《白雪姫》8
蓮が火月と激しい戦闘を繰り広げている中、エイミーと百合は魔神教団の魔法少女達を次々と倒していった。
白いドレスアーマーを纏っている白雪百合は、三本の白い矢を手の平から生み出す。
そして弓に三本の矢を装填し、放つ。
三本の矢は三人の敵に正確に直撃。
矢を受けた三人の魔法少女は地面に倒れ、眠りについた。
「私の〈マジックアイテム〉は【眠り姫】。風を操り、敵を眠らせるのよ」
素早く矢を放ち、敵を次々と眠らせていく《白雪姫》。
そんな彼女の背後で、エイミーはいくつもの魔法を発動する。
「ハァ!!」
エイミーは両手を前に突き出した。
すると空中にいくつもの魔法陣が現れる。
魔法陣は赤、青、黄色の三つに分かれていた。
赤い魔法陣から炎の球が放たれ、青い魔法陣から氷柱が放たれ、黄色の魔法陣から石の刃が放たれる。
エイミーの魔法攻撃が魔神教団の者達を襲う。
炎の球は敵を燃やし、氷柱は敵を凍結させ、石の刃は敵の肉を切り裂く。
敵が傷ついていくのを見ていたエイミーは、辛そうに顔を歪める。
「私が頑張らなきゃ!蓮兄さんは私が支えるの!!」
エイミーは顔を左右に振り、覚悟を宿した目で敵を睨む。
愛する兄を守るために、一人の妹は魔法を敵に向かって放つ。
そんな彼女に斧を持った魔神教団の魔法少女が襲い掛かる。
「死ねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
叫び声を上げながら、魔神教団の信者は斧を振り下ろす。
斧の刃がエイミーの頭をかち割ろうとした。
その時、風を纏った矢が斧を弾き飛ばす。
直後、別の白い矢が魔神教団の魔法少女の型に突き刺さる。
矢を受けた斧使いの魔法少女は眠りにつき、地面に倒れた。
「危なかったわね」
「す、すみません!」
「気にしないで。未来の義妹を守るのがお姉さんの役目だから」
美しい声でとんでもないことを口にする白雪百合。
エイミーは額に青筋を浮かべ、頬を引き攣らせる。
「誰がお姉さんですか、誰が」
地獄の底から響いたかのような低い声を出すエイミー。
白き少女は魅惑の微笑みを浮かべる。
彼女の微笑みを見て、一瞬エイミーはドキッと胸を高鳴らせた。
「あら。私は将来あなたのお義姉さんになる人よ?」
「絶対に認めませんから!蓮兄さんを一緒に監視して管理するのは認めましたが、結婚は認めません!」
「私は蓮さんを幸せにするわ」
「み・と・め・ま・せ・ん!」
「なら……私がこの魔神教団の人達をあなたより多く倒したら、認めてくれるかしら?」
「絶対にあなたより多く倒します!」
いくつもの魔法攻撃を放ち、次々と敵を倒すエイミー。
そんな彼女に負けないと、百合は矢を高速連射した。
<><><><>
(あっちは大丈夫そうだな)
大太刀を振るいながらエイミーと百合を見ていた蓮は、火月との戦いに集中する。
彼が放つ剣撃を、ギリギリ反応して火月は盾で防ぐ。
金属音が鳴り響き、火花が飛び散る。
「ヒヒヒヒヒヒヒ!!」
不気味な笑い声を上げながら、火月は盾を振るう。
重い盾の一撃を蓮は大太刀で防いだ。
直後、爆発が発生し、蓮の皮膚を焼く。
「この程度の爆発で俺は倒せねぇよ」
蓮は己の身体を赤い炎で包んだ。
赤い炎は焼かれた蓮の皮膚を一瞬で癒す。
傷を負ってもすぐに完治させる《魔炎》。
彼は火月に一瞬で距離を詰め、大太刀を振るう。
「無駄!」
火月は大盾で蓮の剣撃を防いだ。
刹那、大盾は真っ二つに切断された。
「はぁ?」
なにが起きたか分からず、呆然とする火月。
そんな彼女の腹に、蓮は重い蹴りを叩き込む。
ドゴッ!という大きな打撃音が鳴り、火月は口から血を吐く。
「ガハッ!なん…で……」
「簡単な話だ。同じ場所に剣撃を何度も叩き込んで斬った。どんな硬いものでも同じ場所にダメージを喰らえばいつか壊れる」
「ヒヒヒ。やら……れたね……だけど、私たちの役目はちゃんと……果たせた」
「なに?」
眉を顰める蓮。
そんな彼を見て、火月は「ヒヒヒ」と嘲け笑う。
「まだ分からないの?私たちの役目は時間を稼ぐこと。あなた達が私たちと戦っている間に、《煉獄》様はもうここから離れた」
「!!クソ!まさか学園長のところに!!」
「ヒヒヒ。あの女はいつでも殺せるわ。《煉獄》様の狙いは皇覇満月ではないわ」
「……どういうことだ?」
「教えるわけないでしょ。知りたければ自分で探しなさい」
そう言った火月の身体が、突然光り出す。
「まさか自爆!?」
「せいぜい気を付ける事ね」
次の瞬間、火月の身体から大きな爆発が発生。
その爆発に蓮は巻き込まれた。
読んでくれてありがとうございます。
気に入ったらブックマークとポイントをお願いします。




