蒼き炎2
「勝つのは……私だよ♪」
赤黒い炎の化物となった《煉獄》。
その姿はまるで竜人。
(もはや魔法少女ではないな。いや……今の俺も人外か)
蒼い炎を纏っている今の蓮は、魔法少女の能力を超えている。
人の形をしているだけの、炎の化物。
《煉獄》とそう変わらない。
(……だけど、それでいい。目の前の敵を殺せるなら、それでいい!)
家族の命を奪った仇。
そいつを己の手で討つことができるのであれば……《魔炎》は化物になることを望む。
「さぁ……決着をつけよう」
蒼炎を纏い、大太刀を構える《魔炎》。
炎竜となり、大剣を構える《煉獄》。
二人の炎の化物は殺意を宿した目で、睨み合う。
そして……同時に駆け出す。
「シッ!」
「ハァ!」
音速を超えた速度で武器を振るう《魔炎》と《煉獄》。
蒼炎を纏った大太刀と赤黒い炎を纏った大剣が激突した。
次の瞬間、嵐の如き衝撃波が発生し、地面に大きな亀裂が走る。
「死ね、《煉獄》!」
「死ぬのはあんたよ、《魔炎》!」
《魔炎》と《煉獄》は連撃を放つ。
大太刀と大剣が超高速に何度もぶつかり合う。
剣同士がぶつかる度に金属音が鳴り響き、地面に走った亀裂が広がっていく。
美しく、舞うように大太刀を振るう《魔炎》。
力強く、荒々しく大剣を振るう《煉獄》。
二人の炎の化物は一歩も引かない。
互いに目の前の敵を倒すために剣を振るい続けた。
そして、
パキンッ!
《煉獄》の大剣が甲高い音を立てて、砕け散る。
「終わりだ」
魔森蓮は《煉獄》の首を斬り飛ばそうとした。
だがそれよりも速く、《煉獄》は大太刀を蹴り飛ばす。
「未来が見えてるのよ、こっちは!」
赤黒い炎を纏わせた左拳を、《煉獄》は力強く放つ。
「甘いんだよ!」
迫りくる炎の左拳に対し、蓮は蒼炎を纏わせた右拳を放つ。
炎を宿した拳と拳は交差し、互いの敵の頬に直撃。
クロスカウンターだ。
大きな打撃音が鳴り響き、脳が揺れる感覚が二人を襲う。
だが二人は倒れない。
歯を食いしばり、《魔炎》と《煉獄》は拳を放つ。
「ぐっ!」
「ガハッ!」
またも互いの顔を殴った炎の魔法少女達。
《魔炎》は蒼炎を宿した拳で、《煉獄》の腹を殴る。
「ブハッ!」
《煉獄》の身体はくの字に曲がった。
口から血を吐いた《煉獄》はキッと蓮を睨み、拳を放つ。
赤黒い炎を宿した拳が蓮の横腹に叩き込まれ、ボキボキと骨が折れる音が鳴り響く。
「グハッ!」
激痛が襲い、蓮は顔を歪める。
だが蓮は耐えた。
耐えて、敵の顔面に拳を叩き込む。
「くっ!このぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ガリッと強く歯噛みした煉獄は、蓮の顔面に強く頭突きする。
強烈な頭突きを受けた蓮は、鼻から血を流す。
「ハアァァァァァァァァァァ!!」
「ウオォォォォォォォォォォ!!」
《魔炎》が殴り、《煉獄》が殴りが繰り返される。
お互い回避もせず、防御もしない。
炎の魔法少女の二人は目の前の敵を倒すために、全力で殴り合う。
「負けない!アンタだけは……絶対に!!」
一度敗北し、殺された《煉獄》。
彼女は左拳に宿した赤黒い炎を強化。
激しく燃える炎の拳を、《煉獄》は放つ。
あらゆるものを焼き尽くす灼熱の炎の拳。
それを《魔炎》は真正面から迎え撃つ。
「勝つのは……俺だ!」
蒼炎の魔法少女は左拳を強く握り締める。
復讐のために。
大切なものを守るために。
《魔炎》は地面を強く踏み、腰を回し、蒼き炎を纏わせた左拳を放つ。
赤黒い炎を宿した拳と蒼炎を宿した拳が、激突する。
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