修羅場
「修……それはどういう意味かな?」
「私にも詳しく聞かせてほしいわ?」
額にビキビキと青筋を浮かべるエイミーと、微笑みながら冷たい目をする百合。
二人から感じる殺意。
蓮は顔から大量の汗を流しながら怯える。
「言葉通りだよ。ねぇ~先輩♡」
猫なで声を漏らす修。
エイミーと百合は血走った目で、蓮を睨む。
視線を向けられた蓮は、すぐに顔を逸らす。
(おい、こっちを見るなよ!俺は何も悪くない!)
心の中で叫ぶが、二人が恐ろしくて声が出ない蓮。
「蓮兄さん……なにがあったか詳しく教えてくれない?」
「私にも聞かせてくれるかしら?」
エイミーと百合は威圧を放ちながら、尋ねる。
彼女達に逆らうことができなかった蓮は「ハイ」と言うことしかできなかった。
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「—――というわけです」
学生寮の蓮とエイミーの部屋。
そこで蓮はエイミーと百合に全てを話した。
「魔王……眷属化……そんなことが」
「正直…驚いたわ」
話を聞いていたエイミーと百合は、呆然としていた。
「色々と言いたいことはあるけど……なんで蓮兄さんは魔王のことをもっと早く言ってくれなかったの?」
「えぇ、まったくよ」
鋭い目つきで蓮を睨むエイミーと百合。
蓮は言おうか迷った後、口をゆっくりと動かす。
「……話す必要がないと思ったから。俺は完全な魔王になったら、みんなの前から消えるつもりでいたんだ」
それが蓮の本心だった。
いや、より正確に言うなら、話したくなかったのだ。
「魔王という化物になるのはいい。だけど……妹や友人に俺が化物だって思われたくなかった」
その言葉を聞いたエイミーと百合は、
「ふざけないで!」
「ふざけないでくれるかしら」
本気で怒った。
エイミーは怒鳴り声を上げ、百合は強い怒気を宿した静かな声を出す。
「私が……蓮兄さんを化物って思うわけないでしょ!?」
「右に同じく。私にとって蓮さんは大切な人よ。そんな人を化物って思うわけないわ」
二人の言葉を聞いた蓮は、微笑みを浮かべる。
「ありがとう、二人とも。でもね……」
感謝を述べた後、蓮は真剣な表情で告げる。
「二人は魔王になった俺を見たら、化物だって思うよ。絶対に」
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