表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS魔法少女の二度目の復讐  作者: グレンリアスター
第一章 魔法少女の兄も魔法少女
33/86

《白雪姫》10

 魔法少女育成学園『三日月』の学園長室。

 魔神教団の魔法少女達を捕まえた後、蓮達は学園長に分かったことを報告していた。


「—――という感じで、《煉獄》は学園長を狙っているわけではないようです」

「うむ。ご苦労」


 蓮達の報告を聞いた学園長―――皇覇満月は手を組みながら思案する。


「それにしても……儂ではない……か。ならなぜ《煉獄》はこの学園都市に来たのじゃろうな」

「あの……この浮遊学園都市を落すのが目的ではないでしょうか。そうすれば多くの人が死にますし」


 エイミーは自分なりの答えを出した。

 だが彼女の答えを蓮はすぐに否定する。


「それは絶対にないな」

「どうして?」

「《煉獄》がもし学園都市を落とすのが目的なら、もうやっている」

「じゃあ……なにが目的なの?」


 蓮は顎に手を当てて、黙り込む。

 数秒後、彼はゆっくりと口を動かす。


「……この学園都市に殺したい奴がいるんじゃないか?例えば……魔神教団の障害になるやつとか」

「障害……学園長じゃなくて?」

「奴は初代魔法少女達を殺せる手段を持っている。だから学園長とは別の強い魔法少女か……あるいは厄介な魔法少女がこの学園都市にいるんじゃないか?」


 蓮の言葉を聞いた満月は、真剣な表情で声を出す。


「一人……心当たりがあるのじゃ」

「!誰です?」

「ふむ……それは……」


 満月が喋ろうとした時、学園長室の扉からノックの音が聞こえた。


「失礼するよ」


 扉を開けて、学園長室に入ってきたのは……黒い髪を伸ばした少年だった。

 タレ目で顔が小さく、少し幼く見える。

 まさに和風美少年という言葉に相応しい。

 

月夜(つきよ)♡ようやく来たのじゃあ♡」


 満月は座布団から立ち上がり、少年に駆け寄り抱き付く。

 少年の頬に頬擦りする満月はまるで猫のよう。


「あれって……」

「学園長の旦那さんだね」


 初めて満月の旦那―――皇覇月夜を見て、蓮とエイミーは少し驚く。


「……若いな。俺と同い年ぐらいに見えるな」

「でも数百年以上は生きているんだよね」

「確かそうだったな。やっぱり学園長、魔法少女の力で旦那の歳を取らせないようにしているな」


 ヒソヒソと蓮とエイミーが話していると、


「やぁ……君が魔森蓮くんだね?会えて嬉しいよ」


 月夜は蓮に近付いた。


「俺を知ってるんですか?」

「うん。男なのに魔法少女になれる子でしょ?この学園都市では有名だよ。僕は皇覇月夜。よろしくね」


 笑顔を浮かべながら、手を差しだす月夜。

 いい人そうだなと思いながら、蓮は彼の手を握る。


「君がこの学園都市に来てくれて嬉しいよ。ここは女性ばかりで」

「あはは……そう……ですよね」

「それにしても君から僕と同じ匂いがするよ」


 月夜は蓮の隣にいるエイミーと百合に視線を向けた。

 すると同情した顔で彼は蓮の肩に手を置く。


「……苦労してるね」

「……分るんですか?」

「うん。だって……独占欲と束縛が強い妻がいるから」


 死んだ魚のような目をする月夜。

 そんな彼を見て蓮は哀れに思い、泣きそうになる。


「月夜さん……今度、どこかで食事しましょうか。二人っきりで」

「本当かい!嬉しいな……男同士で食事なんて久しぶりだな~」


 心から嬉しそうに笑う月夜。

 彼の目は僅かに潤んでいた。

 それを見て蓮は口に手を当てて、泣くのを必死に我慢する。

 そして思った。


 ヤンデレの女に愛された男は……死ぬまで苦労するのだと。

 いや……恐らく死なせてももらえないだろう。


「さて、お主たち……そろそろ帰るのじゃ。儂らはこれからイチャイチャするからのう♡」

「ハハハ、満月……昨日もたくさんやったから今日ぐらい休みにしない?」

「なにを言う。コレカラモズート、イチャイチャスルノジャ♡」


 瞳を真っ黒に染めながら、笑みを浮かべる満月。

 そんな彼女に抱きつかれている月夜は、蓮を見つめた。


 助けて。


 月夜の目はそう叫んでいた。

 それに対し蓮は、


「失礼しました」


 エイミーと百合を連れて学園長室から出て行った。


(すみません、月夜さん。ヤンデレの女を怒らせたらどうなるか知っているので、助けられません)


 心の中で謝罪しながら、蓮は学園長室の扉をゆっくり閉じた。

 読んでくれてありがとうございます。

 気に入ったらブックマークとポイントをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ