化物
「二人は魔王になった俺を見たら、化物だって思うよ。絶対に」
蓮はハッキリとそう言った。
彼の言葉を聞いて、エイミーと百合は勢いよく椅子から立ち上がる。
二人の顔は怒りで歪んでいた。
「そんなわけない!」
「そんなことあるわけないわ!」
エイミーと百合は本気で怒っていた。
愛する男を化物と呼ぶ女。
そんな女だと蓮に思われていることに、彼女達は腹を立てていたのだ。
「エイミー、白雪さん。二人は魔王に会ったことが無いからそんなことが言えるんだ。魔王は恐れられる存在。例え家族、友人、愛する人だったとしても必ず化物だと言って恐れる。……俺もそうだったから」
蓮は顔を俯かせ、拳をギュッと強く握り締める。
「俺も……魔王になった実妹の友達を、化物と思ってしまった。恐ろしいと思っていしまった」
蓮の声には後悔が宿っていた。
その声を出す蓮は、とても辛そうに顔を歪めている。
「二人とも。魔王ってのは、どんな奴だろうと恐怖させるんだ。絶対に」
「……なら、なら私達も蓮兄さんの眷属になる!そうすれば一緒にいられる」
エイミーはそう言うが、蓮は「ダメだ」と即答した。
「どうして!?」
「そうよ、蓮さん。私達はあなたが好き。そんな人といられないなんて絶対に―――」
エイミーと百合は食い下がろうとしたが、蓮の瞳を見て口を閉じた。
前髪の隙間から見える蓮の瞳。
その瞳には全てを黙らせる威圧が込められていた。
「ダメだ。二人を眷属にするなんて絶対に許さない。修ちゃんのことは予想外だったが、これ以上……眷属を増やすつもりはない」
蓮から放たれる強力な威圧。
床や壁、天井に皹が走り、エイミーと百合は倒れそうになった。
しかし、彼女達は歯を食いしばって耐える。
「私は……なにがなんでも蓮兄さんから離れない」
「私もよ」
威圧に耐えながら、蓮を睨むエイミーと百合。
彼女達になにを言っても無駄だと理解した蓮は、威圧を放つのを止める。
威圧から解放されたエイミーと百合はハァハァと口から荒い息を吐き、顔から大量の汗を流す。
「いいだろう……二人を眷属にしてやる」
「ほ、本当!?」
「ただし……条件がある」
蓮は椅子から立ち上がり、瞳を怪しく輝かせる。
「二人とも……修ちゃんと戦い、勝ってみせろ。それが条件だ」
そう言い残して、蓮は部屋から出ようとした。
扉のドアノブを掴んだ時、彼は冷たい声を出す。
「修ちゃん。最初の命令だ。二人を叩き潰せ」
「了解です。先輩」
修は胸に手を当てて、深く頭を下げた。
蓮が部屋から出て行った後、修はエイミーと百合に視線を向ける。
修から放たれる威圧と禍々しい魔力。
それを感じ取ったエイミーと百合は息を呑む。
「先輩の命令だからね。手加減はしないよ?」
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