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TS魔法少女の二度目の復讐  作者: グレンリアスター
第一章 魔法少女の兄も魔法少女
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《機神》3

「まさか新しい魔王が男だとはな……いや~珍しいこともあるものだ」


 興味深そうに蓮を見つめる黄色髪の少女。

 そんな彼女に蓮は恐れていた。

 別に少女が幽霊だとか、顔が怖いだとかではない。

 むしろ美少女と言っていいぐらい可愛かった。

 しかし、彼の本能は叫んでいた。


 目の前にいる少女が化物の中の化物だと。


「……あんたに質問がある」


 恐怖を感じながら蓮は問い掛けた。

 視線の先にいる魔王に。


「あんたは……魔王だな」

「その通り。私は魔王だ。魔王を知っているようだな……お前は」

「……質問を続ける。この島に俺達を転移させたのは、お前か?」

「ああ、そうさ」

「なんのために?」

「ん~……そうだな……」


 少女は黄色の瞳を怪しく輝かせ、不敵な笑みを浮かべる。


「お前らを……殺すためかな」


 その言葉を口から出した少女は手を伸ばし、唱える。


「雷鳴を響かせろ、【雷神(トール)破滅雷光(はめつらいこう)


 少女の手から激しい稲妻が発生。

 稲妻は巨大なウォーハンマーへと形を変える。

 そのウォーハンマーは稲妻の紋様が描かれていた。


「変身」


 少女が言葉を発した次の瞬間、彼女の身体が激しく放電した。

 バチバチと放電音が鳴り響き、稲妻が地面を焼く。

 彼女から放たれる稲妻は黒と黄色の鎧へと変わる。

 ビリビリと放電する鎧を纏った少女は、ウォーハンマーを構えた。


「私の名はレティ―・イナズマ。さぁ……お前も魔法少女になれ……新たな魔王よ」


 蓮はゴクリと唾を呑み込んだ。

 見て分かる。

 感じる。

 彼女はとてつもなく強いことが。

《魔炎》では絶対に勝てない。

 彼女は決して蓮達を逃がさないだろう。


(どうする……どうすれば)


 蓮が考えていた時、彼の服の裾が引っ張られた。

 服の裾を引っ張ったのは他でもない。

 地面に座り込んでいる修だった。


「せん……ぱい……」


 少女は怯えていた。

 身体を震わせながら、蓮を見つめている。

 そんな後輩を見て、蓮は……優しく微笑んだ。


「大丈夫だよ、修ちゃん。俺があの怖い魔法少女を倒してくるから」


 怖くないと言えば嘘になる。

 勝てるかどうかわからない。

 負けるかもしれない。

 だけど……大切な後輩を守るために、少年は戦う。

 なぜなら大切な後輩が、少年のことを世界最高の魔法少女と言ってくれたから。


「だから……ここで待ってて」


 少年はレティ―と名乗る魔王に視線を向ける。

 彼の目には強い覚悟が宿っていた。


「創造せよ、【機械神(デウスエクスマキナ)】!」


 かつて……蓮と共に多くの魔獣を倒した〈マジックアイテム〉にして、彼の元相棒。

 その名を唱えると、蓮の右手の中指に銀色の指輪が出現した。

 直後、彼の意識が白く染まる。


<><><><>


 気が付くと蓮は、広い空間にいた。

 空にはいくつもの歯車が浮かんでおり、回転している。

 その空間に……一人の少女が立っていた。


「蓮……」


 一本一本の毛がキラキラと輝く長い銀髪。

 身に纏う白銀のドレス。

 そして背中から生やした機械仕掛けの翼。

 まるで天使のような彼女は、シルバーオーラのような銀色の瞳を潤ませていた。


「久しぶりだな……【機械神(デウスエクスマキナ)】」


 蓮は白銀の少女―――【機械神】に近付いた。


「【機械神】……俺は、昔の自分が嫌いだ」


 その言葉を聞いて、少女は顔を歪める。


「俺は……お前を俺の力だと勘違いしていた。その結果……全てを失った。なにも守ることができなかった」


【機械神】は首を左右に振る。


「俺は……愚か者だ。世界一の」

「違う!」


 彼女は首を左右に振りながら、蓮の言葉を否定した。


「あなたはなにも間違っていない!私はあなたの力!あなたのもの!なのに私は……あなたの力を百パーセント発揮できなかった。あなたが大切な人たちを守れなかったのは……私の……」


 今にも泣きそうな声を漏らしながら、俯く白銀の少女。

 そんな彼女の涙を、蓮は指で拭う。


「泣かないでくれ……お前は何も悪くない。それと……今までお前を避けててすまなかった。お前の力を使う度に、あの悲劇を思い出しそうで……怖くて……お前を使わなかった」

「蓮……」

「俺は……今でも《機神》が嫌いだ。でも……そんな《機神》を世界最高の魔法少女だって言ってくれる女の子がいるんだ」


 蓮の頭の中に、巨人族の少女の顔が浮かび上がる。


「俺は……その子を守りたい。もう死なせたりしない。だから……」


 蓮は真剣な表情で手を伸ばす。


「力を貸してくれ」


 その言葉を聞いて、白銀の少女は微笑みを浮かべ、両手で彼の手を握る。


「いくらでも貸してあげる。だって私は……あなたの力だから」

「ありがとう……【機械神】」

「もう昔の私じゃない。今の私は……あなたの能力を百パーセント以上、引き出せる。だから―――」





「思いっきり暴れて!」


<><><><>


 蓮の意識が現実へと戻る。


「行くぞ、相棒」


 彼の右手の中指に嵌められた銀色の指輪が浅く光る。


「変身!!」

 

 次の瞬間、蓮の肉体が少年のものから少女のものへと変わる。

 短い黒髪は長い銀色のツインテールへと変わり、黒い瞳は銀色に輝く。

 空中に出現したいくつもの装甲や機械が彼の体を覆い、鎧となる。

 機械仕掛けの鎧を纏う白銀の魔法少女。

 

 彼は―――《機神》は目の前にいる魔王を睨む。


「さぁ……魔王討伐開始だ」

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