妹の友達3
「先輩先輩!次はここに行きましょう!」
蓮の手を引っ張って修がやって来たのは、大きな博物館だった。
多くの魔法少女の写真が壁にかけられている。
多くの女性や少女達は興味深そうに写真を見ていた。
「すっごい量の写真だな」
「ここでは有名な魔法少女の写真が全てあるんです。例えば……あれとか」
修が指差した方向には、大きな剣を振るう猫耳の魔法少女が写っていた写真があった。
「猫人の魔法少女、《聖剣》。彼女の剣は山をも切り裂くと言われています」
「へぇ~……」
「そしてあっちの写真は《灰影》です」
次に修が指差した写真に写っていたのは、フードを被った灰色髪の魔法少女。
その少女は刃がついた二丁の拳銃を持っている。
「彼女の射撃の精度は百発百中。狙った獲物は逃がさない謎の魔法少女」
「詳しいね。修ちゃん」
「まぁ……魔法少女オタクですから」
頬を赤く染めながら、頭を掻く修。
「中学の時から好きだもんね。魔法少女のこと」
「好き……ですし、憧れていたので。とくにあの人に」
「あの人?」
「ついてきてください」
修が案内したのは、目立つ場所に壁掛けされた大きな写真。
その写真に写し出されていたのは、白銀の長い髪をツインテールに結んだ魔法少女。
彼女は機械仕掛けの鎧を纏い、無数の武器で魔獣と戦っていた。
「これって……」
「英雄にして、幻の魔法少女—――《機神》。正体不明とされる魔法少女チーム『焔』のリーダーで、多くの魔獣を倒した白銀の魔法少女。神級の魔獣を倒した経験があり、魔法少女協会や多くの国が血眼で探しています」
「……」
「『焔』に所属する魔法少女達は全員、美しく……高い戦闘能力を持っています。ですが《機神》は『焔』の中で別格。多くの伝説を残しています」
写真を見る修の瞳はとても輝いていた。
まるで神様を崇める信者のよう。
「《機神》は……僕の憧れなんです」
修の言葉に偽りはなかった。
彼女は本気で《機神》に憧れているのが分かる。
そんな修に……蓮は冷たい声で言う。
「やめておけ」
蓮の言葉を聞いて、修は目を丸くしながら「え?」と声を漏らす。
「えっと……それはどういう意味ですか?」
「そのままの意味だ。君が《機神》のようなゴミに憧れちゃあいけない」
前髪で隠れていた目を鋭く細めながら、蓮は言葉を続ける。
「修ちゃん。君は妹の友達だ。そして俺の大切な後輩だ。だからこそ言う。《機神》はゴミだと」
「何を……言って……」
「確かに『焔』に所属していた魔法少女達は優秀で……素晴らしかった。だけど《機神》は別だ」
蓮の声は静かで、低く、そして強い怒りが宿っていた。
「幻の魔法少女?英雄?違うね。アイツはただのバカな魔法少女だ」
「……そんなこと」
「何度でも言ってやる」
「アイツは……世界一愚かで、ゴミで、クソな魔法少女だ」
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「やめておけ」
「え?」
先輩の言葉を聞いて、僕は驚きを隠せなかった。
今……なんて言った?
やめておけ?
意味が分からない。
「えっと……それはどういう意味ですか?」
「そのままの意味だ。君が《機神》のようなゴミに憧れちゃあいけない」
え?
ゴミ?《機神》が?
そう言ったの?
なんで……なんでそんなことを言うの?
「修ちゃん。君は妹の友達だ。そして俺の大切な後輩だ。だからこそ言う。《機神》はゴミだと」
「何を…言って……」
僕の胸の中で、黒い何かが現れた。
やめて。
僕の憧れの魔法少女をゴミだなんて言わないで。
好きな人にそんなこと言われたくない。
「確かに『焔』に所属していた魔法少女達は優秀で……素晴らしかった。だけど《機神》は別だ」
聞きたくない。
聞きたくない。
聞きたくない。
これ以上、僕の憧れの魔法少女を悪く言わないで。
お願いだから。
「幻の魔法少女?英雄?違うね。アイツはただのバカな魔法少女だ」
「……そんなこと」
僕の心の中が黒いなにかに支配されていく。
やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて!!
聞きたくない!
先輩の口からそんなこと……言わないでよ!
これ以上、言ったら僕……先輩のことを!
「何度でも言ってやる」
お願い!言わないで!!
「アイツは……世界一愚かで、ゴミで、クソな魔法少女だ」
その言葉を聞いた瞬間、僕の頭の中で何かが切れた。
胸の奥から、黒い感情が溢れ出す。
ああ……もうダメだ。
もう許せない。
あの人を悪く言ったこの人を……許しちゃあいけない。
「撤回してください」
「断るよ」
「撤回しろ!!」
僕は大声で叫んだ。
周りにいた人達は驚いた表情で僕を見るが、今はそんなことはどうでもいい。
僕の憧れをクソだの、ゴミだのと言ったコイツを……許すわけにはいかない。
「お前になにが分かる!あの人の、《機神》のことを!!」
「少なくとも君よりは知っている。アイツの愚かさを」
僕はガリッと強く歯噛みした。
もうコイツは僕の好きな人でも、尊敬する先輩でもない。
コイツハ……敵ダ。
倒サナイトイケナイ敵ナンダ。
「決闘だ。僕が勝ったら今の言葉を撤回しろ」
「……いいよ。なら俺が勝ったら、《機神》に憧れるのをやめろ」
潰ス。
絶対二ボコボコ二シテ、日常生活ガデキナイグライニシテヤル。
アノ人ヲバカニシタノヲ後悔サセテヤル!!
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