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TS魔法少女の二度目の復讐  作者: グレンリアスター
第一章 魔法少女の兄も魔法少女
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《白雪姫》6

 浮遊学園都市『大和』の『満月通り』。

 そこは美味しい料理店やCDショップなどの娯楽がある商店街。

 今日は祝日なためか、多くの女性たちが商店街で楽しんでいた。

 昼間から酒を飲む者。

 カフェで読書を楽しむ者。

 友達と一緒に洋服を選ぶ者。

 多くの女性と少女達が日々の疲れを癒すために、休日を満喫していた。


 そんな商店街にある小さな本屋の前で、一人の少年()二人の少女(エイミーと百合)が立っていた。


「ここでいいんですね?白雪さん」

「ええ。そうよ」


 蓮の質問に、頷いて答える白雪。


「よし。じゃあさっきも言った通り、俺が《煉獄》と戦うから二人は俺のサポートをしてくれ」

「ええ」

「わ、分かった」


 力強く頷く白雪と、少し頼りない声で返事をするエイミー。

 彼女の手は僅かに震えている。

 それを見た蓮はエイミーの頭を撫でながら、優しく言う。


「お前まで戦う必要はないんだぞ?逃げたって誰も責めない」

「……いやだよ。もう蓮兄さんだけ戦わすのは」

「エイミー……」

「それに私は蓮兄さんを支えると決めたの。もう一人で戦わせない」


 エイミーのルビーの如く赤い瞳には、強い決意が宿っていた。

 なにを言っても無駄。

 そう理解した蓮はハァとため息を吐く。

 今、彼の中には二つの感情が宿っていた。

 一つは妹が立派になって嬉しいという感情。

 そしてもう一つはやはり妹には、危険な目に遭ってほしくないという心配の感情。


 二つの感情が混ざり合い、蓮は複雑な気持ちを抱いていた。


 妹の成長を喜ぶべきか、それとも自分と一緒に危険な仕事をしようとする妹を怒るべきか……彼には分からなかった。


「分かった。だけど危険だと思ったらすぐに撤退しろ。いいな?」

「うん!」

「よし……行くぞ」


 蓮は本屋のドアノブを掴もうとした。

 その時、蓮は慌ててエイミーと白雪を両腕で抱え、ドアから距離を取る。

 直後、ドアが大きな音を立てて爆発。

 爆風が周囲の物を吹き飛ばし、黒い煙が発生する。

 周囲にいた人々は悲鳴を上げて、逃げ出す。


「いきなりかよ!」


 エイミーと百合を離した蓮は、自分の胸から赤い大太刀―――【鳳凰】を顕現させ、引き抜く。

 前髪で隠れていた目を細めながら警戒している彼の耳に、少女の声が響く。


「久しぶりね~。《魔炎》」


 爆炎の中から現れたのは、大きな円状の盾を持つ黒髪の少女。

 彼女は口元を三日月に歪め、ナイフの如く鋭い目で蓮を睨む。


「お前は……《煉獄》の直属の部下、《爆破》か!」

「ええ、そうよ。あなたにぶった斬られた《爆破》の火月(ひづき)よ。ヒヒヒ」

「お前も生きていたのか」


 蓮は眉間に皺を寄せながら、目の前にいる魔神教団の魔法少女を睨む。


(最悪。こいつも生きていたのか……クソが)


 殺したはずの奴が目の前で生きていることに。

 そして敵を殺しきれていなかった自分の不甲斐なさに。

 蓮はマグマの如く熱い怒りを覚えた。

 だが彼はフゥ―と長い息を吐き、怒りを鎮める。


(落ち着け。まずは目の前にいるこいつをどうするか考えろ)


 今の蓮は【非殺の腕輪】のせいで人を殺せない。

 ならどうするべきか?

 そんなものは決まっている。


(死なない程度に重傷を負わせて、無力化する)


 蓮は唱える。


「変身!」


 次の瞬間、蓮の身体が赤く燃えあがる。

 炎が消えると、蓮は赤き甲冑を纏った魔法少女へと姿を変えていた。

 彼は大太刀を構え、刃に炎を纏わせる。


「行くぞ、《爆破》。もう一度、殺してやる」

「ヒヒヒ。あの時とは違うわよ」

 

 不気味な笑い声を漏らした火月は、指をパチンと鳴らした。

 するとなにもないところから、武器を持った魔法少女達が現れる。

 その数……百人。


「なるほど……数を揃えたから勝てるって思っているわけか……舐めるなよ、クソアマ」


 全てを容赦なく斬り裂く刃のような蓮の殺意。

 その殺意に気圧された火月は一歩後ろに下がる。

 彼女の額から汗が流れた。


「百人程度で俺は死なねぇ。俺を倒したければ……十万人連れて来い!!」


 覇気が宿った蓮の大声に、百人の魔神教団の魔法少女は怯えた表情を浮かべた。

 そんな彼女達に火月は一喝する。


「怯むな!数はこっちのほうが上だ!」


 火月の言葉を聞いた魔法少女達は武器を構えた。

 その時、光の球と風を纏った白い矢が魔神教団の魔法少女達を吹き飛ばす。

 光の球と白い矢を放ったのは、二人の魔法少女。

 一人は黒と白のローブを羽織り、両手の全ての指に黄金の指輪をはめたエイミー。

 そしてもう一人は白いドレスアーマーを纏い、白い弓を持つ百合。


「私達も!」

「いるのよね」


 火月は顔を歪めて、ガリっと歯噛みする。

 イラつく彼女を蓮は睨みながら、告げる。


「全員、潰してやるよ。イカレ信者共」

 読んでくれてありがとうございます。

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