妹の想い9
「私の勝ちだよ、蓮兄」
笑みを浮かべてそう言ったエイナは魔法少女からただの少女へと戻り、意識を失った。
長く伸びた髪は短くなる。
「……まったく、大した奴だよ」
意識を失って倒れそうになったエイナを、蓮は片手で受け止める。
「殺さないようにしたとはいえ、本気で放った天魔を真正面から潰すとはな」
蓮は心から驚いていた。
己が放った最高の一撃をエイナは打ち破ったのだ。
今、彼が抱いているのは驚愕と妹の成長に対する喜びだった。
「一瞬だが、エイナは俺を超えた。きっとすごい魔法少女になるな」
エイナの将来が楽しみだと思いながら、蓮は微笑んだ。
だがすぐに暗い表情を浮かべる。
(あの禍々しい黒いオーラは、間違いなく魔王の魔力だった。恐らく俺の血をたくさん吸ったことで、手に入れたんだろう)
蓮はチラッとエイナの首に視線を向ける。
エイナの首には首輪のような紋様があった。
(すでにエイナは俺の眷属になっていたんだな。眷属の証が今まで見えていなかっただけで)
エイナはもはや普通の魔法少女ではない。
魔王の眷属―――化物だ。
妹が化物となったと思うと、蓮は胸が苦しくなった。
(せめてお前には、普通に生きてほしかった)
もうエイナは普通の人生を送れない。
蓮と一緒に化物の人生を送らなければならなくなった。
そしてエイナは蓮の復讐に巻き込まれることとなる。
「本当……どうしてこうなったんだろうな~」
蓮が深いため息を吐いた時、
「本当になんでこうなったのかのう?蓮よ」
強い怒りを宿した低い声が聞こえた。
蓮は顔から大量の汗を流しながら、ゆっくりと振り返る。
「が、学園長」
蓮の後ろにいたのは、腕を組んで笑みを浮かべている皇覇満月だった。
彼女は額にビキビキと青筋を浮かべている。
「蓮よ。体育館が壊れていることについて、ちょ~といいかのう?」
「アハハハハハ」
蓮は苦笑するしかなかった。
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