表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS魔法少女の二度目の復讐  作者: グレンリアスター
第一章 魔法少女の兄も魔法少女
17/86

妹は謎の少女と出会う2

「私は白雪百合。よろしく」


 手を差しだす白髪の少女—――百合。

 エイミーは彼女の手を握り、「ど、どうも」と頭を下げた。


(それにしても美人な人だな~。今まで出会った女性の人で一番美しい)


 同じ女性であるエイミーでも見惚れてしまうぐらい、百合は美しかった。


「ねぇ、エイミーさん。よかったらこの後、そこでお茶にしない?」


 百合は細い人差し指を、近くにあった小さなカフェに向ける。


「ご、ごめんなさい。私……これからやらなくちゃいけないことがあるので」


 エイミーは申し訳なさそうにしながら断った。

 だが、


「いいから、いいから♪」


 百合はエイミーの手を掴み、カフェに向かう。


「え?いや…ちょ!」


 エイミーは手を振りほどこうとしたが、できなかった。

 百合の美しさに、抗う気力がまったく湧かなかったから。


<><><><>


 カフェに入った百合は、エイミーと一緒に青空がよく見えるテラスのテーブル席に座った。

 オシャレなメニュー表を見ながら、なにを頼もうか悩む百合。

 そんな彼女にエイミーは少し困惑しながら、尋ねる。


「あ、あの……私に何かようですか?」

「まぁ……そうね。あら、このパンケーキとハーブティーおいしそう。エイミーさんも一緒でいいかしら?奢るわ」

「い、いえそんな!」

「遠慮しないの。すみませ~ん!」


 百合は手を挙げて、店員を呼んだ。

 やってきた女性店員が「ご注文は決まりましたか?」と尋ねると、百合は澄んだ声で「パンケーキとハーブティーをお願いします」と注文する。

 顔も、声も、メニュー表に指を指す仕草も……どれもが芸術の如く美しかった。

 思わずエイミーは見惚れてしまう。

 店員が去った後、百合は手を組んでエイミーに視線を向ける。


「さて……一つ聞きたいんだけど、いいかしら?」

「な、なんですか?」

「あなたは……」




「いったい誰を殺そうとしていたの?」


 百合の言葉に、エイミーは息を呑んだ。

 百合はホワイトサファイアの如き白い右目を細める。


「あなたはさっき……誰かを殺そうとしていた。誰かを守るために。違うかしら?」

「……なんのことですか?」

「隠さなくてもいいわ。私にはわかる」


 エイミーは一筋の汗を額から流す。

 汗は彼女の頬を伝い、テーブルの上に落ちる。


「あなたは……この学園都市にいる魔神教団を殺そうとしていた。そうでしょ?」

「……」

「図星……みたいね」


 百合がクスッと微笑みを浮かべた時、女性店員がやってきた。

 店員は運んできたパンケーキとハーブティーが入ったカップを、エイミーと百合の前に置く。

 百合は爽やかな香りがするハーブティーを一口飲む。

 お茶の飲む仕草もまるで芸術の如く美しかった。


「あなたは……何者なんですか?」

「どこにでもいる魔法少女よ」


 百合はナイフで生クリームが乗った白いパンケーキを一口サイズに切り、フォークを刺す。

 そして小さな口にふわふわのパンケーキを運んだ。

 味わうように咀嚼して呑み込んだ後、ハンカチで口を拭く。


「教えてくれないかしら。なにがあったのかを?」

「……」


 エイミーは喋るつもりはなかった。

 兄のことを。

 なぜ魔神教団を殺そうとしているのかを。

 だがエイミーの口は……自然と動き出す。


「……兄を…助けたいんです」

「お兄さんを?」

「はい。兄は誰かを守るためなら……自分のような存在を作らせないためなら悪人を殺せるんです」

「……」

「分かっているんです。兄のやっていることは人殺しだけど、必要な事だと。兄が悪人を殺すたびに世の中は平和になっていく。だけど……同時に兄の心も擦り減っていくんです」


 エイミーはギュッと手を握り締めながら、顔を歪める。


「これ以上……兄の心を傷だらけにしたくないんです!」

「そう……辛かったわね」


 百合は優しい声でそう言い、エイミーの手を両手で包む。


「だけどあなたが悪人を殺していい理由にはならないわ」

「でも!」

「もしあなたが悪人を殺したと知ったら……余計にあなたのお兄さんは傷つくわ」

「それ…は……」

「本当にお兄さんを助けたいのなら……自分一人で背負い込むんじゃなく、誰かに頼りなさい」

「誰…かに?」

「そう。もし誰も頼れないなら……私を頼ってみたらどうかしら?」

「え?」

「私……こう見えて強いの。だからきっと役に立つわ」


 最初、エイミーは断ろうとした。

 出会ったばかりの人に頼るなど、普通に考えてできなかった。

 だがエイミーは目の前の少女に頼りたい、助けてもらいたいと思ってしまう。

 そしてなぜだが……彼女にならお願いしてもいいと思ってしまっていた。


「……お願いします。兄を……助けてください」

「えぇ……任せて」


 百合は微笑みながら、頷く。

 そんな彼女を見て、エイミーはこう思った。


 まるで……女神のようだと。

 読んでくれてありがとうございます。

 気に入ったらブックマークとポイントをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ