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TS魔法少女の二度目の復讐  作者: グレンリアスター
TS魔法少女の過去
103/104

ハナ6

「さぁ……こっちも『姫神の剣』を使わせてもらうぜ。璃々様」


 銀色の瞳を怪しく光らせ、刀の柄を握り締める蓮。

 彼は静かな声で告げる。


「姫神流剣技―――月光(げっこう)


 次の瞬間、鞘から素早く抜かれた刀が姫神璃々を襲う。

 普通の人なら回避することを許さない抜刀攻撃。

 それを前にして璃々は刀を鞘にしまい、抜刀した。

 剣技と剣技がぶつかり合い、大きな衝撃波が発生する。


「姫神流剣技―――死嵐(しあらし)


 蓮は音速を超えた速度で刀を振るい、連撃を放つ。

 急所を正確に狙い、相手の命を奪うための殺意の連続攻撃。

 それを璃々は同じく怒涛の連撃を放ち、蓮の連撃にぶつける。

 火花が飛び散り、金属音が鳴り響く。


「姫神流剣技―――鬼突(きとつ)


 次に蓮が放ったのは鋭い刺突。

 全身を使って放ったその一撃は、璃々の心臓を狙う。

 しかしその一撃は璃々が放つ刺突によって相殺された。

 同じ技を放ち、ぶつけ合う二人の魔法少女。

 彼らの剣技は互角。

 蓮と璃々は何度も剣技をぶつけ合う。

 しかしそう長く続かなかった。


「チッ……やっぱりダメか」


 蓮が纏う白銀の機械鎧に突然、皹が走った。

 それに気づいた蓮は舌打ちし、刀を手放す。


「今回もダメだったか」


 姫神璃々は刀を振り下ろし、蓮に斬撃を叩き込んだ。

 斬られる痛みと重い衝撃が彼を襲う。


「ぐはっ!」


 蓮は後ろに勢いよく吹き飛び、地面に倒れる。


「蓮くん!?」


 ハナは慌てて蓮のところに駆け寄る。


「大丈夫ですか?傷は!?」

「だ……大丈夫です。ここでは怪我はしません。まぁ……痛みは感じますけど。イテテテ」


 ゆっくりと起き上がった蓮は、璃々に視線を向ける。

 璃々は粒子と化して姿を消した。


「あ~クソ……やっぱり勝てなかったか」

「まさか初代魔法少女が出てくるとは思いませんでした。しかし……あれが姫神璃々ですか」

「とんでもない化物でしょ?一度も勝てないんですよ。『姫神の剣』を使ってもぜんぜんダメで」


 ハハハと苦笑する蓮。

 そんな彼にハナは真剣な表情で問い掛ける。


「蓮くん。あの剣技は……」

「……飯を食いながら話しましょう」


<><><><>


 蓮はハナとともに彼女が泊まる建物にやってきた。

 そして冷蔵庫にあった食材でカレーライスを作り、ハナと一緒に食べながら話す。

『姫神の剣』のことを。


「『姫神の剣』は妖怪や悪魔を倒すために姫神家が作った戦闘術です」

「戦闘術……」

「この技は代々姫神家が受け継いできたものなんです。もちろんこの技は魔獣や人間にも通用します」

「初めて見る技でビックリしましたけど、あれは……凄すぎます。鳥肌が立ちました。でも……なんで蓮くんはあまり使わないんですか?」


 カレーをスプーンですくっていた蓮の手が止まった。

 ハナの問いに対し、彼は苦しそうに顔を歪める。


「あ、すみません。答えにくい質問ですか?《機神》の戦闘映像では『姫神の剣』をあまり使わなかったので、気になって……」

「使えないんです。俺は……『姫神の剣』を」

「え?」


 ハナは目を丸くする。


「いや、でもさっき」

「確かに数分だけなら使えます。けど……それ以上は無理なんです」

「……理由を聞いても?」

「『姫神の剣』を極めすぎたんです」


 蓮はスプーンを机の上に置き、言葉を続ける。


「俺はどんな魔獣でも倒せるように『姫神の剣』を鍛えました。五百年以上……ここで」

「ご、五百年!?なんでそこまで……」

「長くなっても……いいですか?」

「はい。聞かせてください」

「……わかりました」


 蓮は全てを話した。

 なぜ戦うのか。

 なにを助けたいのか。


「……なるほど。『焔』のみんなのために」

「はい。そのためには魔獣全てを倒せる力が必要でした。だから俺は最強の戦闘術である『姫神の剣』を極めました。ですが……一つ問題が発生しました」

「問題?」

「……極めすぎたことで強くなりすぎたんです。俺の『姫神の剣』は」

「それは……駄目なことなんですか?」

「はい。強力すぎる力は己を破滅させる。極めすぎたせいで、『姫神の剣』を使うと俺の肉体や〈マジックアイテム〉にダメージを受けるんです」

「!」

「『姫神の剣』はただの剣術ではありません。ただでさえ強力な技を俺がさらに強力にしてしまったせいで、数分しか使えないものになったのです」

「そう……なんですか」

「……ですが、数分だけとはいえ姫神璃々様の領域に立つことができました」

「姫神璃々……初代魔法少女達のリーダー。……あの、彼女のことを詳しく教えてもらえませんか?できるのであれば、姫神家のことも」


 真剣な表情で尋ねてくるハナ。

 とても姫神家のことが気になっているのがわかる。

 蓮は一口だけお茶を飲み、口をゆっくりと動かす。


「魔獣や魔法少女が存在する前、俺たち姫神家は生まれた時からある特殊な力を持っていました」

「特殊な力?」

「妖怪や悪魔を倒す力です。今で言うと魔力ですね。俺たち一族はその力でかつて存在していた妖怪や悪魔たちと戦ってきました」

「ちょ、ちょっとまってください。魔獣や魔法少女が存在しなかった世界ではそんなものはいなかったはずです」

「いえ、確かにいたのです。だけど俺たちは人々の安寧の生活を守るために妖怪や悪魔のことを隠し、陰ながら倒してきたのです」

「なっ……」


 ハナは驚きのあまり言葉を失った。


「姫神家は巫女や聖女として世界中で活躍しました」

「すごいですね。でも……なぜそのような力を姫神家が持っていたのです?」

「それは人間の変異種だからです。ごく稀ではありますが、姫神家以外にも超能力的な力を持った人間はいたそうです」

「それは本当ですか!?信じられない」

「はい。その昔、あらゆる怪我や病を治せる薬を作ることができる魔女や、異世界に移動することができる魔法使いなどもいたそうです。ハナさんでもわかるやつでは……桃太郎とかですかね」

「え!?桃太郎!?あの桃から生まれる桃太郎ですか?」

「はい。桃太郎という妖術使いは犬や猿、雉の姿をした強力な式神を生み出し、鬼という妖怪を倒したのです」

「作り話じゃなかったんですね」

「はい。まぁとにかく姫神家は昔から人々を陰ながら守ってきた人間の守護者なのです。で……次は姫神璃々様の話なのですが。あのお方は一言で言えば……化物の中の化物ですね」

「ストレートに言いましたね」

「だって本当にそうなんですよ」


 蓮は肩をすくめながら、お茶を飲む。


「璃々様は歴代姫神家の中で最強の存在。なぜなら彼女は……世界中にいた妖怪や悪魔をたった一人で全滅させたのです」

「!たった一人で……」

「世界を滅ぼすことができる化物いたのに彼女は剣一本で倒したのです。璃々様は最強の聖女にして巫女にして、剣士でした。魔獣が出現し、魔法少女になってもそれは変わりません。まさに《剣神》」

「……はい。母も言ってました。姫神璃々は初代魔法少女の中で別格だったと」


 ハナの言葉を聞いて、蓮はパチパチと目を閉じたり開いたする。


「まるで姫神璃々を見たことがある言い方ですね。ハナさんのお母様は」

「え!?いや、その……実は母は初代魔法少女と知り合いでして」


 目を泳がせながら慌て出すハナを見て、蓮は首を傾げる。


「まぁいいでしょう。とにかく璃々様は仲間と共に世界を滅びから救ったのです」

「あの……それは知っているんですが、なぜその後、姿を消したのですか?富も名声も思うがままだったのに」


 歴史では世界を滅びから救った後、姫神璃々は姿を消したとされている。

 分かっているのは平凡な生活をしていたという噂だけ。


「それに姫神璃々様は不老にならず、天寿で死んだと聞きます。なぜなんですか?他の初代魔法少女達は夫と共に不老になったというのに」

「それは……できなかったんですよ」

「できなかった?」

「当時、夫になる恋人が呪いにかかったんです」

「呪い?」

「はい。その呪いのせいで不老にすることができなかったうえに、二十歳までしか生きられない状態でした。魔法少女の力を使ってなんとか呪いの効果を弱めることできて、八十歳までは生きられるようにはしたみたいです」

「そうなんですか」

「愛する人と永遠に生きられないなら、せめて一緒に死にたい。そう思った璃々様は寿命で死ぬことを選んだのです。富と名声を手に入れなかったのは、単純に璃々様が興味がなかったからです」

「なるほど……」

「最後は愛する男と手を繋ぎ、子供たちと孫たちに囲まれながら一緒に死んだそうです」

「幸せな死に方ですね」

「はい、そうですね。ただ……死ぬ瞬間の璃々様は悲しそうな顔で『自分は英雄ではない』と言ったらしいです」

「『自分は英雄ではない』?どういう意味です?」


 首を傾げるハナ。

 蓮は頭を左右に振って、「わかりません」と答える。


「まぁ恐らく…謙遜でしょうね。ハハハ」

「……蓮くん。一つお願いが―――」

「『姫神の剣』は教えませんよ」

「!」


 蓮は真剣な表情ではっきりと告げる。


「『姫神の剣』は姫神家が代々受け継いできた大切なもの。あって間もない人に教えることはできません」


 蓮はスプーンを手に取り、カレーライスをすくう。


「あなたは俺が強くします。ですが……『姫神の剣』だけは絶対に教えません」

「……はい」


 その後、蓮とハナは一言も話さずカレーライスを食べた。

 スプーンが皿に当たる音だけが部屋の中に響き渡る。

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