復讐は終わらない1
家族の仇である《煉獄》の頭を踏みつぶした蓮は、フゥ―と息を吐く。
彼の体を覆っていた蒼炎は、徐々に消えていく。
(やっぱり……キツイな、人を殺すのは)
大切な人を殺した《煉獄》は、死んでも当然だと蓮は思っている。
だがそんな彼女を殺した瞬間、蓮は自分のなにかが削られるのを感じた。
そのなにかが削られていくたびに彼は、胸を締め付けられるような苦しみと悲しみに襲われる。
だが、
(後悔はない)
《煉獄》の頭を踏みつぶしたことで、蓮の頬に飛び散った赤い血。
その血を親指で拭った彼は、刃の如く鋭い目つきをしていた。
(これは俺が決めた復讐だ。今さら止まるつもりはない)
頭を失った《煉獄》の死体。
それを見下ろした彼は、《煉獄》の言葉を思い出す。
『このまま復讐を続ければ……あんたは誰もが恐れる魔王になる』
魔王。
その二文字が、《魔炎》の心の深くに残っていた。
「お前ら魔神教団をもう一度、この手で殺せるなら……魔王になってやるよ」
復讐の炎を胸の中で燃やす魔法少女。
彼の指先が、僅かに黒く燃えた。
「蓮兄さん……」
「蓮さん……」
二人の少女の声が、蓮の耳に聞こえる。
振り返ると、そこにはエイミーと百合がいた。
彼女達は心配そうな顔で蓮を見つめている。
「エイミー、白雪さん……」
蓮は二人を安心させようと、微笑みを浮かべた。
その時、突然……目眩が彼を襲う。
自分の力で立っていることができなくなった彼は崩れ落ちる。
「蓮兄さん!」
「蓮さん!」
二人の悲鳴の声が、蓮の耳に聞こえた。
「大丈夫」「ちょっと疲れただけ」と言おうとしたが、彼の口から言葉は出ない。
(どうしよう……瞼が重いな)
ゆっくりと目を閉じていく蓮。
そんな彼は意識を失う寸前……二人の顔を見る。
「蓮兄さん!蓮兄さん!!」
「すぐ救急車を呼ぶから!絶対に死なないで!!」
涙を流す妹と友達。
完全に意識を失う寸前、蓮は苦笑する。
(ハハハ……また、妹と友達を……泣かせちゃった……な)
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