妹の友達5
「ん……ここは」
意識を失っていた修は目を覚まし、ゆっくりと上半身を起こす。
彼女の視界に映ったのは、木材で作られた古い部屋。
埃臭く、何年も人が出入りしていないのが分かった。
「気が付いたか。しゅ……大石さん」
聞き覚えのある声が修の耳に聞こえる。
視線を向けるとそこにいたのは、床に座っている黒髪の少年—――魔森蓮だった。
「……ここは?どういう状況?」
眉間に皺を寄せながら、問い掛ける修。
そんな彼女を見て、肩をすくめた蓮は口を動かす。
「ここは無人島の小屋の中だよ」
「どうしてここに?」
「……俺達の足元に魔法陣が出現しただろう?あれでこの無人島に飛ばされたみたい」
「誰がそんなことを……目的は?」
「不明。分かるのは……ここは無人島で、脱出不可能ということだけ」
「脱出不可能?」
「……君が気絶している間にこの島のことを調べたんだ。この島は俺達が脱出できないように巨大なバリアが張られていた。それもとてつもなく強硬だった」
「そんな……」
「助けが来るまでここで待つしかない。もしくは……俺達をここに転移させた奴を……殺すしかない」
前髪の隙間から見える蓮の鋭く細められた目。
その目は刃の如く鋭く、修は身体が凍るような寒さを感じた。
「……とにかくここは大人しくしていよう」
「そんなこと言ってる場合じゃあ!」
修が怒鳴り声を上げようとした時、
ギュルルルルルルル~。
彼女の腹から大きな音が鳴り響いた。
修は顔を真っ赤に染めながら俯く。
そんな彼女を見て、蓮は微笑む。
「ちょっと待ってて。食べられる果物を集めたから」
そう言って蓮は別の部屋に行き、両腕いっぱいに果実を持って戻ってきた。
「毒味はしたから大丈夫」
「……」
修は何も言わず、果物を食べ始めた。
果物を咀嚼しながら、彼女は蓮を睨む。
「……お前が《機神》を悪く言ったこと、まだ許してないから」
「別にいいよ。ただ、今はここで大人しくしていよう。動いていたら無駄な体力が減る」
「ふん……分かってるよ」
<><><><>
果物を食べ終えた修は、蓮と共に小屋の中で救助が来るのを待った。
待っている間、修は天井のシミを数え、蓮は目を瞑っている。
「……臭い」
修は自分の身体を鼻で嗅ぎ、汗臭いことに気付く。
「なら水浴びでもするか?近くに川があったし」
蓮の言葉を聞いて、修は目を輝かせる。
「川!?」
「うん。綺麗な川だし、水浴びしても大丈夫だと思う。ついてきて。案内する」
「……お前も来るのか?」
修の不機嫌そうな声。
その声を聞いても蓮は真顔で「当たり前だ」と即答する。
「ここは無人島。なにが起きるか分からないし、敵が何処にいるかも分からない。ならできるだけ近くにいた方がいい」
「でも……」
「心配しなくても妹の友達の裸を見る趣味はない」
蓮の言葉を聞いて、修は「ムッ」と眉間に皺を寄せる。
「……そう。なら安心だね。ならとっとと案内して」
「はいはい」
<><><><>
蓮は修を川に案内した。
川の水はとても透き通っており、綺麗なのが分かる。
「じゃあ俺はそこの木の後ろにいるから」
そう言って蓮は木の後ろに背中を預け、目を瞑る。
そんな彼を見て、修は不機嫌そうに頬を膨らます。
「ちょっとぐらい興味を持ってくれても……って、なにを言ってるんだ僕は!」
頭をぶんぶんと左右に振った後、修は服を脱ぎ、川に足を入れる。
「はぁ~……冷たくて気持ちいい~」
川の冷たい水で汗を流しながら、修は蓮のことを考える。
(なんで……あんな顔をしたんだろう)
修の脳裏に浮かぶのは、涙を流す蓮の顔。
今でも彼の泣いた顔を、修は忘れられないでいた。
(魔森蓮のあんな悲しい顔を見るのは初めてだった。もしかして……アイツは《機神》と知り合い?)
修がそんなことを考えていたその時、川にいた小さな魚が彼女の脚に触れた。
突然の感触に修は思わず、
「うわああああああああああああああ!?」
大声を上げてしまった。
その大声を聞いて、蓮は飛び出す。
「どうし…た……」
蓮は言葉を失った。
なぜか?
それは彼の視界に大きな胸と引き締まった身体、そして健康的な褐色肌が映ったから。
「あ……ああ……」
顔を真っ赤に染めていく修。
そんな彼女に蓮は、
「ご……ごちそうさまです」
次の瞬間、修の全力右ストレートが蓮の顔に炸裂。
巨人族のパワーが宿った拳は蓮を遠くまで吹き飛ばした。
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