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TS魔法少女の二度目の復讐  作者: グレンリアスター
第一章 魔法少女の兄も魔法少女
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《魔炎》4

 水篠マリの首をへし折った蓮は、冷たい声を吐く。


「お前程度の水で【鳳凰】の炎を……()()()()()を消せるわけねぇだろ」


 蓮は水篠マリの首から手を離そうとした。

 その時、


「流石は《魔炎》ですね。こうも簡単にこの子を殺すなんて」


 死んだはずの水篠マリの口が動いた。

 蓮は目を細め、額に青筋を浮かべる。


「……魔神教団がまた活動を始めたから、まさかと思ったが……生きていたか。イカレ教皇」

「えぇ……元気にやっていますよ。魔森蓮さん」


 口元を凶悪な笑みで歪めて、水篠マリは話を続ける。


「それにしても容赦がありませんね。女の子の手を切断するなんて」

「てめぇら魔神教団に慈悲を与えるつもりはない」

「相変わらず恐ろしい方ですね」


 クスクスと笑う水篠マリ。

 蓮は知っている。

 死んだ水篠マリを使って、喋っているのが……魔神教団のボスだと。


「《魔炎》さん。あなたは一度、私の組織を壊滅させました。そして……()()()()を手に入れて、私を殺しましたね?」

「それがなんだ?」

「私はアレを欲しています。だから……あなたを殺して、アレを奪います。そして……」



「あなたの大切なものを全て奪わせてもらいますよ」


 その言葉を聞いた瞬間、蓮は大太刀で水篠マリの死体を真っ二つに両断した。

 赤い血が彼の顔に飛び散る。


「その前に俺がまたお前を殺してやるよ。クソ教皇」


 大太刀を素早く振るい、刃に付着した血を払う。

 蓮の目はとても冷たく、しかし強い殺意の炎を宿していた。


「殺気を抑えぬか。《魔炎》」


 蓮の耳に少女の声が聞こえた。

 声が聞こえた方向に視線を向けると、そこにいたのは黒い振袖姿の黒髪少女—――皇覇満月だった。


「学園長」

「魔神教団の者を排除してくれたようじゃな。感謝するのじゃ」

「……仕事ですから」


 蓮は地面の上で眠っているエイナを両手で抱える。

 そんな彼の肩を、満月は優しく手を置いた。


「お主はよくやってくれた。だが……これ以上、人を殺すな」

「それは……できません。魔神教団のやつらは容赦なく殺さなくていけません。でなければ……俺みたいなやつらが増えます。そしてこれは……俺の復讐でもあります」

「……」

「失礼します」


 満月に軽く頭を下げた後、蓮はエイナを抱えてその場から去った。

 彼が憎悪と悲しみで顔を歪めていたのを、満月は見逃さない。


「まったく……本当に優しい奴じゃのう~。のう、エイミーよ?」


 満月は一本の街路樹に視線を向けた。

 すると木の後ろから、エメラルドグリーンの長い髪の少女—――魔森エイミーが現れる。

 彼女は悲しそうに顔を歪めており、胸を押さえていた。


「学園長……どうすれば蓮兄さんを救えますか?」

「……」

「どうすれば……兄にあんな辛い顔をさせずにすみますか!?どうすれば……兄に手を血で汚させるようなことをさせずにすみますか?」


 涙を流しながら叫ぶエイミー。

 彼女は分からなかった。

 どうすれば兄を救えるか。

 嗚咽を漏らしながら泣くエイミーの頭を、満月は優しく撫でる。


「あやつは止まらぬよ。自分のような存在を作らぬために、あやつはこれからも悪人を殺し、手を血で赤く染める」

「そんな……」

「エイミーよ。人の命を奪うのは悪じゃが……その悪が必要な時がある。お主の兄はその悪を理解し、罪人共の命を奪う。《魔炎》はこの世界にとって必要悪じゃ」

「でも……それじゃあ……蓮兄さんは一生……!」

「永遠に苦しみ続けるじゃろう」


 満月には分かっていた。

 魔森蓮は優しい。

 そして優しいからこそ人を殺した時、彼は苦しむ。

 それを理解しているからこそ、満月はエイミーに教える。


「だからエイミー……お主があやつを支えるのじゃ」

「支え…る?」

「そうじゃ。お主は自分の兄に惚れているのじゃろう?」

「!!」


 エイミーは目を見開いた。

 まさか自分の恋心が気付かれているとは思ってもみなかったから。


「お主が本当に兄を男として愛しているのなら……支えるのじゃ。愛する男が苦しんでいる時……助けるのが女の役目じゃ。例え手が血で汚れていようと、傍にいるのじゃ」

「……分かりました」


 エイミーは手で涙を拭い、瞳に覚悟を宿す。


「私は……兄を支えます。なにがなんでも……蓮兄さんの傍を離れません」

「うむ。その意気じゃ」


 一人の少女はこの日、誓った。

 大切な兄を……自分が支えると。

 読んでくれてありがとうございます。

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