妹の想い8
「天魔」
静かな声でそう言った蓮は、上段に構えた蒼炎の大太刀を振り下ろす。
その剣撃は力強く、素早く、そして静かで美しかった。
(私にはわかる。この一撃は蓮兄の必殺技だ)
当たれば間違いなくやられる必殺技の一撃。
防御を許さない剣撃。
そして回避することもできない。
ならば、
(ここで……迎え撃つ!)
エイナは右拳に全ての魔力を流し込んだ。
すると彼女の右拳が眩しく金色に輝き出す。
「これが私の……全力だあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
エイナは床を強く踏み、腰を回し、拳を放つ。
全力全開のエイナの一撃は、迫りくる剣撃と激突した。
次の瞬間、台風の如き衝撃波が発生し、天井や壁が吹き飛ぶ。
「ぐうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
蓮の剣撃とエイナの拳撃は激しく拮抗。
だがわずかにエイナが押されていた。
彼女は顔を歪め、後ろに下がる。
「負けられない。好きな人と離れるなんて……」
蓮が自分から離れていくのを想像したエイナは、真っ黒に染めた瞳を強く光らせる。
「そんなの……嫌だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
エイナは魂の叫び声を上げた。
その時、彼女の身体から黄金の粒子と共に黒いオーラが発生する。
黒いオーラは鋭い装甲へと変わり、エイナの鎧の一部を覆う。
「なっ!この禍々しい魔力は!」
蓮が驚愕した時、大太刀の刀身が甲高い音を立てて砕け散った。
大太刀を破壊したエイナの拳が、蓮の顔に直撃しようとする。
そして……エイナの拳は蓮の顔に当たる数ミリのところで止まった。
拳から放たれた衝撃波は蓮の髪を激しく揺らし、纏っていた蒼炎を吹き飛ばす。
「私の勝ちだよ、蓮兄」
エイナは拳を蓮の頬に軽く当てて、笑みを浮かべた。
そして彼女は魔法少女からただの少女へと元に戻り、意識を失う。
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