帰還
「はぁ……まったく、頭が痛くなるのう」
学園都市『大和』の魔法少女育成学園『三日月』。
その学園の学園長室で和服姿の黒髪緑目の少女—――皇覇満月は指で目頭を押さえていた。
彼女が見ていたのは数枚の紙。
紙に書かれていたのは、魔森蓮と大石修の行方不明事件のこと。
「ただでさえ魔神教団のことで忙しいというのに。まさか誘拐されるとは」
魔森蓮と大石修は何者かに転移の力で攫われたと満月は予想していた。
すでに探知系魔法少女に二人の捜索をさせており、救出準備をしている。
「二人はこの学園の大切な生徒。特に蓮は奴らに対抗できる最強の戦力。なんとしても救出せねば」
真剣な表情で満月がそう呟いた時、扉が勢いよく開いた。
入ってきたのは教師であり、百年以上も満月に仕えている魔法少女—――リリー。
いつも無表情の彼女がハァハァと荒い息を吐きながら、驚きの表情を浮かべていた。
「なんじゃ!ノックもせずに入りおって?」
「す、すいません。ですが急いで報告しなければと思いまして」
「……内容は?」
「『大和』の公園で魔森蓮と大石修が突然、現れました」
「なんじゃと!?」
目を大きく見開きながら、満月は座布団の上から立ち上がった。
「今すぐ二人をここに連れてくるのじゃ!」
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数十分後、蓮と修が学園長室にやってきた。
「蓮……そして大石修……よく無事で―――」
ホッと胸を撫で下ろし、安堵した表情を浮かべた満月が「無事でよかった」と言おうとした。
その時、彼女は気付く。
蓮が暗い表情を浮かべていることに。
そして修の首に首輪のような紋様があることに。
「……なにがあった?」
満月は目を細めながら、問う。
その問いに、蓮は疲れた声で全てを話す。
「……俺たちはレティ―という魔王に攫われていたんです」
「!魔王じゃと!?」
満月は目を大きく見開く。
(世界を滅ぼすことができる魔法少女—――魔王。噂では魔王は数人いると聞いていたが、まさか本当に……)
満月の知る情報では、今の時代で生きている魔王は蓮と合わせて四人。
蓮以外の魔王は、人が寄り付かない場所で暮らしていると聞いていた。
「どうやら魔王は俺が危険な存在か、世界を滅ぼす意思があるかどうかを確かめるために攫ったようです」
「そうなのか」
満月は顎に手を当てて、考える。
(魔王と呼ばれているが、それはあくまで世界を滅ぼす力を持っているからであって、彼女達に世界を滅ぼす意思はない。あやつも最初は……そうじゃったな)
悲しそうに顔を歪めながら、満月は思い出す。
仲間と共に倒した一人の魔法少女のことを。
「魔王レティ―は俺に世界を滅ぼす意思はないと分かると、帰してくれました」
「そうじゃったか……」
「他の魔王にもそのことを伝えるそうです」
「そうか……とりあえず蓮が無事でよかったのじゃ」
本当に蓮が無事で帰ってきてくれてよかったと、満月は思った。
(蓮は魔神教団を倒すために必要な切り札。ここで失っては困る。いや、それよりも気になることが)
満月はチラッと修に視線を向けた。
(巨人族の少女、大石修。蓮の義妹であるエイナの親友。実力は一年生の中で二位。だがプロの魔法少女としてはまだまだ未熟……の、はずなのじゃが)
満月は頬から一筋の汗を流す。
(なぜこの娘から魔王の禍々しい魔力を感じるのじゃ!いったいなにが……)
満月が尋ねるよりも早く、修の口が動いた。
「学園長。僕は先輩の……魔王である魔森蓮の眷属になりました」
その言葉を聞いて、満月は一瞬だけ思考を停止した。
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