《煉獄》4
「……」
《煉獄》はゆっくり近づいてくる《魔炎》を見て、沸々と怒りが湧き上がった。
ああ、憎い。
《魔炎》を見ていると、初めて殺された時のことを思い出す。
顔につけられた古傷がうずく。
まだ十数年しか生きていないはずの魔法少女なのに、一度私を殺した魔森蓮。
彼が……とても憎い。
「ふ~ん♪まだ戦うのね♪」
「…当たり前だ。お前を殺すまで……俺は何度でも立ち上がる」
足を止め、殺意を宿した赤い瞳で私を睨む蓮。
彼の目を見ると、ある感情が私の胸から現れる。
恐怖だ。
とてつもなく危険な化物に睨まれたような感覚が私を襲い、手が震える。
ああ、憎い!憎い!!
私に恐怖を与えた彼が憎い!!
立っているのがやっとのはずなのに!!
疲労がとても溜まっているはずなのに!!
なんで……なんでそんな目で私を見ることができるの!?
なんで立ち上がれるの!!
「でも……もう立っているのがやっとでしょ?そんな状態で私に勝つなんて絶望的♪不可能よ♪」
私は湧き上がる怒りと憎しみを抑えながら、明るい声で彼をバカにした。
それに対して蓮は、
「絶望的?不可能?それがなんだ?」
静かに……中指を立てる。
「そんなものクソ喰らえだ」
私は全身の血が沸騰するような感覚を覚えた。
大剣を握り締める力が強くなる。
なんで……なんでそんなことが言えるの!!
絶望的なはずなのに!
私に勝つなんて不可能のはずなのに!
「絶望だろうと、不可能だろうと……そんなもの乗り越えてみせる。勝つまで諦めない。何度でも立ち上がる。それが……」
蓮は堂々と言う。
「魔法少女だ」
その言葉を聞いた時、私は思い出す。
蓮と同じぐらいムカついた……一人の魔法少女のことを。
<><><><>
激しい雨が降り、風が吹き荒れていた森の中。
私は一人の魔法少女と対峙していた。
炎の如き赤い瞳に、短い赤髪。
フリルが付いたドレス風の赤い着物。
鈴が付いた可愛らしいステッキ。
一言で言い表すなら、和風魔法少女。
そんな彼女は口からハァハァと荒い息を漏らしており、身体のあちこちが傷だらけだった。
「アハ♪もう終わりだね♪そろそろ諦めて死を受け入れたら?」
私がそう言うと、目の前にいる魔法少女は……明るい笑顔を浮かべながら、ステッキを構える。
「諦めないよ、アタシは。どんな絶望的でも……アタシは何度だって立ち上がる。なぜならそれが―――」
「魔法少女だからね!」
<><><><>
「ムカつく」
私はガリッと歯噛みした。
ムカつく!ムカつく!!ムカつく!!!
あの魔法少女を思い出すと!
《魔炎》を見ていると!
どうしようもなく、腹が立つ!!!
ああ、頭がおかしくなりそう!
殺す殺す殺す!
絶対に殺してやる!!
「いいよ……なら、私の炎で焼き殺してあげる♪」
大剣に赤黒い炎を纏わせ、構える。
もう私を止めることはできないよ、《魔炎》!
「それは無理だ。なぜなら……俺がお前を殺すから」
赤き魔法少女は、静かな声で告げる。
「炎よ、蒼く燃えろ」
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