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TS魔法少女の二度目の復讐  作者: グレンリアスター
第一章 魔法少女の兄も魔法少女
37/86

《煉獄》2

「クソが!!」


 悪態を吐き捨てる蓮。

 彼は炎を纏った大太刀を素早く振るい、怒涛の連撃を放つ。

 だがその連撃を、《煉獄》は大剣で防ぎ、紙一重で躱す。

 完璧な防御と回避。

 攻撃が一つも当たらず、苛立った蓮は眉間に皺を寄せる。


「アハハハ♪イライラしてるね♪《魔炎》♪」

「黙れ……それより聞きたいことがある」

「いつからこの学園都市にいたかって話かな?」

「!!なんで俺の聞きたいことが分かった」

「それは自分で考えて。まぁ、この学園都市にいつからいたかっていう質問は答えてあげる」


 不気味な微笑みを浮かべながら、《煉獄》は口を動かす。


「一か月前だよ♪」

「なっ!!」


 その言葉を聞いて、蓮は目を見開く。


「一か月前って……俺がこの学園都市に来る前じゃないか!」

「そうだよ♪」

「お前は俺を殺しにこの学園都市に来たんだよな?」

「そうだね♪」

「そんなの俺がこの学園都市に来るって知らなければ……!!」


 蓮は自分で言った言葉で、あることに気付く。


「まさかお前……()()()()()()()()()()()()

「せ~いか~い♪」


 笑みを深めながら、《煉獄》はパチパチと拍手する。


「そうか……俺の攻撃が全て防がれたり、俺の質問がなんなのか分かったのは……」

「そう。全て見えていたから。この()()のおかげで」


《煉獄》は人差し指を黒い右目に向ける。

 その右目が未来視の魔眼。

 蓮はガリッと歯噛みする。

 敵が強くなったことに、彼は更にイラつく。


「昔よりも面倒な女になりやがって」

「アンタを殺したいっていう私の気持ちが、右目にこの魔眼を宿らせたの♪……忘れないわ♪この顔につけた傷を♪」


《煉獄》は顔に刻まれた古い傷跡を指で撫でる。


「私の顔に傷を付けたあんたは許さない♪私を一度、殺したあんたは許さない♪だ・か・ら……殺すね♪あんたを♪」


 瞳を怪しく光らせた《煉獄》は大剣を上段に構えた。

 すると大剣から赤黒い炎の竜の頭が現れる。

 それも一つや二つではない。

 五十以上。


「私の炎で焼き殺してあげる♪」


《煉獄》は大剣を振り下ろす。

 無数の炎竜の頭が、一斉に蓮に襲い掛かる。


「クソったれが!!」


 蓮は背中から炎の翼を生やし、空を飛ぶ。

 そんな彼を無数の炎竜の頭は追いかける。


「これでも喰らえ!!」


 蓮は炎を纏わせた大太刀を素早く振るった。

 刃から炎の斬撃が飛び、無数の炎竜の頭を切り裂く。

 切り裂かれた炎竜の頭は爆発し、爆炎が舞い上がった。

 その時、


「見えてたよ♪」


 蓮の背後から声が聞こえた。

 慌てて彼は振り返る。

 その直後、赤黒い炎の斬撃が蓮の身体に直撃。

 斬撃を放ったのは他でもない。

 赤黒い炎の翼を生やした《煉獄》だった。


「くっ!竜の頭は囮か!」


 肉が焼ける痛みと肉が斬られる痛みが、蓮を襲う。

 血肉が焼けた臭いが、蓮の鼻を刺激する。


「炎よ、癒せ!」


 蓮がそう叫ぶと、傷口から赤い炎が噴き出す。

 赤い炎は、焼け斬られた傷を塞ぐ。

 完全に傷を癒した蓮は、己の身体に炎を纏わせる。


「未来が見えるなら……未来が見えても意味のない速さで刀を振るえばいいだけだ!!」


 赤い炎の力で己を強化した蓮は、身体を高速回転させる。

 そして遠心力を宿らせた神速の剣撃を、《煉獄》の身体に叩きつける。

 防御も回避もできない一撃。

 それを受けた《煉獄》の鎧に、大きな斬撃の跡ができる。

 そしてその跡から血が噴き出した。


(よし!これで!)


 確実に殺した。

 蓮がそう思った時、彼の顔に赤黒い炎を纏った拳が叩きつけられた。

 重く、熱い一撃を受けた蓮は地面に勢いよく落下。

 蓮は地面に激突し、砂煙が舞い上がる。


「ガハッ!」


 口から血を吐く蓮。

 そんな彼の目の前にゆっくりと着地した《煉獄》は、怪訝な表情を浮かべていた。


「どうしたの?今の一撃は確実に私を殺せるものだった。なのに私は生きている。軽傷ではないけど、致命傷でもない。手加減したつもり?」


 そう言いながら蓮のことを見下ろしていた《煉獄》は、あることに気付く。


「その腕輪……ああ、なるほどそういうことね♪」


 蓮の右手首につけられた腕輪を見て、《煉獄》は嘲るように笑う。


「その腕輪型魔装には人を殺せないようにする力が宿っているのね♪アハハ♪」

「クソ…が……」

「せっかく私を殺せたのに殺せないなんて……残念な魔法少女♪」


《煉獄》は蓮の腹を強く踏み、体重をかけた。

 ボキボキと骨が折れる音が鳴り、蓮の口から血が流れ出る。

 口の中に血の味が広がり、彼の意識が朦朧としていく。


「それにしてもまだ()()〈マジックアイテム〉を使っているのね♪自分の〈マジックアイテム〉を使えば勝てたのに♪」

「うる…せぇ!」

「そういえばあんたの妹は、勝てもしないのに私と戦ったわね♪まったくなにがしたかったのか♪本当……バカな魔法少女だったわ♪」


 蓮はギリッと歯噛みしながら、眉間に皺を寄せた。

 絶対に殺してやるという殺意と憎悪が、彼の中から湧き上がる。

 鬼の形相で睨んでくる蓮に、《煉獄》は顔を近づける。


「アハハ♪いい顔だね~♪本当に♪」


 目を細めながら笑う《煉獄》は、赤黒い炎を纏った大剣を構える。


「家族の仇をとれないまま……死んで♪」


《煉獄》は大剣を振り下ろそうとした。

 その時、なにかに気付いた《煉獄》は顔をずらす。

 次の瞬間、彼女の顔の横を風を纏った白い矢が通り過ぎた。

 僅かに矢に掠った《煉獄》の頬に、小さな傷ができ、血が流れる。


「なにするの?」


 怒気を宿した声を発し、矢を放った者を睨む《煉獄》。

 矢を放ったのは、白いドレスアーマーを纏った白髪の魔法少女—――白雪百合だった。


「その人は私の最愛の人なの。殺させないわ」


 弓矢を構えながら、《煉獄》を睨む百合。

 そんな彼女を見て、《煉獄》は鼻で笑う。


「ハッ♪見たところ百年も生きていない小娘じゃない♪そんな小娘が一対一で私に勝てるとでも?」

「一対一じゃない。二対一だよ」


 別の少女の声が聞こえた直後、大きな光の槍が《煉獄》に向かって飛来する。

《煉獄》は素早くその場から離れて、大きな光槍を躱す。

 光の槍を放ったのは、白と黒のローブを羽織った緑髪の少女—――魔森エイミーだった。


 エイミーは鋭い目つきで、《煉獄》を睨む。


「こっから先は……」

「私達が相手よ」

 読んでくれてありがとうございます。

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