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TS魔法少女の二度目の復讐  作者: グレンリアスター
第一章 魔法少女の兄も魔法少女
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兄の相棒

「ん?」


 気が付くと、蓮は広い座敷にいた。

 天井には巨大な炎の鳥の絵が描かれており、開いた障子から見えるのは日本庭園。

 白砂の庭に植えられた松の木や、緑色に濁った池はとても美しく、風情を感じさせる。

 そんな庭園を見ることができる座敷で、蓮は座布団に座っていた。


「こうしてお話しするのは久しぶりですね、蓮様」


 彼の眼前には、炎の如く赤い髪を伸ばした少女がいた。

 彼女は真っ赤な十二単(じゅうにひとえ)を着ており、髪には鈴が付いた(かんざし)をつけている。

 整った顔立ちに、紅玉の如く赤い瞳。

 唇には赤い小町紅(口紅)が塗られている。

 そしてまつげが長く、耳には折り鶴の髪飾りをつけていた。

 和風の絶世の美姫。

 その言葉に相応しいくらい美しかった。


「ああ。こうして話すのは数か月ぶりだな。【鳳凰】」


 赤き美姫―――【鳳凰】は微笑みながら、「ええ」と頷く。


「少しお話がしたくて、あなた様をここに呼びました」

「そっか……精神世界に俺を呼んだってことはとても重要な事なんだろう?」


〈マジックアイテム〉には意思が―――魂が宿っている。

 辛い、楽しい、悲しい。そんな人が持つ当たり前の感情を、〈マジックアイテム〉にもあるのだ。

 そして〈マジックアイテム〉は自分の所持者を精神世界という場所に連れて行き、話すことができる。


「いいえ。重要な話はありません。ただ……蓮様とお話がしたかったのです」

「例えば?」

「蓮様は多くの女性に愛されていますね~とか」

「やめてくれ」


 蓮は頭を両手で抱えながら、悶える。


「俺のことを好きな奴らは全員、ヤンデレなんだぞ!しかも二人は妹だぞ!?」

「でも血は繋がっていないので問題はありませんよ?」

「血が繋がっていなくとも、妹だぞ!?手を出すわけにはいかないだろう」

「では白雪様を……」

「絶対に無理」


 真顔ではっきりと言う蓮。

 前髪で隠れていた彼の目は、恐怖で揺れていた。


「あの人が俺になにしたか分かっているだろう!?」

「まぁ……はい。で、でもそれぐらい愛しているってことですし」

「あの人の愛は怖いんだよ、マジで」


 自分を抱き締めて、蓮はガタガタと身体を震わせた。

 そんな彼を見て、【鳳凰】は苦笑する。


「で、では大石修様はどうです?あの子はヤンデレではないようですし」

「いや……妹の友達に手を出すのはちょっと……それに」

「それに?」

「俺が幸せになる権利はない」


 蓮は目を細めながら、自分の手を見つめる。

 彼の瞳には、手が血で赤く染まっているように映っていた。


「俺は……多くの人を殺した。必要な殺しだったとはいえ……人殺しは人殺しだ。それに……」


 罪悪感と自責の念に満ちた目で、蓮は目の前にいる少女を見つめる。


「俺は……お前を人殺しの道具として使っている。本来、お前は人を殺すのではなく、人を助ける〈マジックアイテム〉なのに」

「……」

「こんな最低野郎に幸せになる資格はない」


 強く拳を握る蓮。

 そんな彼の頬を、赤き美姫は優しく両手で触れる。


「そんなことはありません。あなたは幸せになる資格があります」

「そんなわけ」

「あなたは充分、苦しみました。誰かのために人を斬り、人を救ってきた。自分の心を犠牲にして、多くの人を救った。そんなあなたが幸せになってはいけないなんてことありません」

「【鳳凰】……」

「それに人殺しの道具になるのを望んだのはこの私です」


 紅玉の如く赤い目を細めて、【鳳凰】は言葉を続ける。


「悪人を切り裂く刃になりたい。そんな私の願いをあなたは叶えただけです。私はあなたのことを一度も恨んでいません。私があなたに抱いているのは……感謝です」

「感謝?」

「はい。あなたは死にかけた私を救ってくれた。生まれ変わらせてくれた。そして……()()()()()()()()()()()。あなたには感謝しかないのです」

「そうか……」


【鳳凰】の言葉を聞いた蓮は、小さく頬を緩めた。


「その言葉を聞いて、少し救われたよ」

「それはよかったです」


【鳳凰】がフフフと微笑んだ時、蓮の意識が白く染まり始めた。


「時間のようですね。蓮様……またお話ししましょう」

「ああ。これからもよろしくな、相棒」

「はい」

 読んでくれてありがとうございます。

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