プロローグ
恐怖でゆがめた顔で、一人の少女が走っていた。
皹だらけの道路の上を。
「ハァハァハァ!」
口から荒い息を漏らしながら、少女は走り続ける。
脚が痛くなろうが、肺がきつくなろうが関係なく。
周りの建物は崩壊しており、乗り捨てられた車は激しく燃えていた。
「パパ……ママ……!」
涙を流しながら少女がそう言った時、
「ギアアァァァァァァァァァァァァァァァ!」
怪物のような雄叫びが響き渡る。
そして少女の目の前に黒い何かが落ちてきた。
砂煙が舞い、少女は尻もちを付く。
「あ…ああ……」
少女は身体を震わせながら、怯えていた。
彼女の目に映っていたのは、異形の怪物—――魔獣だ。
大型トラックぐらいの大きな身体。
鋭利に尖った牙と爪。
全身を覆う黒い鱗。
ギョロギョロと動く赤い目。
そして太長い腕と脚。
全てが恐ろしく、少女の呼吸が荒くなる。
「だ…誰か……」
少女は願う。
「誰か……助けて!」
少女は目を瞑り、叫んだ。
その時、
「ああ……助けるよ」
優しく、聞いた者を安心させる少女の声が聞こえた。
少女は瞼をゆっくりと開け、目を大きく見開く。
彼女の目の前にいたのは、一人の少女。
全身を覆う機械仕掛けの白銀の鎧。
銀色に輝く長いツインテール。
そしてシルバーオーラの如き銀色の瞳。
「魔法…少女?」
少女がそう呟いた時、白銀の美少女は優しく微笑む。
「よく頑張った。あとは安心しろ。コイツは……俺が倒す」
白銀の魔法少女はなにもないところから大型チェーンソーを生み出し、右手に装備する。
そして地面を蹴り出し、魔獣に突撃した。
「グオオオオォォォォォォォ!!」
魔獣は叫び声を上げながら右腕を大きく振るう。
鋭い爪が白銀の魔法少女を切り裂こうとした。
しかしそれより速く白銀の魔法少女は大型チェーンソーを振るい、魔獣の右腕を斬り飛ばす。
斬り飛ばされた場所から噴水の如く血が噴き出し、魔獣は悲鳴を上げる。
「痛がっている暇はあるのか?」
白銀の魔法少女は左手から散弾銃を生み出し、銃口を魔獣の頭に向ける。
「死ね」
引き金を引いた直後、銃口から多数の小さな弾丸が発射された。
無数の弾丸は魔獣の頭を吹き飛ばす。
頭を失った魔獣はゆっくりと倒れ、動かなくなった。
一瞬で魔獣を倒した白銀の魔法少女。
そんな彼女を見て、少女は呆然とする。
「大丈夫か?君」
白銀の魔法少女は少女に手を差し出す。
少女は彼女の手を握り、ゆっくりと立ち上がる。
「あ、ありがとうございます。なんてお礼を言っていいか」
「気にしなくていい。それより怪我はないか?」
「は、はい」
「ならよかった。この先に避難所があるから。そこに向かえば安全だ」
「わかりました」
「じゃあ俺はこれで」
白銀の魔法少女が去ろうとした。
そんな彼女に少女は問い掛ける。
「あ、あの!あなたは……なんて魔法少女ですか?」
「俺か?俺は……」
白銀の魔法少女は微笑みを浮かべる。
「いつか魔獣全てを倒し、この世界に平和をもたらす正義の魔法少女だ!」
そう言い残して、白銀の魔法少女は両脚と背中からブースターを展開。
ブースターから炎を噴射し、空を飛んで行った。
<><><><>
空を飛んでいた白銀の魔法少女—――姫神蓮は鋭い目つきで地上を見ていた。
いくつもの建物は崩壊しており、炎が発生している。
まるで地獄のよう。
「まったく……魔法少女協会の奴らはなにをやってんだ」
怒気を宿した声で蓮がそう呟いた時、彼の左耳につけられた通信装置から少女の声が聞こえる。
『お兄ちゃん。聞こえる?』
「ああ、りりさ。聞こえる。とりあえずこっちの魔獣は全て倒した」
『こっちも避難完了。他のみんなも魔獣を倒したみたい。ただ……』
「ただ?」
『まだ強力な魔獣が一体、どこかにいるみたい』
「ランクは?」
『王級……竜王』
「なるほど……そいつはやばいな」
『うん。どこかにいるか今、探して―――』
「その必要はない」
『え?』
「今、見つけた」
空を飛ぶ蓮は目を細める。
彼の視線の先に、一体の魔獣が飛んでいた。
百メートル以上はある巨体。
大きく羽ばたかせる巨大な翼。
身体のあちこちにある無数の目玉。
短い手足に長い首。
そして頭から伸ばした鋭い一本の角。
気持ち悪く、そして恐ろしい竜が飛んでいた。
「あれが竜王。デカくてキモイな」
『倒せそう?』
「俺を誰だと思っている。お前のお兄ちゃんだぞ。あんな奴、五分で倒せる」
『フフフ、さっすがお兄ちゃんだね。なら私たちは先に帰っているよ。そろそろ帰らないと魔法少女協会の魔法少女達がやってくるから』
「ああ、わかった」
通信を切った後、蓮は白銀のツインテールを揺らしながら竜王に向かって突撃する。
「さぁ……竜狩りだ!」
突撃してくる蓮に気付いた竜王は、身体のあちこちにあらゆる無数の目玉から光線を放つ。
光線は長い竜の形へとなり、蓮に襲い掛かる。
しかし白銀の魔法少女は恐れない。
「そんな光線、大したことないな!」
蓮はなにもない空中に浮遊する菱形の盾を百個ぐらい生み出し、光線を防ぐ。
そして背中と脚のブースターから炎を更に噴射し、加速する。
弾丸の如き速さで突撃した蓮は、右手に持っていた大型チェーンソーを竜王の身体に突き刺す。
「オラアアァァァァァァァァ!」
チェーンソーを突き刺した状態で竜王の身体の表面を走る白銀の魔法少女。
竜王の皮膚が切り裂かれ、赤い血が噴き出す。
チェーンソーで切り裂いた場所に左手で持っていた散弾銃の弾丸を撃ちこむのも、蓮は忘れない。
「ギャアアアァァァァァァァァァァァ!?」
悲鳴を上げる竜王は身体を激しく揺らす。
蓮は距離を取り、チェーンソーを散弾銃を投げ捨てた。
「次はこれだ」
蓮はバシン!と両手を合わせた。
すると彼の周りで浮遊していた百の盾がガチャガチャと変形し、百の剣へと変わる。
「行け」
その言葉を合図に、浮遊する百の剣が超高速に飛ぶ。
無数の剣は竜王の身体に突き刺さり、そして大きな音を立てて爆発。
竜王の身体はあちこちが焦げており、もはや瀕死の状態だった。
「ギャアアアァァァァァァァァァァァァ!!」
竜王は最後の抵抗に大きく開けた口を蓮に向ける。
口の中が強く光り出す。
「させねぇよ!」
蓮は超巨大な大砲を生み出し、左腕に連結。
そして大砲を竜王の口に無理矢理に突っ込む。
「チェックメイト」
蓮はカチッと大砲の引き金を引いた。
直後、砲撃音が鳴り響き、竜王の身体が風船の如く膨らみ、大爆発する。
黒い煙が舞い上がり、残っていたのは蓮だけだった。
圧倒的な強さで敵を倒した白銀の魔法少女は笑みを浮かべる。
「余裕だぜ」
<><><><>
「これが十四歳の時の俺だ」
蓮の過去の話を聞いていたエイミー、百合、修は呆然とした。
「蓮兄さんが強いのは知ってたけど、まさか十四歳の時から王級の魔獣を倒せるなんて……すごすぎない?」
「まぁ……【機械神】の能力がすごかったんだ。〈マジックアイテム〉の中では最上位クラスだからな」
そう言いながら蓮は頬を指でポリポリと掻く。
「この時の俺はマジで調子に乗っていてな。自分が主人公だと思っていたよ」
「先輩もそんな時期があったんですね。なんやかんや先輩も男の子だったんですね」
フフフと微笑む修。
蓮は苦笑を浮かべる。
「やっぱり蓮兄は強いんだよ!えっへん!」
「なんでエイナが自信満々に言うんだよ」
フフン!と胸を張るエイナに、蓮は首を傾げる。
「それにしても蓮さんが十四歳の時って、魔法少女チーム『焔』と《機神》のことで大ニュースになってたわよね」
「そうですね。白雪さんの言う通りめちゃくちゃ目立ってて、魔法少女協会とかに追いかけられてばかりでした」
百合の言葉に対し、頷いて肯定する蓮。
「じゃあ次は俺の家族のことと村のことをざっくり説明しよう」
読んでくれてありがとうございます。
投稿再開します。
最低でも週一、できるのであれば週二か三は投稿できるように頑張ります!
読者の皆様が少しでも楽しめるよう頑張って書かせてもらいます!




