妹の想い4
「二度と俺の眷属になりたいと言わないように、教育してやる」
静かで、低く、そして威圧が込められた蓮の声。
聞いた者は誰もが恐れて、身体が動かなくなるような声。
だがその声を聞いても、エイナは恐れなかった。
(本当……優しいな、蓮兄は)
エイナは気付いていた。
蓮の声には、妹を危険なことに巻き込みたくないという優しさが宿っていることに。
(私のためにあえて威圧する口調で喋っているんだよね。蓮兄はいつも優しい)
エイナは全身に力を入れ、壁から抜け出した。
(だからこそ、この人を一人にするわけにはいかない!)
エイナは瞳を強く光らせ、両腕に魔力を集中させる。
すると両腕を覆うガントレットが、金色に輝き出す。
「教育?いいね。好きな人に教育されるのは……最高のご褒美だね!」
次の瞬間、エイナは一瞬で蓮の背後に移動し、拳を放つ。
蓮は大太刀でエイナの拳を防ぐ。
「!」
攻撃を防いだ蓮はわずかに後ろに下がり、目を見開く。
「私の〈マジックアイテム〉【獅子の戦士】の能力は身体強化と攻撃強化。速く動けるようになり、力が強くなり、身体が頑丈になり、強い一撃を放つことができる。いたってシンプルなもの。だからこそ……強い!」
エイナは地面に亀裂が走るほど強く蹴り、蓮に突撃。
そして懐に入った瞬間、また蓮の背後に一瞬で移動した。
「ハァ!」
身体全身を使い、エイナは力強く拳を放つ。
蓮は大太刀でエイナの重い一撃を防ぎ、軽く吹き飛ぶ。
直後、エイナは蓮の頭の上に高速移動。
そして、
「ハアアアァァァァァァァァ!」
怒涛の連打を放つ。
回避も防御も不可能の連撃。
(勝った!)
エイナは勝利を確信した。
そこらへんにいるプロの魔法少女なら、エイナの連撃を避けることも防ぐこともできない。
しかし、エイナと戦っている兄はプロの魔法少女じゃない。
彼は、
魔法少女の魔王だ。
「残念だったな、エイナ」
蓮は静かに、そして舞うように大太刀を振るった。
直後、大太刀から放たれた斬撃はエイナの怒涛の連打を全て弾く。
そして斬撃はエイナを上に向かって吹き飛ばす。
吹き飛ばされたエイナは天井に激突し、大きな衝撃音が鳴り響いた。
「それじゃあ、俺には勝てない」
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