妹は兄を監視して、管理したい1
「どうしてこうなった」
学生寮に戻った蓮は、ソファーに座って項垂れる。
今、彼は……とても危ないところに立っている状態にいた。
(まさかあのエイミーが俺を監視して、管理するって言うとは思わなかったな)
蓮は自分の右手首に嵌められた白い腕輪に視線を向ける。
【非殺の腕輪】。
人を殺すことができなくなる腕輪型魔装。
(この腕輪には恐らく居場所を特定する機能も付いているはず……まったく、これじゃあ一人で行動するのは無理だな)
単独行動ができなくなる。
それは蓮にとって大きなデメリット。
彼は眉間に皺を寄せて、これからのことを考える。
(エイミーを巻き込みたくなかったから、一人で魔神教団の奴らを排除しようと思っていたが……この腕輪をつけている限り、それは不可能。エイミーは俺が傷つかないように先回りする可能性が高い。なにより……)
蓮は白く美しい少女—――白雪百合を思い出す。
思い出した瞬間、彼は寒気に襲われた。
(あの人が俺を自由にさせないはず。これからは俺とエイミー、白雪さんの三人で動くことになるだろう。面倒だな)
蓮がガリガリと頭を掻きながら、ハァとため息を吐いた時、
「どうしたの、蓮兄さん?」
彼の視界に妹の顔が映り込んだ。
「あ…いや、なんでもな……ごめん、なんでもなくないわ」
蓮は真剣な表情を浮かべ、エイミーを見つめる。
「エイミー。約束を破ったことは謝る。だけどあの魔神教団を野放しにしちゃいけないんだ」
「……うん、そうだね。蓮兄さんの言いたいことはわかるよ。魔神教団の人達は世界の敵だと言われるぐらい危険な宗教団体だもんね」
「そうだ。あいつらは魔法少女を魔神化させて暴れさせたり、人の死体で気色悪いアートを作ったり、魔獣を操ったりしている。生きてちゃあいけない奴らなんだ」
「うん。きっと蓮兄さんが正しいと思う」
「そうか。分かってくれたか」
蓮はホッと胸を撫で下ろす。
「ならこの腕輪を外して―――」
「それは無理」
エイミーは少し怒気を宿した声ではっきりとそう言った。
瞳を真っ黒に染めて威圧を放つエイミー。
蓮は黙り込み、汗を流す。
「魔神教団は死ななくちゃあいけない。それはわかるよ。私だってエイナを魔神化させた魔神教団の人達を許すことはできない」
「だったら」
「でもあの人たちを殺して蓮兄さんが傷つくのは嫌だよ。もうこれ以上、蓮兄さんを傷つけさせない。絶対に。だからそのためにも蓮兄さんは監視して、管理しないと」
エイミーは蓮の左手に自分の手を近づけ、
ガチャ。
手錠をつけた。
蓮は自分の左手とエイミーの右手を繋げる手錠を見て、目を丸くする。
「なにこれ?」
「私じゃないと外すことができない特殊な手錠。寝る時はこれをつける」
「まさか毎日?」
「そうだけど?」
「ここまでするか!?」
蓮は思わず大声でツッコむ。
「ここまでする必要はないだろう!?」
「言ったでしょう?蓮兄さんを監視して、管理するって」
「いや……けど、これじゃあ夜にトイレ行くときはどうするんだよ」
「私もついていくよ」
「アホか!?どんな変態プレイだ!」
「とにかく寝るよ。蓮兄さん」
強引に蓮を引っ張って、エイミーはベットに連れ込む。
「おい、まさか一緒に寝るのか?」
「そうだよ。じゃないと寝れないでしょ」
「いや……それは流石に」
蓮はなんとか手錠を外してもらえる方法を考えた。
だがその時、エイミーは彼に顔を近づけて、威圧を放つ。
「蓮兄さんに拒否権はないの」
「……はい」
自分の無力さに、蓮は悲しくなった。
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