妹は謎の少女と出会う1
「よかったよエイナ。目が覚めて」
「本当ですよ。大きな怪我がなくてホッとしました」
エイナが目を覚ましたと聞いたクラスメイトの女子達が、お見舞いにやってきていた。
彼女達はエイナが目覚めたことに素直に喜ぶ。
「心配させてごめんね。でももう大丈夫」
「本当ですか?」
「うん!蓮兄の童貞を奪うまで死ねないもん!」
「あ、相変わらずですね」
クラスの女子達は苦笑し、エイナの親友である修は呆れてため息を吐く。
「エイナ……叶わないことは言わないんだよ」
「へぇ~なんで叶わないって決めつけるの?」
「兄と妹が付き合えるのは、フィクションだけだからだよ」
「先輩と後輩が付き合える可能性も低いと思うよ。特に修みたいな人は」
「言ってくれるね。ハハハ」
「そっちこそ。アハハハハ」
「「よし、表に出ようか」」
エイナと修は額同士をぶつけ、睨み合う。
そんな彼女達を少し離れたところから、蓮は微笑みながら眺めていた。
「嬉しそうだね。蓮兄さん」
エイミーは蓮の隣に立ち、彼と一緒にエイナ達に視線を向けていた。
「妹の元気な姿を見て、喜ばない兄はいない」
「そっか……蓮兄さん」
「ん?」
「魔神教団の信者達は殺さず、捕まえて」
「……それは学園長の命令か?」
「違う。私からのお願い」
エイミーの頼みを聞いて、蓮は「わかった」とは言えなかった。
「……善処はする」
「善処するんじゃなくて絶対にこれ以上、殺さないで。もしこれ以上、人を殺したら……」
エイミーは冷たい声を出す。
「私も魔神教団の信者を殺す」
「!お前……」
蓮は少し見開いた目でエイミーを見る。
エイミーは真剣な表情を浮かべており、本気で言っているのが蓮には分かった。
彼女の瞳には強い決意が宿っている。
「私は……蓮兄さんを一生支えると決めた。例え悪人の血で手が汚れているとしても」
「……」
「だけど……これ以上、蓮兄さんの心が傷つくのを黙って見ているつもりはない。例え悪人を殺すことで世の中が平和になっても……優しい蓮兄さんが傷つくなんて嫌だ」
「エイミー……」
「蓮兄さんが人を殺すぐらいなら……私が殺す」
それは兄の心を守る為の脅迫。
愛する兄をこれ以上、人殺しにさせないための妹の想い。
蓮はガリガリと頭を掻いた後、フゥ―と息を吐く。
「……分かったよ。これ以上は人を殺さない」
「約束だからね?」
「ああ……約束だ」
<><><><>
それからエイミーは病院を出て、街の中を歩いた。
(蓮兄さんは約束してくれたけど、誰かを守るためなら人を殺すかもしれない。なら……蓮兄さんが魔神教団の人を殺す前に、私がこの手で……)
蓮から貰った眼鏡型魔装をポケットから取り出す。
(これを使えば魔神教団を見つけることができて)
魔神教団の者達を見つけることができる眼鏡を、エイミーはかけようとした。
その時、
「キャア!?」
エイミーは少女とぶつかってしまう。
少女は尻もちをつき、エイミーは慌てて頭を下げた。
「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか!?」
「え、えぇ」
少女はゆっくりと立ち上がる。
その少女を見て、エイミーは目を見開く。
「綺麗……」
自然とエイミーの口からそんな言葉が出た。
彼女の瞳に映っていたのは、純白の少女。
雪の如く白い肌。
腰まで伸びた艶のある白い長髪。
ホワイトサファイアの如く輝いている白い右目。
左目につけたオシャレな白い眼帯。
そして肩出しの白いワンピース。
全てが白く、そして幻想的な魅力を持つ彼女はまるで雪の精霊のよう。
「こちらこそ、ごめんなさ……あら?あなた……魔森エイミーさん?」
「!私のことを知っているんですか?」
「知っているもなにも……男なのに魔法少女になれる魔森蓮さんの妹さんでしょ?知らないはずないわ」
「……あの、やっぱり私の兄って有名人ですか?」
「有名人よ。あ、ごめんなさい、自己紹介がまだだったわね」
白い少女は微笑みを浮かべながら、手を差し出す。
「私は白雪百合。よろしく」
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