妹と友達はナースになる
「はい、蓮兄さん。あ~ん」
「こっちも、あ~ん」
フォークを刺したリンゴやイチゴを、蓮の口に近付けるエイミーと百合。
「いや……自分で食べられるから」
「いやなの?」
捨てられた子犬のような目で見つめてくるエイミーに、蓮はなにも言えなかった。
「私たちのことを心配させたのだから、これぐらいは受け入れてほしいわ。蓮さん?」
蓮の顔に自分の顔を近づける百合。
彼女の美しい顔から強い圧を感じ、蓮は両手を挙げた。
「分かった。降参、食べますよ」
蓮はフォークに刺さったリンゴやイチゴを食べる。
甘い果物の味が蓮の口の中に広がった。
「どう?」
「おいしい?」
蓮は首を縦に振り、「ああ、おいしい」と答えた。
「ところで二人とも……ずっと気になっていたんだが」
「なに?」
「なんで……ナース服を着てるんだ?」
そう。
エイミーと百合は私服ではなく、白いナース服を着ていた。
しかも普通のナース服と違い、スカートの丈がとても短い。
ギリギリパンツが見えそうで見えないような絶妙な長さ。
「こ、これは……蓮兄さんが喜ぶからって聞いたから、その……」
「フフフ。どう?かわいいでしょう」
顔を真っ赤にしてモジモジするエイミーと、セクシーポーズを取る百合。
そんな彼女達を見て、蓮は顔に手を当てる。
「まったく……なにをやってるんだ」
「で、でも蓮兄さんこういうの好きでしょ?」
「いや、好きって言われても……」
「だって……プラモデルの箱の中に隠していた薄い本に、ナース系やメイド系のやつがいっぱいあったよ?」
「おい、なに男のプライバシーを覗いてんの!?」
二人の話を聞いていた白雪百合は蠱惑的な笑みを浮かべる。
「ふ~ん。そうなの。なら……このまま押し倒しても問題ないわよね?」
百合はベットの上に乗り、蓮に近付く。
「白雪さん!?なにして……」
「蓮さん……目を閉じて」
「ちょ、マジで待ってください!!」
唇を近づける百合。
そんな彼女から逃げようとした蓮の肩を、美しい白い手が掴む。
離れようとしても、離れない。
「逃げないで」
「いや、逃げますよ!っていうか、力つよっ!!」
あと少しで百合が蓮にキスをしようとした。
その時、エイミーが百合を突き飛ばす。
「エ、エイミー。助かっ」
「ダメ……ダメだよこれは。このままじゃあ蓮兄さんが奪われちゃう!私が管理しなくちゃ…管理しなくちゃ」
「エ、エイミーさん?」
瞳を真っ黒に染めて、ブツブツと喋り出すエイミー。
そんな彼女を見て、嫌な予感を感じた蓮は頬を引き攣った。
「……蓮兄さん」
「な、なに?」
「監禁されるなら……どういう部屋がいい?」
蓮はすぐにベットから降りて、素早く病室を出た。
そして全速力で廊下を走る。
彼は振り返られない。
ただ逃げる事だけを考えて、蓮は走る。
そんな彼を、魔法少女に変身したエイミーと百合が追いかける。
「待ってよ。蓮兄さん!ちゃんと私が管理してあげるから」
「逃がさないわよ、蓮さん!」
真っ黒に染めた瞳を輝かせながら、追いかけるエイミーと百合。
蓮は止まらない。死ぬ気で走った。
《煉獄》との戦いとは別の緊張感を感じながら、蓮は走り続ける。
「ああ、クソ!やっぱりヤンデレは怖いわ!誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
病院の中で蓮の叫び声が響いた。
<><><><>
広大な海に浮かぶとある大きな無人島。
その無人島の草原で、一人の少女が寝っ転がっていた。
少女は黄色の髪を三つ編みにしており、頬には稲妻のタトゥーが施されている。
彼女は気持ち良さそうに眠っており、鼻から鼻ちょうちんが出ていた。
「スピ―スピ―……ん?」
鼻ちょうちんが割れると同時に、少女は起き上がった。
「この感じ……なるほど、新しい魔王が誕生しようとしているみたいだな」
少女はニッと笑みを浮かべ、立ち上がる。
「なら会ってみるか。新たな魔王に」
シトリンの如く黄色の瞳を輝かせながら、少女は己の身体から激しい稲妻を発生させた。
読んでくれてありがとうございます。
気に入ったらブックマークとポイントをお願いします。




