《白雪姫》9
「どうやら私の勝ちみたいね」
「いいえ、私の方が多く倒しました!」
微笑みを浮かべる白雪百合。
そんな彼女に顔を近づけて睨む魔森エイミー。
二人の周りには多くの魔神教団の魔法少女達が地面に倒れていた。
「フフフ。負けを認めたくないからって嘘はダメよ」
「違います!」
「私は二十五人倒したわ」
「私は二十六人倒しました!」
「ごめんなさい。二十七人だったわ」
「すみません、間違えました。本当は二十八人、倒しました」
「フフフ」
「む~!」
美しく笑う白き少女と、頬を膨らませて眉間に皺を寄せる緑髪の少女。
二人がバチバチと火花を散らしていた時、彼女達の近くで大きな爆発が発生した。
大きな爆発音が鳴り響き、爆風が吹く。
「!?今のは!」
「蓮兄さん!?」
慌てて二人は爆発が発生した場所に視線を向ける。
視線を向けた先では、爆炎が舞い上がっていた。
炎の熱が強すぎるあまり、近づけば無事ではすまないだろう。
「蓮兄さん!!」
エイミーは爆炎の中に飛び込もうとした。
そんな彼女の手を、百合は掴む。
「だめよ、行っちゃあ」
「でも!蓮兄さんが!!」
「大丈夫。あれぐらいであの人は死なない」
白き少女が美しい声でそう言った時、爆炎の中から赤い甲冑を纏った少女が現れる。
魔森蓮だ。
「蓮兄さん!」
エイミーはホッと安堵した。
だが彼女はすぐに顔を歪め、口に手を当てる。
「そんな……」
エイミーの瞳に映ったのは、左腕を肩から失った蓮だった。
彼の左半身は酷い火傷を負っており、肉と血が焼けたような臭いがエイミーの鼻を刺激する。
絶叫を上げたくなるような痛みを感じているはずなのに、蓮は顔色一つ変えていなかった。
「チッ。ミスった。自爆するとは思わなかった」
舌打ちした蓮は右手に持っていた大太刀を落とし、片膝を地面に付ける。
「蓮兄さん!」
エイミーは泣きそうな顔で、蓮に駆け寄る。
「酷い怪我……早く病院に!」
「問題ない」
「問題大ありだよ!なんでそんな平気そうな顔で言うの!?」
「エイミー……本当に大丈夫だから」
蓮は微笑みながら、エイミーの頭を右手で撫でた。
酷い怪我を負っているのに妹を安心させようとする兄の優しさに、エイミーは我慢できず涙を零す。
「でも……蓮兄さんの腕が……腕が!」
「大丈夫。すぐ治せる。炎よ、癒せ」
蓮は赤い炎を身体に纏わせた。
すると左半身に負った酷い火傷が消えていく。
左肩から炎が噴射し、その炎は腕の形へと変わる。
そして炎の腕はやがて人間の腕へと変化した。
左腕を再生させた蓮を見て、エイミーは目を見開く。
「腕が!」
「【鳳凰】はどんな怪我だろうと、病だろうと完治させる。そして失った手足や目などを再生させることもできる。だから安心しろ」
「よ……よかった……」
蓮の言葉を聞いて安心したエイミーは尻もちをつき、ハァーと息を吐いた。
「もう……心配したんだから~」
「すまんすまん」
笑顔を浮かべながら謝る蓮。
そんな彼の右手が僅かに震えているのを、白雪百合は見逃さなかった。
「本当……優しい人ね」
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