妹の想い6
(俺はエイナのことを過小評価していたのかもしれない)
蓮は頬から一筋の汗を流す。
彼の視線の先にいるのは、膨大な黄金の粒子を放出させながら拳を構える魔森エイナ。
(いくら手加減したとはいえ、立ち上がることはできないぐらいにはダメージを与えた。なのに立ち上がり、しかも爆発的に己を強化した)
エイナから感じる膨大な魔力と存在感。
それを感じ取った蓮の本能は叫んでいる。
本気を出せ。じゃないと負けるぞと。
(少し力を使った方がいいかもな)
蓮は大太刀を構えながら、唱える。
「纏え炎」
蓮の身体と大太刀から赤く燃える炎が発生。
赤き炎を纏い、己の肉体と武器を強化した蓮は口を動かす。
「来い、エイナ」
その言葉を聞いたエイナは、姿を消した。
「消えた!?」
蓮が驚いていた時、彼は背筋が凍るのを感じた。
咄嗟に彼は振り返り、大太刀を構える。
その直後、重い打撃が大太刀から伝わってきた。
打撃を放ったのは他でもない。
エイナだ。
彼女は一瞬で蓮の背後に移動し、拳を放ったのだ。
「くっ!」
重い一撃を大太刀で防いだ蓮は、勢いよく吹き飛ぶ。
吹き飛ばされた蓮は大太刀を床に突き刺し、体勢を整える。
(マジかよ。炎を纏っている俺はさっきよりも強いんだぞ?そんな俺を吹き飛ばした。しかも……)
蓮はチラッと大太刀に視線を向ける。
炎を纏っている大太刀の刀身に、皹が入っていた。
「これは……相当ヤバイかも」
蓮がそう呟いたその時、彼の目の前にエイナが現れた。
咄嗟に蓮がしゃがんだ直後、先ほどまで彼の頭があった場所にエイナの拳が通り過ぎる。
エイナの拳から放たれた衝撃波は、遠くにあった壁に大きな穴を開けた。
「うっそん」
思わずそんな声が蓮の口から漏れ出た。
「ハアアアァァァァァァァァァァァァ!」
エイナは超高速に連打を放つ。
迫りくる超連打を蓮は大太刀で受け流し、紙一重で躱す。
だが先ほどの余裕は今の彼にない。
蓮は必死な表情で攻撃を防ぎ、躱している。
「チッ!」
舌打ちした蓮はエイナから素早く距離を取り、フゥ―と息を吐く。
「さっきの言葉は撤回するよ、エイナ。今のお前はプロの魔法少女と同じ、いやそれ以上の実力者だ」
エイナが強者だと、蓮は認めた。
認めたからこそ彼は、
「だから……本気を出してやる」
蓮は発動する。己の必殺技を。
「炎よ、蒼く燃えろ」
次の瞬間、蓮の身体が青く燃え上がった。
彼の髪や瞳、甲冑、大太刀が赤から蒼へと変わる。
激しく燃える蒼炎。
その炎を纏った蓮は、大太刀を静かに構える。
「行くぞ。エイナ」
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