妹の想い5
「ぐあっ!」
天井に激突したエイナは自由落下し、硬い床に衝突。
高いところから落ちた衝撃で、エイナは立ち上がることができなかった。
(嘘…でしょ。たった一撃で私の連打を無効化した!!)
蓮が化物並みの強さを持っていることは、エイナも知っていた。
だがここまで差があるとは思っていなかったエイナは、驚きを隠せない。
もはや像と蟻。
それぐらいの差があった。
蓮は、エイナでは辿り着けないような場所に立っている。
「もう終わりだ、エイナ」
地面に倒れているエイナに近付く蓮。
エイナはゆっくりと顔を上げ、兄の顔を見る。
「あ」
蓮の顔を見て、エイナは目を見開いた。
彼は微笑んでいる。
とても優しそうな、だけど寂しそうな顔で微笑んでいた。
その微笑みを見て、エイナは胸が苦しくなるのを感じる。
「エイナ……お前はよく頑張った。俺のために頑張ってくれた。すごく嬉しいよ。ありがとう。お前が俺の眷属になってくれると言ってくれた時、ちょっと嬉しかった。だけど……」
蓮は微笑みを消し、真剣な表情を浮かべる。
「お前は普通に生きろ。普通の学園生活を送り、普通に友達と一緒に遊んで、普通の魔法少女として生きてほしい。俺の復讐に付き合う必要はない」
「蓮…兄……」
「だから頼むよ、エイナ」
蓮は心からの願いを言う。
「俺以外の男を好きになって、幸せになってくれ」
その言葉を聞いた瞬間、エイナの胸の中で黒いなにかが爆発した。
「嫌だ」
エイナは両手と両脚に力を入れ、ゆっくりと起き上がる。
「嫌だ」
エイナはルビーの如き赤い瞳を真っ黒に染める。
「絶対に……嫌だ!!」
次の瞬間、エイナの身体から黄金の粒子が発生した。
嵐の如く吹き荒れる黄金の粒子。
蓮は目を見開きながら、距離を取る。
「これは……」
「蓮兄……そんなことは言わないでよ!」
「!!」
黒く染めた瞳で、蓮を睨むエイナ。
彼女の緑と金の髪が長く伸び、まるで獅子の鬣のようになる。
「普通に生きろ?他の男を好きになって幸せになれ?そんなの死んでも嫌だね」
黒く染まった瞳を怪しく光らせながら、エイナは言葉を続ける。
「蓮兄のそばにいられないなら、普通の人生なんていらない。他の男を好きになって幸せになるぐらいなら、死んでやる」
獅子の鬣の如き緑と金の髪を揺らしながら、エイナは拳を構えた。
惚れた男の隣に立つために、彼女は限界を超える。
「さぁ行くよ、蓮兄。私のことを無理矢理にでも意識させてあげる」
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