キキさんは両腕を破壊!もみじ姉さんは両脚を破壊!お兄ちゃんはトドメを!」
「「「「了解!」」」」
りりさの指示に従い、全員が動き出した。
人王は雄叫びを上げて、拳を振り下ろそうとする。
しかしそれよりも早くメイが両手から無数の鎖を飛ばした。
「はいはい!ジッとしてくださいッス!」
無数の鎖は人王の身体に巻き付き、きつく拘束する。
動けなくなった魔獣に向かって、鬼々は棍棒から紫色の光線を放つ。
「喰らって♪」
紫色の光線は人王の両腕を跡形もなく消し去った。
両腕を失った人王は悲鳴を上げる。
だがこれで終わりではない。
「次はお姉さんよ~!」
もみじは両手で握り締めた大きな斧を力強く横に振るう。
重い斬撃は一瞬で巨人の両脚を切断した。
両腕両脚を失った人王。。
その人王の頭に、蓮は生み出した巨大な銃の銃口を向ける。
「終わりだ」
直後、銃声を響かせながら大きな弾丸が放たれる。
超高速に飛ぶ弾丸は巨人の頭を吹き飛ばした。
流れるような動きで、国を滅ぼすことができる魔獣を倒した魔法少女達。
彼女達の名は『焔』。
謎の魔法少女チームであり、最高にして最強と呼ばれている。
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「俺達、『焔』は魔獣を倒すことに特化した魔法少女チームだった。どんな魔獣が相手でも負けたことはない」
「話題になっていたものね。『焔』は」
百合は改めて驚いた。
蓮が所属していた『焔』のことを。
「俺たちは世界中で活躍した。おかげで捕えようとしてくる人たちが現れて大変だった」
「先輩が作ったんですか?『焔』を」
「いや、違うよ修ちゃん。『焔』を作ったのはりりさだ」
「え!?」
修は目を大きく見開く。
「元々、俺たちはバラバラで行動するはずだったんだ。だけどりりさは『みんなでチームを作ろう!』って言ってな。それで生まれたのが『焔』。リーダーはりりさで、俺は副リーダーだった」
「……りりさ…さんは強かったの?」
エイミーの問いに、蓮は首を横に振った。
「いや、戦闘能力は『焔』の中で最弱だった。だけど……アイツは特別だった」
「特別?」
「ああ。アイツの声には不思議と勇気や元気を与えてくれる力があった。どんな困難でも、アイツがいればなんとかなった。あとは指揮能力が異常に高くて、サポートがめちゃくちゃうまかった。俺もリーダーとして才能もあるし、勉強もした。だけどりりさと比べたら石ころみたいなものだ」
蓮は小さく微笑む。
「本当に……すごいやつだった」
どこか寂しそうな、悲しそうな微笑み。
それを見てエイミーや修、百合は暗い表情を浮かべた。
なんて言えばいいか、三人にはわからなかった。
その時、エイナがパンパンパンと手を叩く。
「ねぇねぇ、蓮兄。昔の蓮兄のことを話さない?」
「昔って……恥ずかしいからあまり言いたくないんだが」
「いいでしょ?ハーレムを作るためにナンパしまくってた過去をみんなに教えてあげなよ」
「ちょ!?」
エイナの言葉を聞いて、エイミーや修、百合は驚愕する。
「え?蓮兄さん、ナンパしてたの!?」
「嘘でしょ?先輩が!?」
「詳しく聞きたいわね」
興味津々に尋ねる三人。
蓮はハァとため息を吐いた後、両手を挙げて降参のポーズを取る。
「わかった。話すよ。昔の俺がどんなやつだったか」




