表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS魔法少女の二度目の復讐  作者: グレンリアスター
第一章 魔法少女の兄も魔法少女
18/86

謎の少女は兄の知り合い1

 午後十二時三十分。

 満月が浮かぶ暗い夜。

 学園都市にあるビルとビルの隙間を、二本の短剣を握り締めた魔法少女が走っていた。

 彼女は頭から血を流しており、顔は恐怖で歪んでいる。


「ハァ!ハァ!ハァ!」


 口から荒い息を漏らしながら走る魔法少女。

 そんな彼女を大太刀を肩に担いだ赤き魔法少女—――魔森蓮が追いかける。


「逃がすか」


 背中と足の裏から炎を噴射し、加速。

 蓮は魔神教団の魔法少女の頭上を飛び、進行方向に着地。

 行く手を阻まれた悪の魔法少女は足を止める。


「ま、《魔炎》!」

「逃がすと思うか?魔神教団のイカレ信者が」


 蓮は大太刀を構え、刃に炎を纏わせる。

 赤く燃える大太刀を見て、魔神教団の娘は「ヒッ!」と悲鳴を上げ、後退った。


「心配するな。殺しはしない。……抵抗しなければの話だが」

「こ、この私が!魔神教団の私が!抵抗しないと!?」


 ガタガタと歯を震わせながら、魔神教団の魔法少女は双剣を構える。

 蓮はフゥーと軽く息を吐いた後、目を細めた。


「そうか……なら死ね」


 蓮が炎を纏わせた大太刀で敵の心臓を突き刺そうとした。

 だがその時、風を纏った二本の白い矢が蓮の顔の横を通った。

 二本の矢は魔神教団の魔法少女の双剣を弾き飛ばす。


「今の矢は!」


 蓮が目を見開いた。

 その次の瞬間、魔神教団の魔法少女の周囲に、いくつもの光り輝く魔法陣が出現。

 無数の魔法陣から光の鎖が飛び出し、魔法少女の身体に巻き付く。


「これは……」

「私の魔法少女の力だよ。蓮兄さん」

「!!」


 聞き覚えのある少女の声。

 慌てて振り返った蓮は、一瞬言葉を失う。


(なんで……こいつが)


 彼の視線の先にいたのは、黒と白のローブを羽織った緑髪の少女。

 両手の全ての指には、六芒星が刻まれた黄金の指輪がはめられていた。

 王の如き存在感を放つ少女。

 その少女を蓮は知っている。


「エイミー」


 そう。

 蓮の目の前にいたのは彼の義妹―――魔森エイミーだった。

 エイミーは眉間に皺を寄せて、蓮を睨んでいる。

 彼女の瞳に悲しみと怒りが宿っていることに、蓮は気付く。


「お前……なんでここに?お前が眠ったのを確認して学生寮から出たんだぞ」

「寝たふりをしていたの。きっと蓮兄さんは私が眠っている隙に、魔神教団の人達を殺しに行くって」


 エイミーは蓮に歩み寄る。

 そして彼女は兄の手を握った。


「なんで……なんで約束を破るの?」

「……すまん」

「謝ってほしいんじゃない。理由を聞いているの」


 怒気を宿した静かな声で、エイミーはもう一度問う。


「なんで……約束を破るの?」


 蓮はゆっくりと目を閉じた後、口を動かす。


「こいつらは……魔神教団は殺さないといけない。例え……俺の心がすり減るとしても」

「……なんでそこまでするの?」

「こいつらが一人いるだけで何十人の罪なき人が死ぬ。残された者は涙を流す。そして残された者の中で力がある者は復讐のために生きる。……事実、俺もそうだった」


 蓮は思い出す。

 血塗れで倒れている少女の姿を。

 蓮は思い出す。

 復讐の炎を胸に宿らせ、多くの魔神教団の者達を屍に変えた過去の自分を。


「もうこれ以上、魔神教団の自由にはさせない。もう俺みたいなやつらは作らせない。絶対に……」


 蓮の決意の言葉。

 それを聞いたエイミーは俯く。


「……そっか。蓮兄さんはなにを言っても無駄なんだね」


 少女は消え入りそうな声で呟き、


「なら……もう私も手段は選ばない」


 白い腕輪を蓮の右手首に嵌めた。

 蓮は驚愕の表情を浮かべ、自分の右手首に嵌められた腕輪を見る。


「この腕輪型魔装……まさか!」

「【非殺(ひさつ)腕輪(うでわ)】。人を傷つけることはできても、人を殺すことはできない腕輪だよ」

「なんでこんなものをお前が!まさか作ったのか!?」

「違うよ。私は魔装を作る才能はないから。作ったのは……あの人だよ」


 エイミーは後ろに視線を向けた。

 視線を辿った蓮は大きく目を見開く。


「なんで……なんであんたが」


 蓮の赤い瞳に映ったのは、月の光に照らされた白い少女。

 純白の長い髪に、ホワイトサファイアの瞳。

 雪の如く白い肌に、オシャレな白い眼帯。

 そして白いドレスアーマーを纏っており、右手には白い弓が握られていた。


「久しぶりね。……蓮さん」


 微笑みを浮かべる純白の少女。

 幻想的な美しさを持つ彼女に、蓮は……怯えた表情を浮かべた。


「白雪……さん」

「もう……私のことは百合って呼んでって言ったでしょ?」






「私たち……友達なんだから♡」

 読んでくれてありがとうございます。

 気に入ったらブックマークとポイントをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ