《白雪姫》2
「白雪さん……いつからこの部屋に?」
いつの間にか部屋にいた白雪百合に、蓮は驚いていた。
百合は唇に人差し指を当てて、「な・い・しょ♪」と呟く。
「そんなことより《煉獄》の居場所を知りたいのよね?なら私に任せてほしいわ」
「……確かに白雪さんなら魔神教団の者達から情報を引き出せますね」
「そういうこと」
「……なにが望みですか?」
蓮は一筋の汗を流しながら、警戒する。
そんな彼に百合は近づく。
「なにも望まないわ。ただ……副会長としてこの学園都市を守りたいだけよ」
百合は白い手で蓮の頬を優しく撫でる。
ゾクッと寒気を感じながら、蓮は唾を呑み込む。
「副会長?」
「そ。私は魔法少女育成学園『三日月』の副会長。学園長と蓮さんを除けば、私はこの学園都市で二番目に強いの」
「!!」
「そこらへんの百年生きた魔法少女より……私の方が強い」
蓮の頬から手を離した百合は微笑みを浮かべる。
「蓮さん。私……あなたを手に入れるために強くなったの。褒めてほしいわ」
「……俺を逃がさないように……ですか?」
「そうよ。まぁ……とにかく。次ハ逃ゲラレルト思ワナイデネ?」
白い瞳を真っ黒に染める白雪百合。
彼女の瞳を見て、蓮は乾いた笑みを浮かべることしかできなかった。
「さぁ……とりあえず捕まえた魔神教団の人に話を聞きましょうか」
<><><><>
魔法少女育成学園『三日月』の地下にある白い部屋。
その部屋には両脚と両腕を失っている少女が、椅子に座っている。
そんな彼女を別の部屋のカメラモニターで学園長と蓮、エイミーと百合は見ていた。
「あの人って……」
「ああ。俺が両腕両脚を斬り飛ばした魔神教団の魔法少女だ」
蓮は前髪で隠れていた目を鋭くし、カメラモニターを睨みつけた。
そんな彼の耳を、白き少女はフゥと息を吹く。
ビクッと身体を震わせた蓮は、慌てて百合から距離を取る。
「ちょ、白雪さん!?」
「落ち着いて、蓮さん。魔神教団が憎いのは分かっているけど、大切な情報を持っている人なのよ」
「分かってますよ。……アレを使うんですか?」
少し心配そうな声で、蓮は尋ねた。
彼の心配が嬉しかったのか、百合は微笑みを浮かべる。
「ええ。情報を手に入れるためだもの」
「でも……あなたはあの力を嫌っていたじゃないですか」
「ええ……嫌いよ。でも……あなたのためならこの力を使うわ」
そう言って百合は眼帯に覆われた左目に手を当てる。
「この目はあなたに捧げたいと思っているし」
「それは……ちょっと」
「ふふふ。じゃあ……行ってくる」
百合は部屋から出て行った。
数分後、両腕両脚を失っている少女がいる白い部屋に、百合が入ってくるところがカメラモニターに映し出される。
「蓮兄さん、あの力ってなに?」
「見てれば分かる」
百合は魔神教団の少女に近付く。
『こんにちわ。私は白雪百合。ちょっと教えてほしいことがあるのだけど』
『なにも話すつもりはないわ。失せなさい』
『そんなこと言わないで。少し聞きたいことがあるの、ね?お願い』
『……なによ、話って?』
白雪百合を睨みながら、尋ねる魔神教団の少女。
そんな彼女に向かって、百合は微笑みを浮かべる。
『《煉獄》はどこにいるのかしら?』
『……教えるわけないでしょ?』
『どうしても?』
『どうしてもよ』
『そう。なら……仕方ないわね』
百合は左目につけていた眼帯を外す。
彼女の左目には黄金に輝く瞳が宿っており、その瞳を見た魔神教団の少女はとろけた顔を浮かべる。
『質問に答えてくれる?』
『……ええ、分かったわ』
魔神教団の少女は白雪百合の質問に次々と答え始めた。
それをカメラモニター越しで見ていたエイミーは、なにが起きているか分からず目を大きく見開く。
「嘘……なんんで急に?」
エイミーの疑問に、蓮は答える。
「白雪さんの恐ろしいところは、美しすぎること」
「美しすぎる?」
「そう。声も、顔も、身体も全てが美しく……男だろうと女だろうと魅了する。そんな彼女の左目には魅了の魔眼が宿っている」
「魔眼って……〈マジックアイテム〉と同じく、選ばれた少女に宿る特殊な目だよね?」
「そう。ただでさえ誰もを魅了する美しさを持っているのに、さらに見た者を魅了する魔眼を持っている」
蓮は心配そうな表情で、カメラモニターに映る百合を見つめる。
「ついた異名は《白雪姫》。美しすぎる……哀れな魔法少女だ」
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