妹の想い1
学生寮を出た後、蓮は外を歩いていた。
向かう場所はエイナが入院している病院。
「……二人を叩き潰せはないだろう。俺」
部屋で言ったことを思い出しながら、蓮は深いため息を吐いた。
(二人を俺の眷属にさせたいためとはいえ、修ちゃんにあんな命令を出してしまった)
蓮は自己嫌悪し、またため息を吐く。
彼にとってエイミーは大切な妹であり、百合は大切な友人。
そんな二人を、魔王の眷属にさせないために彼は修に命令したのだ。
(だけど……後悔はない。二人を俺の復讐に巻き込むわけにはいかない。それに……今の修ちゃんならエイミーと白雪さんに勝つことなんて余裕だし)
そう思いながら蓮が歩いていると、
「あれ?蓮兄?」
彼の瞳に一人の少女の姿が映った。
「!お前は……」
その少女は緑色のショートヘアーを伸ばし、両目にはルビーの如き赤い瞳を宿していた。
耳が細長く尖っており、それが可愛らしい。
エルフと吸血鬼のハーフ少女—――魔森エイナが、蓮の目の前にいた。
「エイナ?どうしてここに」
「今日、退院したんだよ。あれ?エイミーから聞いてない?」
エイナの言葉を聞いて、蓮は気付く。
エイミーはエイナを心配させないために、自分が行方不明になっていたことを黙っていることに。
「そういえばそうだった。それで今日、俺は迎えに行くところだったんだ」
「……」
アハハと苦笑しながら誤魔化す蓮。
そんな彼を、見定めるような目でエイナは見つめる。
「ねぇねぇ蓮兄!どこかでお茶しない?」
明るい声を出し、エイナは笑顔を浮かべる。
「ああ、いいぞ」
<><><><>
とあるカフェにやってきた蓮とエイナは、お茶を飲みながら話をしていた。
「ねぇねぇ。蓮兄はどんな本が好き?」
「お前も知っているだろう。ラブコメ系だ」
「兄妹恋愛ものは?」
「う~ん、それはちょっと……」
「なんでそんな微妙な顔をするの!?そこは『大好物だぜ♪グヘへへへ』と言うところでしょ!?」
「なんだよ『グヘへへへ』って」
「私は諦めない!蓮兄を兄妹恋愛脳にしてみせる!必ず!!」
「カッコイイ声で何を言ってんだよ、お前は」
呆れた表情を浮かべる蓮。
だがエイナと話をする彼は、どこか楽しそうだった。
「いや~やっぱり蓮兄と話すのはいいな~」
「俺は疲れるけどな」
「アハハ。そっか……」
エイナはカップに入っている紅茶を一口だけ飲んだ後、微笑みを浮かべる。
「ねぇ蓮兄!」
「ん?」
「私を……」
「魔王の眷属にしてよ」
その言葉を聞いた蓮は、手に持っていたカップから紅茶を零した。
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