涙を流す妹2
爆発が発生したとされるビルのところに到着した蓮は、己の目を疑った。
「なんだよ……これ」
前髪で隠れている彼の瞳に映ったのは、血塗れで倒れている魔法少女達の姿だった。
「くっ!燃えろ、【鳳凰】!」
蓮はそう口にした。
直後、彼の胸から炎が発生。
その炎は刀の柄へと形を変える。
蓮は刀の柄を握り締め、引き抜いた。
赤い大太刀を引き抜いた彼は、唱える。
「変身!」
次の瞬間、蓮は激しく燃え上がり、赤い甲冑を纏った少女へと姿を変える。
魔法少女に変身した蓮は、倒れている魔法少女達に掌を向けた。
すると彼女達の身体は赤い炎に包まれ、傷を塞いでいく。
完全に傷を治った魔法少女達は目を覚まし、ゆっくりと起き上がる。
「大丈夫ですか!?」
蓮は魔法少女の一人に近寄った。
「え、えぇ……あなたが助けてくれたの?」
「はい。いったい……なにがあったんですか?」
「それが……黒いオーラを放つ魔法少女にやられて」
「黒いオーラ……」
彼女の言葉を聞いて、蓮が「まさか」と思った時、黒い何かが襲い掛かった。
蓮は大太刀を素早く振るい、黒いなにかを弾く。
ガキン!と金属音が鳴り響き、火花が飛び散る。
「お前は」
黒いなにかの正体は黒いガントレットに覆われた拳だった。
その拳を放ったのは、漆黒の鎧を纏った魔法少女。
両肩の装甲は獅子の顔を模しており、彼女の身体から禍々しい黒いオーラを放っていた。
そして目の前にいる魔法少女を、蓮は知っている。
「エイナ」
そう。今、目の前にいるのは蓮の義妹—――魔森エイナだった。
「最悪だな……」
蓮は額に青筋を浮かべ、大太刀を強く握り締めた。
「あいつら……よくもウチの妹を魔神化させやがったな」
激しい怒りが胸の奥から湧き上がる蓮。
だが彼はなんとか怒りを抑え、冷静さを失わないようにする。
「皆さん……この魔法少女は俺がなんとかします。なのでみなさんは避難してください」
「危険よ!私達も協力するわ」
「今のアイツは魔神化という暴走状態になっているのです。それをなんとかできるのは……俺だけです」
「……分かったわ。全員、この場から撤退!」
周囲にいた魔法少女達はその場から素早く離れた。
残されたのは蓮とエイナのみ。
「エイナ……辛いよな、苦しいよな。今すぐ……助けてやるから」
蓮は静かに大太刀を構え、炎の如く赤い瞳を光らせた。
「だからもうちょっとだけ待っててくれ」
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