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TS魔法少女の二度目の復讐  作者: グレンリアスター
第一章 魔法少女の兄も魔法少女
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《煉獄》3

「こっから先は……」

「私達が相手よ」


 いつでも攻撃できるように構えるエイミーと百合。

 彼女達は愛する男を傷つけた魔法少女—――《煉獄》を、鋭い目つきで睨んでいた。


「バカ……逃げろ!エイミーと白雪さんが…敵う相手じゃ……ない。それにこれは……俺の復讐だ!邪魔…しないでくれ!」


 口から血を吐きながら、上半身を起こす蓮。

 そんな彼に、今の自分の気持ちを百合は優しい声で伝える。

 


「ごめんなさい。あの《煉獄》って人が蓮さんの復讐相手だって分かってる。だけどね……好きな男性が傷つくのを黙って見ていられるほど……私、我慢強くないのよ」


 百合の優しい声には、強い怒りが宿っていた。


「それは私も同じです」


 エイミーは空中にいくつもの魔法陣を展開する。

 その数……百以上。


「蓮兄さんを傷つけたあの魔法少女は絶対に許さない。蓮兄さんを傷つけた罪……償わせる」


 ルビーの如き赤い瞳を怪しく光らせるエイミー。

 二人の魔法少女の胸には、激しく燃え上がる怒りの炎が宿っていた。


「バカ……やめろ!」


 蓮は止めようとしたが、二人は止まらなかった。


「そこでじっとしててね。蓮兄さん」

「あの魔法少女は……私達が倒す!」


 エイミーと百合は、《煉獄》を倒すために動き出す。


「狙い撃つ!!」


 百合は片手から五本の白い矢を生み出し、弓に装填。

 装填させた白い矢に風を纏わせ、一斉に放つ。

 音速を超えた速度で飛ぶ五本の矢を、《煉獄》は紙一重で躱す。


「無駄だよ♪私には未来が見えるから♪」

「なら……この未来は見えていたかしら?」


 いつのまにか《煉獄》の前に立っていた百合は、眼帯を外す。

 彼女は黄金に輝く左目(魅了の魔眼)で《煉獄》の目を見つめながら、告げる。


「止まって」


 その言葉を聞いた瞬間、《煉獄》は動きを止める。


「今よ!エイミーさん!!」


 百合がその場から離れた直後、エイミーはいくつもの魔法陣から魔法攻撃を放つ。

 赤い魔法陣から炎の剣が放たれ、黄色の魔法陣から石の槍が放たれ、青い魔法陣から水の矢が放たれる。

 あらゆる属性の魔法攻撃が《煉獄》に直撃。

 煙が舞い上がり、轟音が鳴り響く。


「私の〈マジックアイテム〉は【魔法王(ソロモン)】。全ての属性を使い、あらゆる魔法を使うことができる王の力。そこらへんの魔法少女と同じにしないで」


 エイミーがそう言った時、煙から赤黒い炎の竜の頭が現れる。

 炎竜は顎を開けて、エイミーに襲い掛かった。


「くっ!」


 エイミーは素早く光の盾を生成。

 炎竜の攻撃を光の盾で防いだエイミーは、別の魔法を発動する。


「凍って!」


 炎竜の頭の周囲に、水色の魔法陣がいくつも出現。

 魔法陣から冷気が放たれ、炎竜の頭を凍結させる。


「なるほどね♪確かに強力な〈マジックアイテム〉♪ただ……それを完全に使いこなせてないわね♪」


 少女の声が聞こえた直後、煙が吹き飛んだ。

 声の主である《煉獄》は傷一つついておらず、余裕の表情で笑みを浮かべていた。


「嘘!あれだけの攻撃を受けたのに!?」

「流石は魔神教団の幹部。そう簡単に倒せる相手じゃないわね」


 無傷の《煉獄》を見てエイミーは目を見開き、百合は顔から一筋の汗を流す。


「アンタたちは強いよ♪十数年しか生きていない魔法少女にしては♪だけど……私には勝てない♪」


《煉獄》は大剣を地面に突き刺し、告げる。


「焼き尽くせ、【轟炎竜(ファイアードレイク)】」


 次の瞬間、大剣から赤黒い炎の海が発生した。

 ありとあらゆるものを焼き尽くす灼熱の炎海が、二人の少女に襲い掛かる。

 回避も不可能。

 防御も無意味。

 エイミーと百合は死を覚悟し、目を瞑る。


「終わりだね♪」


《煉獄》がそう呟いた時、


「させねぇよ!」


 少女の声が響いた。

《煉獄》は声が聞こえた方向に視線を向け、目を見開く。


「アンタ!まだ動けるの!?」


《煉獄》の両目に映るのは、大太刀を構えた赤き魔法少女—――魔森蓮の姿だった。

 大太刀には赤い炎が纏っており、激しく燃えている。


「吹き飛ばせ!【鳳凰】!」


 蓮は大太刀を力強く横に振るった。

 直後、刃から巨大な炎の斬撃が飛ぶ。

 赤黒い炎の海と赤い炎の斬撃が激突。

 二つの炎は激しく拮抗する。

 そして、二つの炎は消滅した。


「流石だね♪私の炎を相殺させるなんて♪でも……もうそろそろ限界みたいだね♪」


《煉獄》がニヤリと笑いながらそう言った時、蓮は大太刀を地面に落とした。

 顔から大量の汗を流しながら、片膝を地面に付ける。


「蓮兄さん!」

「蓮さん!」


 慌ててエイミーと百合は蓮に駆け寄った。

 口からハァハァと荒い息を吐く蓮。

 そんな彼を見て、二人の少女は気付く。

 自分達を守るために無理をしたのだと。


「ごめんなさい。私達を守るために……無理をさせて」

「守るはずが守られるなんて……」


 泣きそうな顔を浮かべるエイミーと、自分の不甲斐なさに唇を噛む百合。

 そんな二人に、蓮は優しく笑いかける。

 安心させるかのように。


「いいんだ。これは……俺が望んでやったことだ。お前らが俺を守りたかったと同じように……俺もお前らを守りたかったんだ」


 蓮は大太刀を拾い、ゆっくりと立ち上がる。


(怪我は治っているけど、疲労はそうとう溜まっている。このままじゃあ、蓮さんが……)


 なんとか蓮を戦わせないようにしたい百合。

 だが彼女の考えを読んでいたのか、蓮は言う。


「止めないでくれ、白雪さん。これは……俺の復讐だ」

「!!」

「俺はアイツを殺したい。この手でもう一度、殺したい。家族を奪ったアイツを……《煉獄》の命を奪いたい」


 蓮の赤い瞳には、あらゆるものを焼き尽くす憎悪の炎が宿っていた。

 だが彼の瞳に宿っているのは憎悪だけではないことに、百合は気付く。


「俺はもう……失いたくない。友達が、仲間が、家族が……大切な人が死ぬところなんてもう見たくない」


 蓮の言葉には、大切なものを守りたいという想いが宿っていた。

 悲しみと憎しみで歪めた蓮の顔を見て、百合はハッと気付く。


(そっか……だから人を殺すのね)


 蓮は好きで人を殺すような狂った人間ではない。

 誰かを守るためには、誰かを殺すのが必要。

 それを蓮はよく理解している。

 だから『敵』だからという理由で人を殺せる。

 殺さなければ……大切なものを失うと、蓮は分かっているのだ。


「蓮さん……私はあなたが傷つくのは嫌よ。でも……あなたは敵を殺したい。それが……あなたの覚悟でもあるから。そうでしょう?」

「……はい」

「なら……もう止めないわ」


 百合は蓮の右手首につけた腕輪型魔装(【非殺の腕輪】)を……外した。


「白雪さん……」

「本当はあなたにこれ以上、人殺しをしてほしくない。だけど……あなたが敵を殺すこと(復讐)を望むなら、私は……もう止めない」


 白き少女は愛する男の手を優しく、だけど強く握る。


「あなたが人を殺して傷ついたら……私があなたの傷を癒す」


 白き魔法少女(白雪百合)は微笑みながら、告げる。


「だから……行ってらっしゃい」


 その言葉を聞いた蓮は《煉獄》に視線を向け、歩き出す。


「ありがとう。白雪さん」


 赤き魔法少女は足を止めない。

 振り返らない。

 敵を殺すために。

 復讐するために。

 そして大切なものを守るために。


《魔炎》は前に進む。


 そんな彼の背中を、白雪百合は見届ける。


「なにを……やってるんですか!」


 怒りを宿した声を発したのは、魔森エイミーだった。

 彼女は百合の胸ぐらを掴み、顔を近づける。

 エイミーは眉間に皺を寄せており、鋭い目つきで百合を睨んでいた。


「なんで腕輪を外すんですか!」

「ああしなければ、あの《煉獄》には敵わない」

「だからって!」

「……あなたが言いたいことは分かるわ。蓮さんには人殺しなんてしてほしくない。だけど……」


 百合は真っすぐな目でエイミーを見つめる。


「あの人は敵を殺すのを望んでいる。覚悟を決めている。私には……もう止めることはできない」

「それで……それで蓮兄さんの心が傷つくとしてもですか!!」


 エイミーは悲痛な叫びをあげた。

 彼女の瞳は潤んでおり、今にも泣きそうな顔をしている。


「分かってるんです。人を殺さず、誰かを守ることができるのは…フィクションだけだって!現実ではなにかを守るためには、目の前の敵を殺さないといけないんだって!!でも……蓮兄さんは人殺しをすればするほど、心がボロボロになる」


 苦しそうに……そして悲しそうに顔を歪めるエイミー。

 そんな彼女の手を、百合は優しく握る。


「そうね。あの人は優しい。優しいからこそ、心が傷つきやすい。だから……私たちで癒しましょう」

「癒す?」

「ええ……それが私たちの役目よ。そして……彼が敵を殺すのを見届けるのも……私たちの役目」


 百合は真剣な表情で視線を向ける。

《煉獄》に歩み寄る蓮に。


「蓮兄さん……」


 エイミーは泣きそうな顔で、愛する兄の姿を見る。

 これから起きるのは、化物クラスの魔法少女の殺し合い。

 血を流し、肉を斬る戦いだ。

 読んでくれてありがとうございます。

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